第84話 君にロックオン 二つ目の【神の奇跡】
水の2の月、4の週の陽の日。
王都の冒険者ギルドの第二支部、副支部長室。
要はチレンスタの部屋だ。
昨日受注したクエストを達成し、ギルドに成功の報告に来たらチレンスタに呼ばれたのだ。
クエスト自体は楽なものだった。
村の近くに巣を作った小型犬くらいの魔獣を狩り、巣を排除してくれという内容だ。
巣の周囲にいた無数の魔獣は”風刃”で刈りまくり、巣穴に向けて”火炎息”を放射し続ける。
巣穴に引っ込んでいた魔獣がびっくりして飛び出すが、そのまま”火炎息”で丸焼きに。
最後に”水飛沫”で巣穴を水没させ、念のために凍らせる。
もしも奥の方に生き残りがいても、これだけやっておけばたぶん大丈夫だろう。
この魔獣は然程強くはなく、一匹二匹出ても普通に村人が鍬とかスコップで倒せる。
だが、いつの間にか村の近くに巣穴が作られてしまい、数が増えすぎたので村人では対処できなくなってしまったらしい。
さくっと飛んで行って、一時間で魔獣の殲滅、巣穴を潰して金貨一枚。
冒険者って、ほんと儲かる商売だね。
まあ、実際はこんなに儲かるのは俺が少々特殊であるためだというのは理解している。
普通は魔獣と戦闘をすれば武器の手入れが必要だし、一~数回のクエストで研ぎ直す必要がある。
寝床も食事も保証されているので、報酬がそのまま利益になる。
こんな、必要経費がまったくと言っていいほどかからない冒険者など、普通はいないのだ。
税金が引かれた後の金額が依頼書の報酬として記載されているので、本当に報酬がそのまま利益になっている。
また、ミカの受ける依頼は比較的報酬の高い物が多い。
これは誰も依頼を受けなかった、残った依頼から探しているからなのだが、そういう依頼は癖が強いものが多いのだ。
同じDランクやCランクの依頼でも、報酬の多い少ないは当然あり、報酬が高くて楽な依頼はすぐに取られてしまう。
そして、次に選ばれるのが依頼内容も報酬もそれなりの物。
いくら報酬が高くても達成できなければ、かかった経費が丸損なのだ。
なのでリスクの低い簡単な仕事も取られてしまい、最後に残るのが報酬はそこそこ高いが癖の強い厄介な依頼ばかり、ということになる。
ごく一般的なCランクの冒険者は、一カ月で金貨五枚くらいを稼ぐ。五十万ラーツだ。
街の兵士たちの給金が金貨二枚くらいらしいので、如何に冒険者が稼いでいるかよく分かる。
しかし冒険者の場合は、ここから武器の手入れや、回復薬や投げナイフのような消耗品の補充などを行う。
そして宿屋や家賃を支払い、食事や飲食の費用がかかる。
武器や防具が壊れれば買い直さなければならない。
稼ぎも大きいが、生活を維持するための費用が結構かかるのだ。
しかし、一般的な冒険者の、稼ぎの多くが消える項目は別にある。
娯楽費だ。
これが馬鹿みたいにでかい。
クエストを達成して街に戻れば祝杯だ何だとアホほど酒を飲み、食いまくる。
命がけの仕事の後だからか、散々飲み食いした後は女を抱きに娼館に繰り出すのが定番の流れだ。
中には、街にいる間の定宿は娼館だ、などと豪語する者もいる。
そりゃ、そんなことしてればどれだけ稼ごうと万年金欠にもなるだろう。
ミカはこうした話を、ギルドに出入りしている時によく耳にする。
景気のいい話をしているのは、おそらくだがCランクより上の冒険者。
悲惨なのはDランク以下の冒険者だ。
Dランクでも一回で金貨一枚を得られるクエストもそれなりにあるが、そうした依頼は達成が難しい。
ミカはあっさり巣穴を潰してみせたが、普通はそう簡単に巣穴の排除などできないのだ。
