九条静香の思い
私、九条静香。普通のサラリーマン家庭に生まれた。私のお母さんは、若い頃モデルをやっていたらしく、今でも若々しくて綺麗だ。それを受け継いだのか小学校の頃から私は男子に声を掛けられた。
当時は男の子っぽい感じだったけど、中学の頃には、段々女性らしい体つきになって来て、顔もお母さんにより似て来る様になった。
勉強は、小さい頃から好きだった。お父さん似かも知れない。お父さんは頭が良くて、今では企業の研究部門で部長の立場にある。
帰って来るのが遅い日が多いが、泊るという事は滅多にない。今でも両親はラブラブだ。
でも残念な事に子供は私だけ。それも二回の流産をした後に授かったらしくて、物心ついた時には、自分がどれだけ大切にされているか良く分かったほどだ。
でも、こんな容姿だと当然トラブルも多い。男子が私に悪戯しようとしたり、ナンパも随分あった。
ストーカーに遭って警察に連絡して捕まえて貰った事も有る。だから男を近付けるなんて絶対に嫌だった。
幸い、女の子の友達は出来た。でも心から話せる人は出来なかった。勿論今でも普通に会っているけど。
私がテレビドラマを見ていた時、お母さんが話しかけて来た。
「静香、今出ている女優さん霧島花蓮。この人、お母さんが高校生でモデルした時、随分仲良かったのよ」
「ほんと!」
お母さんが若い頃モデルをしていた事も有って、テレビでよく見かける霧島花蓮を知っていた。
お母さんは、普通に話せる仲だったらしく、高校生時代には、スタジオとかで会うとよく話したそうだ。
そしてお母さんが、花蓮の若い頃の写真見せてあげると言って持って来た。めちゃくちゃ綺麗で可愛くて、女性の私でもドキドキした時も有ったわと言っていた。でもその時は、ただ写真を見ただけだった。
今の高校に入って、直ぐに男子から声を掛けられたけど、皆断った。私にはその辺のイケメンなんて言われている連中には全く興味を持たない。
それはそれで良かったのだけど、考査で一位を取った時、悔しそうな顔して声を掛けて来たのが、学校で貴公子なんて呼ばれている八頭音江。私より少しだけ背が高く、どこかの劇団の男優かと思わせる様な顔立ちだ。
彼女は最初から私に突っかかって来た。たかが考査じゃないと思ったけど、体育祭でも文化祭でも、私が気にしていなくても彼女が気にして色々言って来る。
彼女も男子からは相当に声を掛けられているらしく、下らない自慢話をする時も有って嫌になる時がある。
流石に私も頭に来て考査やイベントが有る毎に徹底的に彼女に対抗した。
園芸部に入ったのは、当時三年生だった女子が、毎日一人で花壇の世話をしているのを見てつい声を掛けてしまったのが最初だ。
他に部員がいなくて出来れば入ってくれないかと言われた。私も花は好きだし水やり位と思って入ったら、とんでもなく大変な作業が待っていた。
一年の時は、三年生がいたので良かったのだが、三年生が部活を卒業すると私一人になってしまった。
園芸部顧問の桜庭先生に相談したけど、中々部員が入ってくれないのと言ってどうしようも無かった。でも偶には先生も手伝ってくれたので良かったのだけど。
二年生になって新入生が入って来て彼の存在を知ったのは新入生向けのオリエンテーションの時だった。
運動部や文化部は派手なアピールをして部員を入れようと必死だけど、園芸部ではアピールするとすれば大変な作業ばかり。毎日綺麗なお花と会えますよなんて言っても意味がない。
仕方なしに、他の部が新入生にアピールしていたけど、私は校門の傍の水やりをしていた時だった。
綺麗で可愛い女の子が通り過ぎようとしたので、声を掛けたら、その日の朝、声を掛けた女の子だった。その時はそう思っていた。
でも話をしていた時、昔見た写真を思い出した。帰ろうとする彼女の腕をしっかりと掴んで名前を聞いた。『早乙女麗人』と言った。そして男の子だという事も分かった。
私はその日、お母さんに聞いてみた。
「お母さん、早乙女って名前知っている?」
「ああ、花蓮の嫁ぎ先の名字よ。芸名は昔の本名の霧島花蓮のままだけど、今の名前は早乙女花蓮。確か可愛い男の子と女の子がいるはずよ」
「えっ?お母さんその子の名前知っている?」
「うーん、静香が他の人に絶対に喋らないって約束してくれたら。こういうのって芸能界では他人が絶対に明かしてはいけないのよ。まして花蓮は仲の良かった友達だから」
「絶対に言わないから教えて」
「分かったわ。名前は麗人。早乙女麗人」
私はこれを聞いた時、全身に電気が走った様なショックを受けた。
あの子が芸能界でも有名な霧島花蓮の息子。そして若き日の霧島花蓮そのもの。この時、私の頭の中は、理解出来ない程に混乱に陥っていた。
なに、顔は全く女性、それも飛び切りの綺麗で可愛い。どういう事よ。はっきりって、私より格段上のレベル。学校の貴公子なんかブ男に見える。
万が一と思って、GWの水やりの日にブラをわざと見せてそれを理由に抱き着いたら、厚い胸板、贅肉なんて全く感じない腹筋。間違いなく男だった。
そしてその時、私の心の中は彼だけになった。
絶対に彼、早乙女麗人と結ばれる。他の人には絶対に譲らない。
最初は急ぎ過ぎて彼のクラスの女子に邪魔をされたけど、あんなの問題じゃない。
最大の問題は…、彼が女性に興味あるかという事だ。
私が卒業するまでにまだ、夏休みも冬休みもクリスマスだってバレンタインデーだって、二回ずつある。GWだって一回ある。
絶対に私を好きにさせてやる。
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面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると次話書こうかなって思っています。
宜しくお願いします。




