第1話 罰ゲームに負けたから好きな娘に告白。え? 違う娘に告白した? 嘘だろう?
俺の名前は桐生士郎 。
高校生活2年目の春のとある放課後。俺はトランプゲームに負けた。
そのトランプゲームでは、負けた奴は何かしらの罰ゲームをやらされるのだが。
言い渡された罰ゲームの内容なのだが───
「THEッ! 罰ゲームの定番。好きな娘に告白だな。というわけで……さっさとあの幼馴染みちゃんに告白して来い。士郎」
「そうだ! そうだ! 中学校からずっと応援してやってんのに、全然、進展してないじゃないか」
「……そうそう早くしないとね。凪ちゃん、そのうち誰かにNTRられちゃうよ。士郎ちゃん」
親愛なる親友達が次々に俺の心のライフを減らしていく。とくに最後の夏希の一言はかなりのダイレクトアタックだった。
「誰がNTR されるだ。不吉なこと言うなよな。夏」
「……なら。さっさと覚悟決めて、告白して来なよ。小学校の頃からの親友にして幼馴染みである。この飛鳥学園の二大美少女たる、朝比奈 凪様にさ」
「二大美少女って、大袈裟な」
「……何、言ってんの。事実でしょうが。いやー、羨ましいですな。私もあんな超絶美少女の幼馴染みが居て欲しかったなぁ。何で私は女の子に産まれてしまったのか。トホホ」
俺の幼稚園の頃からの幼馴染み。朝比奈 凪は確かに超が付く程の美少女だ。
この中高一貫の飛鳥学園で、同学年の小鳥遊 柊さんと双璧を成すと言われる程に可愛い。
「夏やお前等は、アイツの腹黒さを知らないから……ごがぁ?! 痛っ! 何すんだ?」
「良いから。やはく。告って方をつけて来い。俺、駅で彼女を待たせてるんだわ。だから──」
「僕はこの後、部活で竜胆さんと話し合いだからさ──」
「……私はバイト先の彼氏と待ち合わせだかさ──」
ちっ! どいつもこいつもリアル充実の勝ち組。略してリア充共め。
コイツ等。揃いも揃って顔だけは芸能人並みに良いから、学園中から人気者なんだよな。たくっ! それプラスアルファして、彼女、彼氏持ちとか羨ましいにも程がある。
「「「───さっさと告白して、ゴールして来い」」」
などとハモりながら言われ。俺は体育館裏へと強制的に連れて行かれた。
◇
「確か。夏経由で、凪にここに来る様に連絡が行ってるんだよな……」
とか言いながら。夏達がさっきまでの居た場所を見たが。
アイツ等。とっくに解散して各々、どっかに行ったみたいだな。
「夏辺りはどうせ、そこら辺に隠れて撮影でもしてそうだがな」
カシャッ!
……とか言ってるそばから。どこからカメラのフラッシュと共に何かを撮影するとシャッター音が聴こえて来た。
「アイツ。マジでやってるのか。後でとっちめて、写真消させないとな……それよりも。凪に告白か。だんだん緊張してきたな」
心臓の音が高鳴って行くのが良く分かる。心拍数が上昇し、緊張で額から汗が出始めた。
「ヤバい。凄く緊張してき。こういう時は、地面にのの字を何回か書いて心を落ち着かせてと……」
俺は地面に落ちていた棒切れを拾うと。精神を整える為、のの字を地面へと書き初めて……
ガサッ!
何て変な行動をしているうちに、俺の背後から誰かの足音が聴こえて来た。そんな音がいきなり聴こえ俺は当然の様にテンパってしまった。
は? 嘘だろう? 約束の時間までもう少しあったよな? まさか俺が思っていたよりも結構時間が進んでて、約束の時間になってたのか?
いや、そんな事よりも罰ゲームとはいえ、今日はずっと言えなかった凪への気持ちを言える最大のチャンスじゃないか。
これを逃す馬鹿がどこにいるんだよ! 俺は告白するぞ! 告白してアイツ等の様にリアル充実。リア充入りを果たすんだ。
「こんな場所まで来てくれてありがとう。昔からずっと好きだったんだ。俺と付き合ってくれ! 一生幸せにするって約束するから」
「へぁ?! 一生幸せにする?……そんな事、言われたの始めてなんだけど。うん……ずっと私を好きだったんだ。うん……なら。良いかな」
「……良いかな?」
ん?……あれ? 凪の声にしては少しハスキーな感じのような?
「うん。ふつつか者ですが。これからこの私、小鳥遊 柊を……貴方の彼女をよろしくね。桐生士郎君」
「あっ! はい。ありがとう……ん?」
……は? 柊さんが何でここに? それと告白が成功?
これってまさか。間違って告白した相手は学校一の美少女でしたって事なのかあぁぁ?!




