第61話 DO☆GE☆ZA
水の3の月、5の週の月の日
暦の上ではもうすぐ夏だが、実際はすでに「真夏だろ!」と言いたくなるような暑い日。
ミカは鑑定屋の老婆と睨み合っていた。
「……………………。」
「………………ありますよね?」
「……今日は、ないよ。」
「本当はあるんですよね?」
「………………。」
陽の日ではないが、なんなら昨日来たばかりだが、放課後に大通りをぷらぷら歩いていたら老婆の鑑定屋の前をたまたま通りかかった。
その時、珍しく鑑定屋から冒険者らしき男が二人出てきた。
ミカは鑑定屋で他の客と会ったことがなかったので、何となく、本当に何気なく鑑定屋に顔を出してみようという気になったのだ。
ミカがいつものように元気よく挨拶して鑑定屋に入ると、老婆がぎょっとした顔をしてミカを見た。
そして、何かを慌てて隠そうとしたのだ。
老婆がこんなに慌てふためくところをミカは初めて見た。
そして、「何かある」と確信したのだ。
「さっきの人たち、鑑定に来たんですよね。」
「こんな所に飯食いに来る馬鹿はいないさね。」
「何を鑑定したんですか?」
「言うわけないだろう? そんなことペラペラしゃべる鑑定屋に、あんたなら鑑定を頼むかい?」
守秘義務などは定められていないが、あまり口が軽くては商売に影響が出る。
当たり前の話だ。
ミカとしては何かあると確信をしているが、攻め手がない。
ただでさえ我が儘を言っているのに、商売の邪魔までするわけにはいかない。
ミカはふぅー……と溜息をつく。
わざとらしく、大袈裟に。
「……分かりました。 いつもお世話になっているのに、変に勘ぐってしまってすいませんでした。」
素直に頭を下げる。
丁寧に、これ見よがしにゆっくりと。
老婆がバツの悪そうな顔をする。
「本当に良くしてもらっているのに、疑うような、失礼なことを言ってしまいました……。」
そう言って、悲し気な表情を作る。
やや俯き、視線を斜め下に少しだけ下げる。
確か、このくらいの角度が一番悲し気に見えたはず。
「つまらない真似はおよし。 あんたの魂胆なんかお見通しだよ。」
ちっ、バレてたか。
少しわざとらしくやり過ぎたか。
「分かりました。 今日のところは諦めます。」
ミカは降参と両手を上げ、仕方なく引き下がることにした。
下手にこじれて、今後のパズル入荷に影響しても困る。
ミカがあっさり引き下がると、老婆が意外そうな顔でミカを見た。
「今日は随分あっさりと諦めるんだね。 いつものどげざとかいうのはどうしたんだい?」
いやいやいや、いつも土下座なんかしてないから!
まあ……、頼み込むのに割と頻繁にやってはいるけど。
パズルを前に、ミカのちっぽけなプライドなどとっくに投げ捨てていた。
一回やったら、二回も三回も、十回だって同じだしね!
「まあ、今日は約束の陽の日ではないですしね。」
少しだけ、「約束の」に力を込める。
そこで、ふと思い出す。
ミカは老婆に聞いてみたいことがあったのだ。
「いつも不思議に思ってたんですけど。 どうやって”呪われてる”とか鑑定してるんですか? どんな効果なのかまで分かりますよね?」
そう、鑑定屋がどうやって鑑定しているのかが、随分と前から気になっていたのだ。
鑑定屋が鑑定をするのは当たり前だと思い、深く考えないでいたのだが、よくよく考えると不思議な話だ。
ミカも呪われているかどうかや、呪いの強い弱いは魔力で分かるが、その効果までは分からない。
鑑定屋はどうやって、そこまでの詳細を鑑定しているのだろうか?
「どうって、勘だよ。 見りゃ分かるだろ。」
勘かよ!
ミカは絶句した。
(え、なに? それじゃあ、見て何となく『こうなんじゃね?』っていうのを言ってただけなの? それでいいの?)
