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131.とある兵士の話(2)

「ちっ、あの化け物どもを近づけるな!」


 死国との戦争が始まって10時間ほどが経った初日の夜。日が暮れて、月が空で輝く時間帯。本来なら既に眠っている者もいるであろう時間帯に、俺たちはまだ初戦を続けていた。


 普通の戦争と同じような感じで戦い続けていた連合軍の先鋒は、減る事もなく、休む事のない死霊の魔物たちの攻撃に、次第に押されていくようになっていた。


 それだけならまだしも、やはり死霊の魔物を引き連れているだけあるのか、奴らの中にはリッチも混ざっているようで、こちらの兵士が死ぬと、少ししてからゾンビとして蘇るのだ。それも、生前の実力に合わせて。


 始めは数の差もあり容易く倒せると思っていた死国だが、戦争開始時と変わらない立ち位置で、夜を迎えてしまった。


 最初から戦い続けていた前線は入れ替えており、戦い方が変わりながらも耐え続けている。俺たちも前に出る羽目になってしまった。


 しかも、面倒な事に魔物の奴ら、夜の方が動きがいい。そのせいで俺のいる国軍だけでなく、他のところでもかなり厳しい状況になってやがった。


「隊長! 新手が来ました!!」


 隊の1人が指を指す方に目を向ければ、そこには幾重にも人間の体が集まった化け物がいた。3、4メートルの巨体であり、その巨体通りの力で前線に立つ兵士を殴り吹き飛ばす。


「どでかい魔物と変わらねえよ! いつも通りにやれ!」


 俺の声に部隊の兵士たちはそれぞれ動き始め死体が集まった化け物と戦い始める。本当に厄介な敵だぜ。頭を潰さない限り襲って来て、潰したとしても、その死体を化け物たちの体の一部にしてしまうんだからよ。


「隊長、どうしやす? 奴ら引く気が全く感じられませんぜ?」


 別のところで指示を出していた副隊長のメイグがそんな事を言ってくる。


「どうするもなにも、このまま耐えるしかねえだろ。前は化け物たち、左右後ろは味方もどきの兵士たちに囲まれてるんだ。ここで引いたりすれば戦犯確実だ。面倒だが耐えるしか……」


「隊長、大変です!!」


 メイグとそんな話をしていたら、後方支援に置いていた別の部下がやって来た。何でこんなところにいやがる。


「お前、持ち場を離れて何してんだ!」


「す、すみません、副隊長。しかし、大変なんです! 午前戦っていた他の国の兵士の中の怪我人がゾンビになって暴れ始めたんだ!」


「……ちっ、死体を処分しなかったのかよ! 敵見たらそうなるのはわかっただろう!」


「ち、違うんですよ、隊長! 死体じゃなくて、生きた人間がゾンビになったんです!」


 俺もメイグも部下の言葉に戦場ということを忘れて固まってしまった。一体どういう事だ? ゾンビたちは死体に魔力が溜まり魔物になると言われている。生きている人間は、自然と魔力を消費、回復を繰り返しているため、ゾンビにはならないはずなのだが……。


 いや、今そんな事を考えている場合じゃねえか。実際にならない出来事が起きたんだ。俺なんかが考えたところで関係ねえ。


「ゾンビになったのは戦闘に参加していた兵士たち全員か?」


「いえ、見た限りでは救護テントの中で次々とゾンビになっていましたので、おそらく怪我人がなったのかと。ただ、怪我人全員がなったわけではないので何とも言えないのですが」


「……とにかく、奴らの攻撃を受けて怪我しないようにしろ! 生きたまま化け物にされちまうぞ!」


 俺の言葉を他の兵士たちへと伝えていくメイグたち。それから、俺たちは夜が明けるまで戦い続けた。太陽が出始めたところでようやくゾンビたちも引き始め、ようやく初戦が終わった。


 夜間ずっと戦わされ続けた兵士たちは初日なのに疲れ切っており、歩くのも辛そうだった。


 後衛に下がりゾンビとなった他の国の兵士たちは全て討伐されたようだ。誰もが生きている者がゾンビになるとは思っておらず、かなりの被害が出たらしい。特に救護テントの中で問題が起きたため、治療師がかなりやられたという。


 思ったよりもしんどくなった戦争だが、まだ聖王国が前に出て来ていないため、他の国の兵士たちはまだ楽観視している。それが俺にはかなり不安だった。

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