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116.宣戦布告

「……えっ? なっ? え?」


 私は目の前に起きた本当ならあり得ない事に、私は考える事が出来なかった。本当ならここにはいないはずのお父さんとお母さんがいて、しかも、どこか虚ろの目をしているのだから。


 リーグもあまりにも予想外の事におじさんとおばさんを見て固まってしまっている。当事者である私とリーグが固まっていると


「君たちの両親がこの国に来たのは3日前だ……いや、来たというのは言葉が違うな。送られて来たのは3日前だ」


「……送られて来たってどういう事ですか?」


 獅子座様がどうしてお母さんたちがここにいるのか説明し始めてくれたけど、いきなり引っかかってしまった。わざわざ言い直してくれたおかげで気が付いたけど、お母さんたちが自分たちの意思でここに来たわけではないという事を。


「落ち着いて聞いてくれ。君たちの両親は……ゾンビと同じ檻に入れられてここまで送られて来たのだ」


 私は獅子座様が何を言っているのか全く理解が出来なかった。だけど、獅子座様は話を進めていく。


「檻の中は酷いものだった。ゾンビたちはわざと急所を外すように両親たちの体の肉を噛み切り咀嚼していた。しかも、どのような魔法かわからないが、傷付いたところから噛み切られた後の傷が治っていき、更に噛まれるのを繰り返していた。

 君たちの両親が乗せられた檻が移動した後は、両親が噛まれた時に流した血が檻が通って来た跡を作っていた」


「……お、お母さんやお父さんはだ、大丈夫なのですか!? そんな目に合って体に異常は無いのですか!?」


「我々が見た限りでは無事なようだが、まだわからない。もしかすると……」


 私はそれ以上獅子座様の言葉を聞かずにお父さんとお母さんの元へと駆け寄った。2人の手を握って


「お父さん、お母さん! 私だよ! ステラだよ!」


 と、声をかける。そんな私を見て、リーグも同じようにおじさんとおばさんへと声をかける。しばらくは焦点の合わない目で宙を見ていたけど、次第に声のする私の方を見るようになった。よかったぁ。やっと正気に戻った。そう思ったのだけど、それはただの勘違いだった。


 私に焦点が合って来たお父さんとお母さんは、私をしばらく見た後、急にカッと目を見開き、喉を掻き毟り出したのだ。


 それはリーグの方でも同じだったようで、隣からリーグの止める声が聞こえて来た。私も慌てて2人の手を掴んで止めようとするけど、どこから溢れてくるのかわからないかなりの力で止める事が出来ない。


 そして、そのまま止める事が出来ずに、お父さんとお母さんの指が自身の喉を突き破った。ピッと私の頰に付く血。


 私は喉から大量の血を流す2人を見ている事しか出来なかった。喉や口から血を流しながら膝をつくお父さんとお母さん。


 私は慌てて抱きかかえようとする。……だけど、まだ、悪夢は終わってなかった。血に濡れる事なんて気にせずに前に倒れてくるお父さんとお母さんを抱きかかえようとしたその時


「アァォアアアァッ!」


 と、突然叫び出して私へと噛み付いて来ようとしたのだ。確かに喉が破られてもまだ呼吸もしていたからもしかしたら助けられるかもしれない、と思って近寄ったけど、ゾンビになるなんて。


 気が付けば、私は魔法を使っていた……大切なお父さんとお母さんを殺すための魔法を。聖女になって魔王討伐の任務に赴いてから覚えた、危険察知が反応したのだ。


 それは殆ど無意識だった。私が理解した時には、両手を前に出して魔法を放っていて、お父さんとお母さんの胸に穴が開いていた。


 私は呆然と隣を見ると、リーグも尻餅をつきながら、右手には剣を持っていた。そして、リーグの座り込む側に落ちているおじさんとおばさんの頭。


 その内、おばさんの頭は、これ以上開かないくらい目が見開かれていて、私の方を睨んでいた。おばさんの目と視線が交じった私は、我慢出来ずにまたしても戻してしまった。


 目から涙、口からは胃の中の物が止まらなかった。自分が戻した胃の中の物の匂いに混じってくる血の匂いで、嫌でも理解させられた……自分の手で大切な両親を殺した事を。


「……すまない。我々では助ける事が出来なかった」


 そんな私達を見ていた十二聖天、獅子座様が声をかけてくるけど、私はそれに反応する事が出来なかった。だけど、時はそんな私達を待ってはくれなかった。


『これを見ているって事は、僕からの贈り物が届いたって事かな?』


 と、少し上機嫌な声が聞こえて来たからだ。皆が声のした方を見るとそこには、私の両親とリーグの両親から流れる血が形を作って、1人の人間の姿があった。


 ローブを着たような格好をしている人間。さっきの声からして多分男と思う。その新たに現れたそれに、一気に十二聖天や他の人たちが殺気立つ。


『もしかしたら殺気立っているのかもしれないけど、これは僕じゃなく、伝言を伝えるための手紙みたいなものだ。だから、攻撃しても意味が無いのを初めに伝えておくよ』


 私はこの男の声に怒りを覚えるのと同時に、何故か懐かしさも覚えてしまった。怒りはわかるけど、同時に感じた懐かしさに戸惑いが隠せないままその男を見ていた。何故か目が離せなかったのだ。


 その男を見ていると、リーグが怒りに任せて剣を振るう。しかし、血で出来ている男を切っても直ぐに元に戻るだけだった。男はその間も話を続けていた。


『十二聖天、聖騎士団長や魔法師団長に四大聖天使、そして、女神フィストリア。僕たち、死国パンデモニウムは君たちフィスランド聖王国へと宣戦布告を告げる。僕の目的はそこにいるであろうリーグ、ステラを殺して、聖王国を潰す。そして……女神フィストリアを殺す事だ。

 覚悟するんだな。今まで踏ん反り返っていたその玉座から引きずり落として、踏み潰してやる』


 男の話はそこで終わっており、血は形を保つ事が出来ずに地面へと落ちた。突然の宣戦布告に私たちは誰も動く事が出来なかった。


 それに、お父さんとお母さんが死んだ事を完璧に受け入れられなかった私は今にも気を失いそうだった。ただ、その中でリーグだけは地面に落ちた血を睨みつけていた。

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