思いもしなかった老婆の答えに、呆れるというか何というか。
ミカは茫然と老婆を見つめた。
「まあ、人によっちゃ【技能】なんて言う人もいるけどね。 まあ、ただの勘さ。」
「…………すきる……?」
どういうことだろう?
「長いこと商売してると、いろいろ見てくるだろう? そうすると、何となく物の良し悪しなんかが分かるようになってくるさね。」
それは分かる。
所謂、目が肥える、というやつだろう。
「そうすると、だんだん鼻も利くようになってくる。 こいつは『臭い』『何か匂うね』って。」
これも、何となくだが分かる。
ミカにも多少の経験がある。
プログラマー時代に仕事を請け負う時、「この案件はやばそうだ。」と感じることがしばしばあった。
そして、そういう案件は大抵炎上する。
その尻拭いのために、プログラマーが死の行進に突入するのだ。
「ま、口で言って分かるもんじゃないよ。 口で説明できるようなもんじゃないさね。」
「なるほど……。」
確かに、何となく「そういうもんか」とは思うが、ミカに理解できることではない。
だが、そこでちょっとだけ引っかかった。
ニネティアナのことだ。
(ニネティアナの、あの鋭すぎる気配察知……。 もしかして、あれも【技能】か?)
ミカでは一生かかっても到達できないであろう域にまで達した、ニネティアナの気配察知。
あれも、斥候としての経験で身についた【技能】なのではないだろうか。
(ゲームみたいに、どんな【技能】を持ってるとかが分かるわけじゃないけど。 一定のレベル以上に達した卓越した能力を、この世界では【技能】と呼ぶことがあるのか?)
資格とか、目に見えて証明されるようなものではないが、確かに【技能】と呼ぶに相応しいものだと思う。
ちょっといい話が聞けたなと、ミカが老婆にお礼を言おうとするが、なぜか老婆は溜息をついていた。
「どうしたんですか?」
ミカが声をかけるが、老婆は諦めたように首を振る。
「……そういう意味じゃ、あんたも随分鼻が利くようになったってことかね。」
そう言って、老婆がカウンターの下から何かを取り出す。
カウンターの上に置かれたのは、装飾の施された小型のナイフ。
どうやら、老婆の気が変わったらしい。
「どっかの遺跡で手に入れたらしいさね。 やたらと強い”不浄なる者”が持っていたそうだ。」
”不浄なる者”というのは、おそらく死霊系の魔物だろう。
「さっきの冒険者さね。 どこかで高く売れるんじゃないかとサーベンジールまで来たらしいんだけどね。 どこでも買取拒否。 引き取りまで拒否されて困ってるって言ってたよ。 まあ、これなら無理ないだろうけどね。」
教会でも、あまり呪いの強い物は引き取りを拒否されることがあるという。
まあ、それなりに積めば、引き取って封印してくれるようだが。
老婆がミカを真剣な目で見る。
「小型のナイフは前に見せた指輪と同じ。 相当な血を吸ってる代物さね。 たぶん、奪ってきた命の数は小型のナイフの方が多いだろうね。 …………本当はこんな物、見せるのも嫌なんだけど。」
前に見せた指輪。
これまでいくつもの”呪われた物”を譲ってもらってきたが、ミカが唯一譲ってもらえなかった物。
ミカ自身、手に持つだけで精一杯で、とても解呪なんて試すことすらできなかった物。
このナイフは、あれ以上にヤバい呪物らしい。
「……その……いつも、ありがとうございます。 本当に……。」
ミカは丁寧に頭を下げる。
本当にこの老婆には、いつも我が儘を聞いてもらっている。
ミカからは、何も返せていないというのに。
「……いいさね。 見せるだけは見せるって言っちまったからね。 何か、呪いに触れると感じることのできるあんたには、見せたくなかったんだけどねえ。」
老婆が諦めたように言う。
