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第20話 それは暴走行為です凪さん

小鳥遊たかなし家前》


「それじゃあ。バイバイ! 士郎君。また明日の朝、一緒に登校だからね」

「ああ、また、明日な。ひいらぎ、今日の君との映画楽しかったよ」

「ひ、柊って……思ったより凄く良いよぉ」

 

 ひいらぎはそう言うと顔を赤くして照れ始めた。


「大丈夫か? 柊、何でそんな顔を赤くして…」

「だ、大丈夫、大丈夫だから。じゃ、じゃあね。今度士郎君の事、パパとママに紹介するから! バイバイ~」


ガチャッ!


「あっ! ちょっと待て……家にダッシュで入って行っちまった」



〖………ザッザッ……バイバイ! 士郎君………ザッザッ……柊……〗


「……だって、凪凪。ド、ドンマイ」

「ふぁーーーー(*_*)」


 ナッちゃんは私にトランシーバーから聴こえてくる、士郎とひーちゃんのやり取りを聴かせてくれた。

 そして、私の心は昇天した。


「駄目だわ。壊れちゃってるは凪の奴」

「何ですか。結局、小鳥遊たかなしさんのサヨナラ満塁ホームランですか。お疲れ様でした。凪さん」


 アスナちゃんと竜ちゃんは私を見て、何か言ってる。


「……アンタ等。凪の友達なのに本当に容赦ねえな。まぁ、柊を応援してた私からしたら最高の結末なんだけど。(お互いの名前の呼び方が変わっただけで、付き合ったって判断して良いのかね?)」


 それで夕姫ゆうきパイセ…夕姫ゆうきちゃんは士郎の方をジーッと見つめて。

 

 ちなみに、夕姫ゆうきちゃんとナッちゃんとは映画館を出る時に出くわして、そのまま士郎達の大捜索を手伝ってもらってたんだけど。


 何であそこに一緒に居たのかな?


「……凪凪。帰ろう。敗北者は静かに」


 ナッちゃんは私を敗北者と認定したの。


「何でよぉーーー!」


 もう。こうなったら手段を選んでられないよお!!


《桐生家》


「この《アメリカン美少女はたまにデレて、暴言を吐くんだが》って小説面白いな」


 柊を送って行った後、俺は家に帰宅した。


 晩飯も食べ終わり、風呂にも入った後、自室の机に座り妹から借りたアメデレと言う小説を、のんびり読みながら自分の時間を楽しんでいる。


「毎日起こる。凪の襲来も無しか」


  今日は金曜日だし。映画館に集まったストーカー少女達と、まだ遊んでいるのかもしれないな。


コンッ!コンッ!


「……ちゃんとノックしたって事は母さんか? どうぞー」


ガチャッ……キイィ!!


 遠慮がちに扉が静かに開いていく。俺は小説を読むのに夢中になっている為、後ろを振り向かなかった。


「凛か? 悪いけどまだアメデレは読み終わってないんだ。だから後、数日は……」

ムニュッ!


 ん? ムニュッ? 何だ。この背中に当たる二つの柔らかいものは。つうか、この胸の大きさ。それにこれ……何も着けてないの?!


「……士郎。尋問を始めます。私の質問に答えなさい」


 可笑しい。凪の声が俺の背中から聞こえてくる。いやいや、それは絶対にあり得ない。何せ素っ裸の幼馴染みが俺の背中に張り付くなんて。


「………」

「何で黙ってるのよ。もう一度言います。士郎。尋問を始めます。私の質問に答えなさい」

「………何しているんだ? 凪」

「それは私の質問です。今日、映画館でひーちゃんと一緒に出ていった後、どこで何をしていたの?」

「お前等。やっぱり、俺達のデートをストーキングしてたんだ……止めろ。背中に押し付ける力を強めるな。凪、当たってんだよ」


 コイツ。恥ずかしくないのか? 俺はとうに限界なんだぞ。好きな奴にこんな大胆な事をされたら。俺は……


「わざと当ててるんですけど。それよりも私の質問に答えなさいよ。」

「……質問だと?」


 くそ。女の子特有の良い匂いが鼻に……そして、俺が好きな凪が後であんな姿に。


「そうよ。ひーちゃんとどこまで進んだのよ。士郎君と柊なんて言いあっちゃってさ」

「お前等。そんなとこまで盗聴してたのか? ナツの仕業だな。どんだけ暇人なんだよ。放課……」

ムニュッ!


 また背中の押し付けが強まった?!


「私の親友達の悪口は許さないよ。それよりもひーちゃんとはどこまで進んだの? も、もしかして、本当に付き合うところまで進んじゃったわけ?」

「は?………いや。それは上手く説明できない関係というか。付き合ってると言うかいないと良く分からないんだよな」

「なにその曖昧な答え。そんな適当な事を言う士郎にはこうしてあげるんだから!」

「ただ、今日はお互いしたの名前で言い合う様になったてだけで…ぐぉ! お前。何で俺の頭によじ登ってんだ。そんな事したら倒れんだろ……ウワァァ!」

「へ? キャアア!!」

 

 凪のいきなりの寄行により俺は椅子から転げ落ちた。そして、咄嗟とっさに凪を庇う為に、凪を抱き抱え守る様に床に転がった。


「痛たた……ん? 凪のお尻と……それにこれは」

「痛た……へ? 何? この体勢?! これじゃあ! キャアアアア!」


 俺は目の前に広がる光景に呆然ぼうぜんとし、凪は赤面しながらジタバタし始める。


ガチャッ!

「士郎。凪ちゃんが全裸でアンタの部屋に入ってたからさぁ、下着と服を着せてあげて……ん?」


「……母さん?」

「可憐さん?! あのこれは違うのおぉ! 」


「………あー、まぁ、アンタ等もそういう歳だもんね。まあ、付ける物付ければ良いんだろうし。まあ、本格的にやるつもりなら凪ちゃん家の方でやってほしいかもね。今日、リサもダンナさんも居ないんだしさぁ。まあ…………取りあえず今日は、私と凛は今日はダンナと外食してくるからごゆっくり~」


ガチャッ!


「凛。出掛けるわよ! いいえ、脱出よ」

「何? お母さん。いきなりどうした?」


 母さんは長い台詞せりふを喋った後、凛を連れて我が家から脱出した。


 そして、残された俺と凪。


「……凪。そろそろ足を閉じろ。その色々とだな」

「色々と?……………………イヤアアァ!! 士郎のバカアァ!!」

「ゴボァ?!」


 母さんと凛が出ていった数分後。俺は凪に気絶させられた。

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