第20話 それは暴走行為です凪さん
《小鳥遊家前》
「それじゃあ。バイバイ! 士郎君。また明日の朝、一緒に登校だからね」
「ああ、また、明日な。柊、今日の君との映画楽しかったよ」
「ひ、柊って……思ったより凄く良いよぉ」
柊はそう言うと顔を赤くして照れ始めた。
「大丈夫か? 柊、何でそんな顔を赤くして…」
「だ、大丈夫、大丈夫だから。じゃ、じゃあね。今度士郎君の事、パパとママに紹介するから! バイバイ~」
ガチャッ!
「あっ! ちょっと待て……家にダッシュで入って行っちまった」
◇
〖………ザッザッ……バイバイ! 士郎君………ザッザッ……柊……〗
「……だって、凪凪。ド、ドンマイ」
「ふぁーーーー(*_*)」
ナッちゃんは私にトランシーバーから聴こえてくる、士郎とひーちゃんのやり取りを聴かせてくれた。
そして、私の心は昇天した。
「駄目だわ。壊れちゃってるは凪の奴」
「何ですか。結局、小鳥遊さんのサヨナラ満塁ホームランですか。お疲れ様でした。凪さん」
アスナちゃんと竜ちゃんは私を見て、何か言ってる。
「……アンタ等。凪の友達なのに本当に容赦ねえな。まぁ、柊を応援してた私からしたら最高の結末なんだけど。(お互いの名前の呼び方が変わっただけで、付き合ったって判断して良いのかね?)」
それで夕姫パイセ…夕姫ちゃんは士郎の方をジーッと見つめて。
ちなみに、夕姫ちゃんとナッちゃんとは映画館を出る時に出くわして、そのまま士郎達の大捜索を手伝ってもらってたんだけど。
何であそこに一緒に居たのかな?
「……凪凪。帰ろう。敗北者は静かに」
ナッちゃんは私を敗北者と認定したの。
「何でよぉーーー!」
もう。こうなったら手段を選んでられないよお!!
◇
《桐生家》
「この《アメリカン美少女はたまにデレて、暴言を吐くんだが》って小説面白いな」
柊を送って行った後、俺は家に帰宅した。
晩飯も食べ終わり、風呂にも入った後、自室の机に座り妹から借りたアメデレと言う小説を、のんびり読みながら自分の時間を楽しんでいる。
「毎日起こる。凪の襲来も無しか」
今日は金曜日だし。映画館に集まったストーカー少女達と、まだ遊んでいるのかもしれないな。
コンッ!コンッ!
「……ちゃんとノックしたって事は母さんか? どうぞー」
ガチャッ……キイィ!!
遠慮がちに扉が静かに開いていく。俺は小説を読むのに夢中になっている為、後ろを振り向かなかった。
「凛か? 悪いけどまだアメデレは読み終わってないんだ。だから後、数日は……」
ムニュッ!
ん? ムニュッ? 何だ。この背中に当たる二つの柔らかいものは。つうか、この胸の大きさ。それにこれ……何も着けてないの?!
「……士郎。尋問を始めます。私の質問に答えなさい」
可笑しい。凪の声が俺の背中から聞こえてくる。いやいや、それは絶対にあり得ない。何せ素っ裸の幼馴染みが俺の背中に張り付くなんて。
「………」
「何で黙ってるのよ。もう一度言います。士郎。尋問を始めます。私の質問に答えなさい」
「………何しているんだ? 凪」
「それは私の質問です。今日、映画館でひーちゃんと一緒に出ていった後、どこで何をしていたの?」
「お前等。やっぱり、俺達のデートをストーキングしてたんだ……止めろ。背中に押し付ける力を強めるな。凪、当たってんだよ」
コイツ。恥ずかしくないのか? 俺はとうに限界なんだぞ。好きな奴にこんな大胆な事をされたら。俺は……
「わざと当ててるんですけど。それよりも私の質問に答えなさいよ。」
「……質問だと?」
くそ。女の子特有の良い匂いが鼻に……そして、俺が好きな凪が後であんな姿に。
「そうよ。ひーちゃんとどこまで進んだのよ。士郎君と柊なんて言いあっちゃってさ」
「お前等。そんなとこまで盗聴してたのか? 夏の仕業だな。どんだけ暇人なんだよ。放課……」
ムニュッ!
また背中の押し付けが強まった?!
「私の親友達の悪口は許さないよ。それよりもひーちゃんとはどこまで進んだの? も、もしかして、本当に付き合うところまで進んじゃったわけ?」
「は?………いや。それは上手く説明できない関係というか。付き合ってると言うかいないと良く分からないんだよな」
「なにその曖昧な答え。そんな適当な事を言う士郎にはこうしてあげるんだから!」
「ただ、今日はお互いしたの名前で言い合う様になったてだけで…ぐぉ! お前。何で俺の頭によじ登ってんだ。そんな事したら倒れんだろ……ウワァァ!」
「へ? キャアア!!」
凪のいきなりの寄行により俺は椅子から転げ落ちた。そして、咄嗟に凪を庇う為に、凪を抱き抱え守る様に床に転がった。
「痛たた……ん? 凪のお尻と……それにこれは」
「痛た……へ? 何? この体勢?! これじゃあ! キャアアアア!」
俺は目の前に広がる光景に呆然とし、凪は赤面しながらジタバタし始める。
ガチャッ!
「士郎。凪ちゃんが全裸でアンタの部屋に入ってたからさぁ、下着と服を着せてあげて……ん?」
「……母さん?」
「可憐さん?! あのこれは違うのおぉ! 」
「………あー、まぁ、アンタ等もそういう歳だもんね。まあ、付ける物付ければ良いんだろうし。まあ、本格的にやるつもりなら凪ちゃん家の方でやってほしいかもね。今日、リサもダンナさんも居ないんだしさぁ。まあ…………取りあえず今日は、私と凛は今日はダンナと外食してくるからごゆっくり~」
ガチャッ!
「凛。出掛けるわよ! いいえ、脱出よ」
「何? お母さん。いきなりどうした?」
母さんは長い台詞を喋った後、凛を連れて我が家から脱出した。
そして、残された俺と凪。
「……凪。そろそろ足を閉じろ。その色々とだな」
「色々と?……………………イヤアアァ!! 士郎のバカアァ!!」
「ゴボァ?!」
母さんと凛が出ていった数分後。俺は凪に気絶させられた。




