第16話 最近は毎日、色々ありすぎる
あれから小一時間喋っていたせいで、夜の9時位に差し掛かってしまった為、女の子達だけで
帰すのは危ないと思った俺は、それぞれの家の前まで送って行く事になったんだが……
▽
《朝比奈家の前》
「じゃあね。スケベ士郎。明日、アスナ達に報告するから」
「ちょっと待て! それだけは止めろ。それだと小鳥遊さんにまで話が伝わ…」
「お休みー」
ガチャッ!
「……俺の明日の学校生活終わったわ」
「……どんまい。士郎」
「ラッキースケベだったもんね。士郎君」
ん? 今、西蓮寺さん。俺の事、士郎君って言ったか?
▽
《七星夏希の豪邸前》
「相変わらずの豪邸だな」
「天下の七星財閥の本家だからね。当然と言えば当然だね」
「……では、送ってくれて感謝する。バイバイ」
「ああ、またな~、夏」
「また塾でね~」
「……おさらば……2人はまたエッチな事を…」
「「するかー! アホ」」
「……さいで。少し残念」
「あっ! 夏お嬢様。お帰りなさいませ」
夏はそんな冗談を言うとメイドっぽい人と一緒に家の中へと入って行った。
▽
《西蓮寺家の前》
「未だに頬っぺたが痛いんだが」
「ボクを萌萌言って、お尻を触ったんだから当たり前だよ……でもいきなりビンタしちゃってゴメン。謝るよ」
西蓮寺さ…萌萌はそう告げると、俺に頭を下げて謝ってくれた。
「いや、こっちも凪と一緒になってふざけすぎた。悪い……でも、そのなんだ」
「ん? 何かな?」
「その私服姿は本当に可愛いと思うよ」
「へ? ボクが可愛い?」
「ああ、本屋で話した時のカッコいいボーイッシュさってやつかな? そのギャップも相まって、今の女の子らしい西蓮寺さんは凄く可愛い」
あれ? 何だ? 俺は何でこんな自然に子の娘を可愛いなんていてんだ? ま、待て。俺か好きなのは凪で他の娘に色目なんて使うなんてありえん。
これも小鳥遊さんを日頃、可愛いと褒めてるのが原因だが。まあ、別に褒められて気分を悪くする女の子なんていないから良いのか。
「西蓮寺さん。本当に可愛いしな」
「へぁ?! あ、ありがとう。そこまで褒められると凄く気合い入れておめかしてきたかいがあるよ」
「(あっ! やべー、心の声を遂、口で漏らしてた。話をそらさねば)……気合い入れておめかししてきた? 俺の部屋に来るだけで?」
「な、何でってそれは君の…コホンッ……いや、女の子なら着飾るなんて当たり前じゃないか。そ、それよりもここまで送ってくれありがとう。またね」
西蓮寺さんはそう言って、慌ててマンションのロビーへと走り出した。
「あ、ああ。またな。萌」
「え?……士郎君。君、ボクの事。萌って言った?」
西蓮寺さんは俺の言葉に反応してピタッと立ち止まった。
「ん? いや、これはその突発的に出た言葉で…」
「んー……うん。良いよ。これから君はボクの事、萌って呼んで。だからボクも君の事は士郎君って下の名前で呼ぶからさ」
「え? 良いのか? 下の名前で……萌って呼ばれるの恥ずかしいんじゃないのか?」
彼女は右手薬指を唇に当てて、考え始める。
「んーとね。ううん。君になら呼ばれても恥ずかしくないかな。そう。士郎君にならね……それじゃあ、またね。今度から暇な時は君の部屋に遊びに行くからよろしく~」
「ああ、またな。萌……いいのか? つうか今度から暇な時は俺の部屋に遊びに来るって、どういう事だよ」
俺はマンションの中に入って行く、西蓮寺萌の後ろ姿を見ながら告げた。
◇
プルプルプルプル……ピッ!
「はい。もしもし」
「もしもし……こんばんは」
「はい。こんばんは。小鳥遊さん」
「……何か妙に落ち着いてないかい? 桐生くん」
「昼休みにやり返せたからかな。どっかの疑似恋人さんに」
「んぁ……クゥゥ、それは私の事だよね? 桐生くん」
電話越しでも分かる。小鳥遊さんが恥ずかしがりながら顔を赤らめているのが。
「だね~、まあ、これも君の日頃の過剰なスキンシップのせいだけどな」
「つっ! ウゥゥ……それはナちゃんに勝ちたいから仕方なく…」
「凪に勝つ?」
「な、何でもない! それより。ナッちゃんから聞いたよ。萌ちゃんのお尻を揉んだって」
「ブッ! 何で、もう情報リークしてるんだ。アイツ」
アイツ! 昔の風呂の件を言ったから恨みを張らしに来やがったな。今頃、楽しそうに凪達にもリークしてたりするのか?
数分前
《 凪柊夏竜明のお部屋》
ピロン♪
〖……士郎が莉桜高校のアイドルのお尻触ってた〗
〖士郎。サイテー〗
〖資料に欲しいです。もっと詳しく教えて下さい〗
〖夏。アンタ。またフェイクニュースを流すとあの娘が反応するだろうがい〗
〖…………直ぐに連絡して確かめるから〗
〖〖〖〖あっ!〗〗〗〗
「浮気は駄目だからね。桐生くん」
「……だから俺達。本当は付き合ってないだろう」
「ううん。付き合ってるよ。だって私、桐生くんの告白受け入れるたもの」
「いや、あれは本当は…てっ! 何回目だよ。このやり取り」
「フフフ。これからもずっと続くと思うよ。それで…」
「ずっとって…それは」
「それで、このやり取りが終わった時、私達は本物の恋人になるの。あの間違った告白が本物にね」
「……本物」
「うん……夜にいきなり電話しちゃってごめんね。じゃあ、また明日、学校でね。バイバイ。桐生くん」
プツンッ!
「は? 何でいきなり。てっ電話切れてるし……間違った告白がいつかは本物にか。それは俺が凪を…」
俺は夜空を見上げながら、先が分からない未来の事について想像してしまった。