が、すぐに口をへの字に曲げる。
「本当に! 鼻が利くようになったよ、まったく!」
「あははは…………すいません。」
これには、ミカも乾いた笑いしか出てこない。
たまたま通りかかり、たまたま顔を出しただけなのだが。
無意識のうちに、鼻が利いたのだろうか。
ミカは大きく息を吸い込んで、ゆっくりと吐き出す。
「”制限解除”、”吸収”。」
そう呟き、意識を集中する。
このナイフには、相当の覚悟と魔力で挑まなくてはならないだろう。
指輪の時のことを思い出し、左手に魔力を集中する。
(……まだだ。 あの時はもっと集めないと波動を押さえ込めなかった。)
扱いを間違えば暴発しかねない。
集めるのにも、維持するのにも、相当の集中力がいる。
だが、このナイフを手にするには、指輪の時以上に魔力が必要だろう。
それでも、ミカにはまだ余裕があった。
あれから半年くらい経ち、ミカの魔力も、扱い方も成長している。
(……よし。)
十分な魔力を集め、ミカは慎重にナイフを掴む。
強い波動が伝わり、すごい勢いで魔力を削られるが、問題なく押さえ込めている。
老婆は心配そうにミカを見つめていた。
ミカは更に魔力を集め、干渉を試みる。
全体的にガッチガチのギッチギチだが、それでも干渉を受け付ける箇所があり、いろいろいじっていると確かに「緩んだ」。
(……干渉、できた……!)
ミカの口の端が、僅かに上がる。
間違いなくこのナイフはとんでもない呪物だが、ミカは干渉することに成功したのだ。
「ちょ、ちょっと、本当に大丈夫なのかい?」
そんなミカを見て、老婆が焦ったように声をかける。
「はい、問題ありません。」
「それならいいけど……。」
ミカはにっこりと微笑み、ナイフをカウンターの上に置く。
老婆がナイフを仕舞おうと手を伸ばした時、ミカが声をかける。
「お婆さん。」
ミカは姿勢を正す。
呼びかけられた老婆の手が止まる。
それを確認してから、ミカはゆっくりと膝をつき、土下座の準備をするのだった。
■■■■■■
火の1の月、3の週の火の日。
暦の上でも夏となり、毎日暑い日が続いている。
そんな日々の中で、ミカは飛行魔法の研究を本格的に始めることにした。
やはり飛行することで移動の速さは段違いになるし、何よりこのくそ暑い中での赤蜥蜴石の運搬に心底うんざりしていた。
リスクとリターンを考え、ミカの中でリターンが上回ったのだ。
ただ、やはり一つ間違うと何が起こるか分からないとも思っているので、その研究は遅々として進まないのだが。
今日はそんな研究の気晴らしに、街に出て来ていた。
といっても、目的地は決まっているのだが。
ミカは裏通りの看板の出ていない、怪しげな店に入る。
実際には看板は足元に置いてあり、店の存在を知っている人からすると、別に看板なんかあっても無くてもいいそうだ。
そして、店主も新規の客なんて求めていないので、これで別に困ることはない。
ミカは店に入ってすぐにあるカウンターを見る。
少々くたびれた感じのするお爺さんが、ミカを見て笑顔になる。
「おや、いらっしゃい。 ゆっくりしておいで。」
「はい、ありがとうございます。」
ミカはカウンターの奥にある大金貨一枚もする布の袋を見る。
(俺も早く、あーいうのが持てるような冒険者になりたいなあ。)
『魔法具の袋』を見て、ミカは思わず溜息をついてしまう。
実はこのお店。
”その道”の人には有名な店らしく、看板なんか掲げなくても常連たちで十分やっていけるのだとか。
そして、新しい客はその常連の紹介で来る人ばかりで、ミカのように「たまたま見かけた」と言って、入ってくる客はほとんどいないらしい。
魔法具屋。
裏通りにある怪しげなこの店は、魔法具を専門に扱う店だったのだ。
棚に並ぶ品々のほとんどが、ミカには使い方も使い道も分からないような物ばかりだ。