剣一本持った冒険者が、どうやって地中奥深くに潜む魔獣を、巣穴から引っ張りだすというのか。
ガソリンでもあれば流し込んで火を点ければいいかもしれないが、そんなものはない。
なので、普通の冒険者はこんな面倒な依頼は受けない。
だから残っていたのだ。
そして、簡単な依頼となれば当然報酬はガクンと落ちる。
それでも生活を維持する費用は普通に圧し掛かる。
そんな中で、武器を落としたり、防具を壊したらもう大変だ。
もはや二進も三進も行かなくなる。
なので、そんなことにならないために、多くの冒険者がパーティを組む。
協力して困難な依頼をクリアしよう!なんて前向きな理由でパーティを組むのは少数だ。
ほとんどのパーティの結成理由が、自分が大きな失敗をしても、仲間にフォローしてもらえる。
そんな理由から、多くの冒険者がソロを諦めて、パーティに加入することを希望するらしい。
「ユンレッサから聞いたよ。 昨日は災難だったようだね。」
チレンスタが、苦笑しながらミカに言う。
昨日、ユンレッサがお説教だと言って向かったのは、普通に応接などで使う部屋だった。
そこで事の経緯を聞かれ、あったことをそのまま伝えたらミカは帰された。
だが、その後もしばらくお説教は続いたらしい。
チレンスタはあの時、ギルド本部で会議のため不在にしており、夜になって戻ってきてユンレッサから報告を受けた。
「あの二人は本当に仲が悪くてね。 こちらでも困っているんだ。 どちらも腕は抜群にいいんだがね……。」
どうやらケーリャという女戦士と、トリュスという女騎士は、第二支部では有名なようだ。
ケーリャは、昨日もいたローブを着た細身の男と、もう一人の別の男とパーティを組んで、三人で活動しているらしい。
「ケーリャ君は戦闘の実力で言えば、この支部でも上位に入る。 腕だけで言えばBランクに上がっててもおかしくないくらいの実力者だ。」
「そんなに強い人なんですか。」
確かに見た目からして強そうだった。
周りの冒険者たちよりも遥かに大きく、しかも凄まじく鍛え上げられた鋼のような身体。
厳つい顔に、背中に背負っていた戦斧も相まって、正直近づくのも躊躇うような人だった。
しかも、あの真っ赤なビキニアーマー。
あんなの、売ってる所すら見たことがない。
あんなのを装備して平然としているのだから、相当に図太い神経の持ち主だろう。
「強いなんてもんじゃないよ。 ……ただし、加減を知らないのかトラブルも多くてね。」
チレンスタが肩を落とし、疲れたように溜息をつく。
見ず知らずのミカの首根っこをいきなり掴んで、持ち上げるようなことを平然とやる性格だ。
何にも考えず、思うがままに振る舞う姿が目に浮かぶ。
「ただ、最近はパーティを組んで、これでも以前よりはマシになったようだ。 前はソロで活動していたらしいのでね。」
おそらく、慌ててやって来たあのローブの男がお目付け役なのだろう。
目を離すと、途端に今回のようなトラブルを起こすが、それでも暴走しがちなケーリャの手綱をよく引いてくれているらしい。
ミカなら確実にストレスで胃に穴を空けるだろう。
「もう一人の女騎士さんはどうなんですか? トリュスさんでしたっけ?」
ミカが依頼書を見ていたら、親切に魔獣の特徴を教えてくれた人だ。
少々きつそうな感じだが、”銀系希少金属”と思われる鎧を身に纏った、非常に凛々しい女性だ。
「トリュス君は真面目な性格の、腕も確かな冒険者だ。 彼女もCランクだが、ソロで活動しているようだな。」
ギルド規約をしっかりと暗記しているのだから、相当に真面目な性格なのだろう。
