第17話 放課後デートは慎重に
《昼休み 飛鳥学園中庭》
「桐生くん。今日の放課後は映画デートに行きましょう!」
「何で? いつものマスドか喫茶店で良いんじゃない?」
小鳥遊さんに体育館裏で、間違って告白してし、何故かOKを貰い付き合う事になってから早くも2週間位が経った。
朝の登校では毎日、強制的に手を繋がらされながら一緒に登校。昼休みは旧校舎の空き教室や、中庭などで一緒に食事をし。放課後はファミレスや喫茶店などで一緒に過ごしている。
何でだろう。最初は小鳥遊さんの可愛い仕草にドキドキしながら一緒に過ごしていたが。時間が経てばそれにもだんだん慣れてきてしまった。そのせいか彼女への返答がたまに塩対応になってしまう時が時々ある。
「………ねえ? 何で反応薄いのかな?」
「薄い? マジで?」
「うん。薄い」
「そんな事ないだろう。俺、程に君の話を聞く男子は他にいないと思うぞ」
「ここに居ます~、私との放課後デートがそんなに嫌なの~、酷くないかなー!」
小鳥遊さんは俺の背中をポコポコと叩き出し、ウウー、サイレンの様に騒ぎ出した。
「うん。肩叩きならもっと上だぞ。小鳥遊」
「ウゥゥー、酷い~、最近、私に冷たくなってなるよね? ねぇー!」
「そんな事は消してない……多分」
「多分? こんな可愛い彼女に失礼だぞ。桐生くん」
「自分で言うな。それと疑似彼女だろう」
「なっ? 違います~、本物ですけど」
◇
《飛鳥学園 食堂》
お昼休み。それは至福の時間。今日も中庭でご飯を食べてる2人の姿が、視界に入りながら暴飲暴食をしているの。
マケ○ンのメインヒロインちゃんも、ストレスでどれだけ食べても太らなかった。だから私も絶体に太らない。だから朝比奈 凪はストレス解消に暴飲暴食をしまくります。
「おーおー、今日も元気にイチャイチャしとるな。アイツ等」
「ぐぬぬ……」
「私は思うのです。あれはあの2人がわざと演技でやっているのだと最近、思い始めたと」
「ぬうう……」
「ちょっと。凪、ワメくな。ステイ! あの2人が演技?」
アスナちゃんは私の頭をスパンッ!っと叩いた。
「痛い! アスナちゃん。酷いよー!」
「黙れ。トラブルメーカー凪。それで竜胆。演技って何?」
「はい。小鳥遊さんもそうですか。桐生君もぶっちゃけかなりモテます。学園にも彼の隠れファンは相当数いると夏希さんが言っていましたしね」
「はい? あの士郎がモテるですって? 私の幼馴染みだよ? そんなわけ…むぐ」
「竜胆……続けて。凪も真剣に聞いてな。桐生君を本気で落としたいならね」
「むぐぅ!(息がぁ!)」
口を離して、鼻も……呼吸できないよ。アスナちゃん!
「はい……例の間違った告白。それを利用して本当はお互い付き合ってる振りをしているだけでないのでしょうか? そうすればあの2人に好意を持った人達は近づきづらくなりますしね。ですから中庭での、あのイチャイチャもただの演技に見えてしまうんですよね」
竜ちゃんの言葉に、私は少し違和感を感じちゃった。あの士郎がモテるわけないじゃん。それにアイツは……
「んー、どう思う。凪」
「ぷはぁー、息が止まりそうだったよ。それは何と思うかな。ひーちゃんだけはね」
「小鳥遊さんだけですか? それはどういう事でしょうか。凪さん」
「うーんとね。ひーちゃんは本気で士郎の事が好きだから、本気で落とそうとしてる。ひーちゃんのあれは演技じゃないもん。この間のマスドでもあんなに士郎の事を好きって言ってたしね……そんで士郎はねえー、ひーちゃんの為に頑張ってるって感じかな」
「頑張ってるって感じ? 何でかそれは?」
竜ちゃんは頭を傾けて、何ぞれ? 見たいな顔で私に質問した。
「うん。アイツは優しい奴だからね。ひーちゃんのもうアタックを頑張って受け入れてるんだよ……そして、ひーちゃんのもうアタックが成功して…演技じゃなくて、本当に付き合い始めちゃうのかな?」
「何で私が質問してたのに。凪さんに質問返されてるですか? アスナさん」
「んー? 簡単に説明すると。小鳥遊さんの方が真剣に演技じゃない真剣に桐生君を落としにかかってるけど。桐生君はそれを受け入れる気がなくて小鳥遊さんは脈無しって事で良いんじゃないの」
「あー。なる程、そんな感じですか。なんか納得しました。ありがとうございます」
……ひーちゃんは士郎に脈無しって本当にそうなのかな? これは放課後。あの2人のデートを付けて真相を確かめなくっちゃ!
「凪さんがまた楽しい事を閃いたみたいですね」
「おー、楽しい時間潰し付き合うよ。凪ー」
「うん。行こう! あのの真相を確かにね!」
「「おおー! いざ。暇潰しの旅へー」」
こうして、私達の今日の放課後の予定は決まった。
◇
「あの小鳥遊さんが桐生の右肩にしなだれている……くそおぉぉ!! 羨ましい!」
「落ち着け。やるなら教室でだ。ここでは一目につく…おのれ。桐生!!」
「あの光景も見慣れたよね~」
「ラブラブで羨ましいわ。青春だわ」
中庭で食事をすると生徒達に見られながら、俺と小鳥遊さんはベンチでさっきの話の続きをしていた。
「相変わらず近いんだけど。小鳥遊さん。皆、見てるよ」
「気にしなくても大丈夫だよ。皆、私達の姿に見惚れてるだけだからね。それよりも放課後は映画デートで決まりだからね。分かった?」
私達の姿に見惚れているか。本当に凄い自分に自信がある人だよな。
こう言う娘には、俺なんかじゃなくて、もっと相応しい恋人がいるだろうに。何で俺なんかの間違った告白を受け入れてしまったんだろうな。
俺は未だにそれが分からない。こんな凪の様な才能も魅了も無い俺を相手にしていてもしょうがないだろうに───