それでも、どんな物があるのか眺めているだけでも面白い。
特殊な効果を持った指輪や杖などは、普通の武器屋や防具屋、道具屋では置いていない。
そういった物は、ここのような魔法具屋で扱われる物だ。
なので、道具屋に置いてあったお守りも、厳密な分類では魔法具屋の管轄ということになる。
ただし、あれは量産品というか、本当に気の持ちよう程度の効果なので魔法具屋では扱わないのだとか。
回復薬も魔法具屋に置いてあることから、何らかの魔力によって引き起こされている現象なのだろうと予想がつく。
もっとも、あんな急激な回復を実現する薬だ。
魔力が使われていないと言われる方がびっくりする。
店の棚にはフラスコや天秤、乳鉢なんかも置いてあり「これも魔法具か?」と思ったが、残念ながらこれらは普通の道具。
じゃあ、何で魔法具専門の店で普通のフラスコや天秤が置いてあるのか。
「錬金術に必要な道具なんじゃよ、あれは。」
「錬金術に?」
確かに、いろんな材料を混ぜたりするイメージはある。
「錬金術に限った物ではないがの。 魔法具を作ったりするのにもこういった道具は必要じゃよ。 ただし、品質はピカイチ。 普通に魔法具を作るなら、ここまでの質は必要ない。 だから買っていくとしたら、錬金術とか、ごく限られた研究をするような人くらいじゃの。」
「へぇ~……。」
正直、どう品質がいいのか分からないが、非常にニッチなニーズに応えるために置いているらしい。
(しかし、錬金術の研究をしている人がいるのか……。)
確か、前に読んだ本に、「錬金術は廃れた」と書かれていた憶えがある。
廃れただけで、別に失われた訳でも禁止された訳でもないのだから、研究している人が居ても不思議はないが。
「錬金術って金だけじゃなく、”銀系希少金属”とか”銅系希少金属”とか作るんですよね。 あとは”金系希少金属”とかも。」
「ふぉふぉふぉ、よく知ってるねぇ。 儂も昔は少し齧ったことがあるが、あれは本当に難しいのぉ。」
「研究してたんですかっ!?」
思わず大きな声が出てしまい、静かな店内にミカの声が響き渡る。
ミカは両手で口を覆い、周囲を見回す。
「ふぉふぉふぉ、錬金術に興味があるのかい?」
お爺さんが、そんなミカを見て可笑しそうに尋ねる。
「ええ、ちょっと……。」
そうして、お爺さんはミカに錬金術のことを教えてくれた。
錬金術。
最初は卑金属から貴金属を作ることを目指した魔法の分野だという。
だが、そこからいくつかに細分化されることになる。
・金を作り出すことを目的にする研究。
・”銀系希少金属”などの希少金属を作り出すことを目的にする研究。
・不老不死を叶えることを目的にする研究。
などだ。
「回復薬も、元は錬金術の研究から生まれた物なんじゃよ。」
「そうなんですか?」
「不老不死の研究から偶然に生まれた物だったんじゃ。 ただし、回復薬を作り出した魔法士は『出来損ないだっ!』と投げ捨てたらしいがの。」
「こんなすごい物を投げ捨てたんですか!?」
「ふぉふぉふぉ、驚くじゃろ? 弟子の一人が『これはこれですごい物ができたんじゃないか?』と気づいてな、研究の傍らで内職として売り出したのが始まりなんじゃ。」
何というか、生粋の学者馬鹿とでも言うべきか。
脇目も振らずに不老不死だけを追い求めた姿勢は評価したい、うん。
「その頃の回復薬は、今ほどの効果ではなかったらしいがの。 今では随分と研究も進んで効果も高まったし、値段も安くなった。」
まさか、こんな身近に錬金術の成果があるとは思わなかった。
「じゃがのぉ。 具体的な成果というと、そんな物しかないとも言えるの。」
「あらら……。」
それは残念。
「錬金術から派生した分野としては【付与】というものがあるの。 今ではこちらの方が主流じゃ。」