今回のことも、一応はミカを助けるつもりだったと考えられなくもない。
「ただし、ケーリャ君が絡むと途端にひどい状況になる。 トリュス君の性格から、ケーリャ君の振る舞いが見過ごせないというのも、分からなくはないのだが……。」
ケーリャのことをゴリラと言ったり、手を切り落とすなどの不穏な言動もあった。
トリュスの性格を単純に「真面目」と考えるのは危険だろう。
「同じ支部を利用していても、そうそう顔を合わせることなんかないんだがね。 しかし、顔を合わせれば、そのたびに昨日のようなことになる。」
チレンスタが肩を竦める。
まだチレンスタが王都に赴任して一カ月半ほどだが、この二人はすでに数回のトラブルを起こしているらしい。
しかもケーリャに至ってはそれだけではない。
酒に酔って酒場で暴れ、街の警備をしている兵士たちのお世話になることもあるという。
「そこで何だがね、ミカ君。 何かいい方法でもないだろうか?」
「え……?」
「この二人のトラブルを未然に防ぐような、何かいいアイディアでも……。」
「いやいやいや、ないですよ、そんなの! 何言ってるんですか!」
無茶振りにもほどがある。
どう考えても自分よりも上位の実力者同士のトラブルに、なぜミカが関わらないといけないのか。
ミカが慌てて首を振ると、チレンスタは肩を落とす。
「やはり無理か。 ミカ君ならあるいは何かいいアイディアでも、と思ったのだがね。」
「……無茶言わないでください。」
そうしてしばらくチレンスタと話をし、効率化案で意見を求められたので簡単に思ったことを伝えて、寮に帰った。
初心者講習会もすでに始まり、ギルドの混雑は一段と落ち着いてきた。
カウンター業務の簡略化、効率化に加え、手間のかかる業務の分業も進める。
そのための増員も行われており、ギルド内の混雑は確実に緩和されていた。
(すでにサーベンジールのギルドとそれほど差が無くなってきたね。 このままどんどんギルドを快適にしていってくれるといいなあ。)
チレンスタには是非、これで満足することなく更なる効率化に邁進してほしい。
ミカの快適な冒険者ライフのために。
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水の3の月、1の週の月の日。
ついに待ちに待った、二つ目の【神の奇跡】の解禁である。
この二カ月の訓練により、クラスの子供たちもそれなりに【身体強化】を使えるようになった。
まだまだ出力は大きくないが、だいたい四~五割アップくらいを二時間継続させられるくらいの実力だ。
レーヴタイン組の皆は遠足の時点で七割以上アップを二時間継続させていたので、いかにレーヴタイン領の学院が狂ってるかがこれだけでもよく分かる。
もう少し、周りに合わせた方がよくないですか?
……ほんと、いい加減にしろよな、あの侯爵。
「今回皆さんが習得する【神の奇跡】は、【癒し】と【爆炎】です。 ただし、一つ習得するのにも時間がかかりますからね。 どちらかを選んで習得することになります。」
担任のコリーナがクラスの子供たち見回し、習得する【神の奇跡】の詳細を説明する。
可能ならば二つとも習得するようにと言われるが、一つを習得するのも結構大変なのだとか。
最低でもこれらのうちの一つを習得することが初等部の一年生には求められ、二年生に上がるための条件らしい。
ちなみに、習得できなくても留年などはない。
ただし、二年生の時にその学院生の席はない。…………という噂。
どこに行くんでしょうねえ?
