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第25話 萌萌の部屋に一晩泊まる


「西蓮寺萌さん。今日は私が勝たせてもらいましたけど……終盤。集中力が欠けすぎですわよ」

「あー、ごめんよ。愛璃あいり、スタミナ不足だったかな」

「恋に浮かれているの間違いでしょう。もう……飛鳥学園の方々の足止めはわたくしがやっておきますので。その間にあの方と公園を抜け出しなさい」

「……愛璃。良いのかい? それじゃあ。君の帰えりが遅くなちゃうんじゃ?」

「今日は貴女に勝てて、総君の権利を勝ち取れましたから。良いですわ」

「勝ち取れた?」



「おい。離せ、変態黒猫。しばらく密着禁止な」

「むうぅぅ……愛璃ちゃん。何で勝ってしまうのよ」


 月宮高校の応援席が騒がしいな。俺があれやこれやと今夜の宿について考えてる間になんかあったのだろうか? 


 いや。そんな事より。不味いぞ!莉桜りお高校と月宮高校の練習試合が終わったという事は、俺が死ぬということだ。


「お待たせ。士郎君。じゃあ脱出しようか。君が作り上げたドロドロの修羅場からさ」


 上はジャージで下はスカートに着替えた萌萌が、俺の前に笑顔で現れた。


「え? ああ……ドロドロの修羅場?」

「うん。修羅場、ボクの今日の出番が終わったんだ。だから先に帰ろうよ。ボクと一緒にさあ」

「お、おい! いきなり引っ張るなってっ」


 萌萌は俺の右手を強く引っ張ると、楽しそうに俺を連れて走り出した。


(士郎君……こっちだよ)

 ……あれ? このシーンどこかで見たことあるな。


《ショッピングモール》


「不味い。また逃げ出しちまった。更に気まずくなっちまう」

「………」


 俺は更に罪を重ねてしまった。いったいこれからどうすりゃあ良いんだ!


「ねえ。別にそんなに悩む事でもないじゃない?」

「何でそんな事、言いきれるんだよ。俺はあの2人を怒らせる事をして、家に帰ったら間違いなく何かしらの制裁を…」

「受けないんじゃないかな。何も、凪も柊も優しい子達だしさ」

「何? 何でそんな事、言えるんだよ。あの2人は俺にあんなに怒ってたんだぞ」

「あれも2人の演技だと思うけどね。士郎君の気を引くためのさ。えいっ!」

「つっ……何で俺の鼻に」

「んー?嫌がらせ」


 萌萌は少しつまらなそうな顔で俺の鼻にデコピンを喰らわせた。


「そんな暗い顔してないでさあ。せっかく一緒に買い物に来たんだから。ボクと一緒に居る時間を楽しもうよ。ほら、行くよ。士郎君」

「萌萌と一緒に入る時間を楽しむか…まあ、そうだよな。もう起きた事にあーだこーだと悩むよりもパーっと忘れて遊んで大丈夫なの? うわぁ!」


 再び、萌萌に手を強く引かれる。そして、俺達はショッピングモールにある色々な店を見て周り始めた。


(士郎君……行こう)

 ……まただ。萌萌に手を引かれると昔の初恋の記憶が。



「士郎君はさぁ。色々と考え過ぎなんだと思うよ」

「考え過ぎ?」

「うん……色々とね。あっ! これ、ボクにどうかな? 似合うと思う? 士郎君」


 萌萌はアクセサリーショップの前で足を止め。あれ良いかもー、と女の子の様な反応をして……いや。ボーイッシュな女の子なんだから、萌萌が女の子の反応するのは当たり前なんだよな。さっきから萌萌にリードされてばっかりなんだよな。


「こら。また変な事を考えているね。士郎君。今はボクと一緒に居る事を楽しみなよ。楽しくないの?」


 彼女は両頬りょうほほをリスの様に膨らませて、可愛いらしく怒った。


「いや。楽しいけど。今は楽しめる気分じゃないんだって。テニス練習場からも逃げちまったし」

「……士郎君って、凪と柊のどっちかと付き合ってるわけじゃないんでしょう?」

「は? いや、凪は…大切な幼馴染み出し、柊とは、下の名前で呼び会う仲になったな。それに柊とは、いちを付き合っている事にはなっている」

「随分と曖昧な説明の仕方だね。全く、あの娘達はボクの親友なんだから、あんまり適当に扱われると怒りたくなるんだけどね……まぁ、その方がボクにとっても都合が良いから。許すけど」


 なんだ? 西蓮寺萌は俺にいったい何を言いたいんだ?


「親友達を傷付けたら絶対許さないってやつか?」

「……それか。あの2人は諦めて、新しい女の子の事でも考えてみたら? 君の周りには素敵な女の子達がいっぱい居るんだからさ。(ボクもその1人だけどね) 」

「いや。それは駄目だ。凪も柊も……俺にとって大事な存在……」


(桐生君……大好きだよ)


 あれ?……何だ? 今の記憶は? 俺は頭を抱えて地面を見つめる。


「士郎君。どうしたの?」

「……いや……何かいきなり。昔の初恋の女の子の記憶が……?」


 ──────顔をあげるとそこには、西蓮寺萌の顔が目の前にあった。


 ああ、俺の初恋の娘はこの娘だったのか。何で今更、思い出したんだろう。


「士郎君?」

「あ。いや……俺、何で涙なんか流して……」

「悩み過ぎて疲れちゃったんだね……ちょっと早いけど。行こうか。家に……士郎君」


 俺は萌に優しく右手を握られると。そのまま彼女の家へと一緒に向かった。


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