特殊な効果を指輪や杖、お守りに与えるのは、この【付与】という分野の魔法らしい。
というより、魔法具に分類される物は、大きな括りではすべてこの【付与】に属するのだという。
「具体的な方法は教えてやれんがの。 剣に炎の力を与えたり、指輪に体力や生命力を高める効果を与えたり、この魔法具の袋もその【付与】に属する技術の成果物じゃな。」
お爺さんは、壁にかかった魔法具の袋を指さす。
【付与】というのは、実用性でいえば錬金術なんか比べ物にならないくらいに発展していったようだ。
「希少金属はどうですか? 何か面白い話はありますか?」
ミカはいずれ、”銅系希少金属”を作りだすか、精錬しようと思っている。
そのためのヒントが何か掴めると有難い。
「希少金属か……。 あれは本当に難しいのぉ。」
そう言って、お爺さんは遠い目をする。
「この世界のすべてに魔力が宿っている。 ……というのは知っておるかの?」
ミカは頷く。
「それには例外があるんじゃよ。 それが希少金属じゃ。」
「…………え?」
逆ではないのか?
”銅系希少金属”などの希少金属には、魔力が沢山宿っているようなイメージを抱いていたが。
「”銀系希少金属”、”銅系希少金属”、”金系希少金属”。 これらにはまったく魔力が含まれておらん。」
お爺さんが断言する。
これはちょっと、予想外の話が出てきた。
まさか、魔力が一切含まれていないとは。
「それは……、誰が調べたんですか?」
「誰でも調べられるのぉ。 道具と材料さえあればじゃが。」
調べ方が間違っているのではないだろうか?
もし本当に魔力が含まれていないなら、なぜ希少金属は貴重とされているのか。
「でも、希少金属って、すごい貴重なんですよね? 何で貴重なんですか?」
「それは勿論、優れた特性があるからじゃ。」
何でも希少金属は、非常に優れた魔力的特性を持つらしい。
先程の炎の力を剣に与える例では、触媒として希少金属を使うと、使わない場合の数倍の効果を得られるという。
「でも、そんなのおかしいですよね? 魔力を持たない希少金属を使って、何で効果が高まるんですか?」
納得がいかない。
「ふぉふぉふぉ、そうじゃな。 その通りじゃ。 だから皆が頭を抱えておる。」
お爺さんが苦笑する。
誰だって、こんな話を聞けば「それはおかしい」と思うだろう。
「錬金術で希少金属を研究する時は、まず金属から魔力を抜く方法を考える。 実物がそういう状態なのじゃから、それと同じ状態にしてやろうと言うわけじゃな。」
なるほど。
それでその金属が、本当に希少金属になるのかは分からないが、同じような状態にしようというのは分からなくもない。
「じゃが、まずそこからできんのじゃ。 そこで、魔力的特性だけでも【付与】させようとするのじゃが、これも無理。 お手上げじゃ。」
お爺さんが肩を竦める。
「希少金属って合金ではないんですか?」
純金、純銀、純銅ではなく、そうした特性を得やすい物と混ぜたらどうだろうか?
「まあ、あの手この手で皆がいろいろやってはおるがの。 他の金属などと混ぜるというのも、当然やっておるが……。」
だめらしい。
「まあ、錬金術に興味を持っても、趣味にするくらいが丁度ええの。 間違っても、人生のすべてを捧げるなんて考えはせんようにの。」
ミカはお爺さんにお礼を言って店を出る。
一攫千金を狙った錬金術だが、中々に険しい道のようだ。
「……ま、当然っちゃ当然か。」
そんな簡単に行くなら、とっくに誰かが成し遂げているはずだ。
こうして、多少でも経験してきた人の話を聞けただけでも十分な収穫だった。
「思った以上に、いい気晴らしにはなったかな。」
そう呟き、ミカは裏通りを寮に向かって歩き出した。