家に帰らされるのか、どこかの訓練施設に送られるのか。
(もうやだ、この国。 怖すぎ……。)
魔法士に課せられる責任が重すぎる。
これもメサーライト情報なのだが、ミカはこの話を一緒に聞いていたムールトも含め、きつく口止めしておいた。
その学院生の行き先が”強制収容所”なのかどうかは分からないが、皆はこんなことを知らなくてもいいだろう。
さすがにクラス全員の面倒までは見られないが、せめてレーヴタイン組の皆くらいはミカも積極的にサポートして、早々に一つは習得させておきたい。
だが、これでようやく二つ目の【神の奇跡】である。
しかも、ここで【癒し】を習得できるのは天の配剤か。
ミカは誘拐事件で全身骨折という事態に陥って以来、この【癒し】の【神の奇跡】を切望していた。
確かに自分で開発した癒しの魔法で治療は可能だ。
だが、あの時はまともに動けるようになるまで二時間くらいかかってしまった。
これはあまりにも時間がかかり過ぎだ。
一回の【癒し】がどの程度まで回復させられるのかは分からないが、リッシュ村のヤスケリが魔獣の襲撃で瀕死の重傷を負った時も、数回の【癒し】で普通に会話が可能なくらいまで回復していた。
ミカが街道で倒れた時のことは分からないが、この時も死にかけていたのは間違いない。
時間をかけずに瀕死の重傷すら治せる【癒し】は、今のミカがもっとも必要としている魔法と言えた。
しかも、【癒し】なら自分以外にも使える。
これも非常に大きなメリットだ。
どちらか一つというなら、当然【癒し】一択。
【爆炎】などクソ喰らえだ。
そうミカがほくそ笑んでいると、
「ミカ君とリムリーシェさんには、【爆炎】を習得するように指示が出ています。 他の皆さんは、自分が習得する【神の奇跡】をよく考えてくださいね。」
「…………は?」
コリーナの言葉に、思わず目が点になる。
(指示が、出てる……? どこから? ていうか、【爆炎】なんかいらないよ!?)
目の前に欲しい物があるのに、違う物を押し付けてくるとか、どんな嫌がらせだよ!
【爆炎】というのがどんなものか知らないが、どうせ炎と爆風で何かする魔法なのだろう?
そんなもの、必要になった時に自前でどうにでもするわっ!
右隣の席に座っている、戸惑うリムリーシェと顔を見合わせていると、左隣に座ったクレイリアから声がかかる。
「すごいですわ、さすがミカです! それにリムリーシェも! 習得する【神の奇跡】の指示は、特別に期待されている学院生にだけ出されるのですよ!」
何でも、魔法学院の運営に関わっている王国軍や宮廷魔法院などから、こうした指示がごく一部の学院生に出されることがあるらしい。
「将来こいつ欲しいから、ちょっとこれ習得させといて。」
と、自分たちのニーズに合わせて必要な知識や技術を身につけさせるのだ。
つまり、今のミカとリムリーシェをロックオンしている者が、王国軍か宮廷魔法院とやらにいる。
(…………うそだろ……。)
ミカは思わず空を仰ぐように上を向くと、両手で顔を覆う。
リムリーシェは分かっているのか、分かっていないのか、眉を寄せて首を傾げる。
「魔法学院修了後に向けて、期待をしている学院生にだけこうした指示が出るのです。 大変名誉なことですよ。 それに初等部の一年のうちから、このような指示が出るのは異例なのではないかしら? 本当にすごいです!」
きらきらとした笑顔で説明するクレイリアのことが、ちょっとだけ嫌いになりそうだ。
別にクレイリアが悪い訳ではないのだが、ショックが大き過ぎて八つ当たりしたくなってしまう。
(頬っぺた引っ張っていい?)
と聞きたくなったが、後ろに控える護衛の騎士が怖いのでやめた。
「なあ、ミカ。 どっち習得した方がいいと思う?」
前の席のメサーライトがこそっと聞いてくる。
レーヴタイン組の皆が、ミカの方を気にしている感じだった。
まあ、いきなりどっちか選べと言われても困るだろう。
「僕なら【癒し】だね。 可能なら後から【爆炎】も習得すればいいと思うよ。」
まずは生存率を上げるために【癒し】を習得するべきだろう。
今後、学院生にどういう風に習得させていく計画なのか分からないが、現在の選択肢なら最優先は【癒し】だろう。
というか、【身体強化】と並んで、全員に標準装備として覚えさせるべき【神の奇跡】だろう、これは。
王国軍の上層部は馬鹿なのか?
