第21話 桐生士郎のリミットブレイク
《朝比奈家》
(え? ギリギリを攻めるフェチリズム?)
(……そう。男は女の子のギリギリが大好き。特に士郎は、いつも凪凪をエロエロな目で愛でてるから。余計に需要がある)
(へ? 士郎って、そんなに私の事、意識してたの?)
(……しまくりしまくり。とういかとっくに凪凪に落とされて…)
(そっか。士郎の意識を落とせば、ひーちゃんの事も聞き出せるって事ね。ナッちゃん! だから普段の薄着じゃなくて、裸の王様作戦なんだね)
(……違う。凪凪。私が言いたいのは、凪凪が心配しなくても士郎の気持ちは…)
ガチャッ!
(じゃあ! 士郎の家に行って来るよ! ナッちゃん。アドバイスありがとう! 士郎をギリギリのフェチリズムでリミットブレイクさせて、ひーちゃんとの関係を聞き出そう作戦言って来るね!)
(……凪凪。私の話を最後まで聞いて)
◇
《桐生家》
「それで、いつもの様に暴走俺の部屋に何も着ずに入って来たと?」
「…はい。反省してます」
士郎が気絶した後、私は急いで、士郎のお母さん。可憐さんが用意してくれた自分の服を着た。
着てしばらく放心状態になっていたら、士郎が意識を取り戻して。私に襲いかかって来て……椅子に私を縛り付けて動けなくしたの。
「そうか。反省しているなら許そう。俺も良いも…不味いものを見てしまったしな」
「……良いものって! それって私のお尻の……士郎のエッチイィ!」
「どっちがエッチだ。幼馴染みの部屋に服も何も着ずに入って来る奴が言える台詞と思うなよ。凪!」
コ、コイツ! 私の恥ずかしい所を見たくせに何でこんなに強気なの? 普通の人なら悶絶するくらいするもんじゃないのかな?
「そ、それは! 士郎が悪いんじゃん。ひーちゃんとあんなに毎日の様にイチャイチャして、し、下の名前で呼びあっちゃって。私の気持ちとか考えないでどんどん2人だけで進んじゃってさあ!」
「2人で進んじゃって? もしかして。凪、お前。柊と俺が仲良くしてるのが気に入らなくて、こんな寄行に走ったのか?」
「……そうよ。悪い? こんな変な理由で怒ってるなんて。意味が分からないで……てっ何で拘束を解いてくれたの? 良いの? 私、逃げるよ? 全力で……へ? 士郎。どうしたのよ?」
士郎は私を縛っていた紐をほどくと、ゆっくりと私に近付いて来る。
「あの状態で俺の部屋に入って来た。凪が悪いんだからな」
「……士郎。どうしたのよ。いきなりそんな真剣な顔して」
士郎は私が座る足の間に片膝を乗せた。すると椅子がギシッ!っと音を立てて……
「……本当にどうしたのよ。いつもなら、こんな積極的に私に近付いて来ないじゃない。むしろ私がくっ付くのを嫌がる位なのに」
「今日は違うか? 凪」
士郎はそう言うと私の右頬に優しく触れる。
「……あの? 士郎。待ってあのね。私、そんな……あれ? 士郎がこんな事するわけないのに」
「今まで我慢してたんだ。だが。さっきの凪の背中の接触やあれを見たらさあ。自分で自分を止められなくなるよな? 凪」
「ま、待って、士郎……し、士郎はひーちゃんが好きなじゃ……」
「そういうのもう良いから。今日の俺、本気だからさ」
……………あれ? これってもしかしてナッちゃんが言ってた。男の子のリミットブレイク?
今、士郎の家には誰も居なくて、朝まで2人っきり。今日は夜の金曜日つまり徹夜しても大丈夫で、2人の時間が沢山あるって事。
士郎はいつもと雰囲気が違くて、私を優しく扱って……あれ?
もしかしてこの後、私が士郎に好き放題されて。あんな事やこんな事になって……
「凪……キスするから。良いよな? 俺の本当の気持ち。お前はとっくに見抜いてたんだな。嬉しいよ。これからは凪と楽しく……凪? あれ? お前。どうしたんだよ!」
「きゅ~……士郎が私とあんな事やこんな事を~」
「マジかよ。こんな時に気絶するって……殺生なあぁぁ!!」
士郎がそんな叫び声を上げているなんて聴こえるわけもなく。私は翌日、自室のベッドで目を覚ましたのでした。
◇
「無事に凪は送り届けたが。キスの生殺しかよ~、クソー」
「……残念? 士郎」
「そりゃあ。当たり前だろう…てっ! 夏。何でこんな所に居るんだよ」
「……だって士郎と凪凪の家の直ぐだもん。出くわすのは必然」
「撮ってたのか?」
「……そこまではしない。人のプライベートは撮影しちゃ駄目駄目」
「学校では平気でしてるくせにな」
「……記憶に無い」
「嘘つけ。ハァー、まあ、良いや。じゃあまたな。夏。最近は危ないから早く家の中に戻れよ。じゃあな…」
「士郎は……」
「ん? 何だよ。夏」
夏は俺の服を摘まむ様に掴んできた。
「………士郎は凪凪、柊柊のどっちを選ぶの?」
「なんだよ。その質問は」
「……良いから答えてみて」
「いや。俺は勿ろ…」
「お嬢様! どこにいらっしゃるんですかあぁ! 夏希お嬢様!」
「……影さんの声」
「探してるみたいだな。ほれ、さっさと言ってやれよ」
「……うん。分かった。今度、答えを聞かせてね。バイバイ」
夏はそう言って家の方へと小走りで走っていっ。俺はそれをボーッと眺めている。
「親友達を誑かたぶらかす奴は許さないってか?……そんなの俺も分かってるっての。だから俺はあいつに早く本当の告白をしたいんだよ」