「あぁ? 【癒し】なんかいらねえよ。 【爆炎】の方がいいだろうが。」
ムールトは【癒し】よりも【爆炎】の方がお好みらしい。
個人で考えが違うのは当たり前だが、さすがにこれは【癒し】を軽視しすぎだ。
「先に【爆炎】を憶えたいならそれでもいいと思うよ。 でも、【癒し】は絶対に覚えておいた方がいい。」
ミカが真剣な顔で言うと、ムールトは難しい顔をして考え込む。
「私も【爆炎】を覚えますわよ。 一緒に頑張りましょう、ミカ。」
クレイリアも先に【爆炎】を覚えるらしい。
これは、クレイリアの嗜好によるものなのか、ミカと一緒に、と深く考えずに選んだものなのか。
判断が難しい。
ミカは相変わらずよく分かっていなそうなリムリーシェを見る。
「僕たちも【爆炎】をなるべく早く習得して、【癒し】も取るよ。」
「ふぇ!?」
ミカの二つとも覚えるよ宣言に、リムリーシェが驚いた顔で固まる。
リムリーシェのことだから、「そんなの無理だよ。」とか思っているのかもしれない。
ミカがそう思って見ていると、リムリーシェの表情が真剣なものに変わった。
唇を引き結び、力の籠った視線でミカを見返す。
(……本当に変わったね、リムリーシェ。)
困難に立ち向かう、強い心が育ってきている。
少々不謹慎だが、リムリーシェの成長を喜ぶ気持ちとともに、少しだけ寂しいと思っている部分もあったり。
こうして、二つ目はミカの望まぬ【爆炎】という【神の奇跡】を習得させられることになった。
(絶対に【癒し】も覚えるからな! ちょっと順番が変わるだけだし!)
何者かの横槍に少しだけ嫌な予感を感じながらも、そう決意するミカなのだった。
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【神の奇跡】の習得。
【神の奇跡】の習得には、習得難度という概念があるようだ。
【神の奇跡】には習得のし易い物と、習得の難しい物があり、更にいくつ習得しているかで、段々と習得が難しくなっていくのだとか。
仮に全部で十種類の【神の奇跡】があったとして、例え同じ【神の奇跡】でも最初に習得するのと、最後に習得するのでは習得のし易さが変わる。
この習得難度がなければ、「これ習得させておいて」などと指示をしてくる必要はない。
一通り順番に覚えさせていけばいいだけだからだ。
だが、この習得難度があるために、優先させて覚えさせる必要のある【神の奇跡】、という考えが出てくる。
【身体強化】はもっとも基本的な【神の奇跡】として、魔法士には必ず最初に覚えさせるらしい。
細かな魔力の操作で出力をいじったりできるので、魔力操作の技術向上にも役に立つ。
そして、【爆炎】と【癒し】の【神の奇跡】では、
・【爆炎】 習得難度 高
・【癒し】 習得難度 中
なのだという。
「だったら先に【癒し】をさっさと覚えて、それから【爆炎】でもいいじゃん。」
と思うが、これがそうもいかないらしい。
まだまだ魔力の操作の未熟な魔法学院初等部の子供では、【癒し】から【爆炎】という順番では一年以内に覚えられないことがほとんどなのだとか。
それくらい習得する順番の影響は大きいらしい。
魔力量が増え、魔力操作も熟達してくれば、それでも習得は可能だ。
だが、あまり一つの【神の奇跡】の習得にばかり時間を割けば、他を習得する時間がなくなる。
そして何より、魔力量が劇的に増えるのは今の時期だけなのだ。
新たな【神の奇跡】を習得するために魔力の操作ばかりしていては、魔力量が伸びない。
有用な【神の奇跡】を習得させたい、そして少しでも多くの【神の奇跡】を習得させたい、でも魔力量も増やして欲しい。
そうした様々な要求との兼ね合いによって、今の魔法学院の教育計画があるらしい。
「だったら、魔力量の増加だけに専念させて、習得はその後にしたら?」
とも思うが、上層部はそれではご不満のようだ。
おそらく、さっさと王国軍なり宮廷魔法院なりに、一人前として組み込みたいのだろう。
こうした大人たちの勝手な都合により、魔法学院は運営されている。
「まったく、勝手な連中だ。」
ミカは、そう愚痴を零さずにはいられなかった。




