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置き去りにされろ!

ようやく、忠志くんが動く状況になりそうに


 王都から馬車がやって来た。

 俺と違って妹ちゃんは色々仕事がある、有能だからな。

 そうそうここで遊んでいられないから迎えが来たんだろう。


「うん、まあ大変だろうけど頑張って、応援くらいしか出来ないけどな」

「なにを言ってらっしゃるんですか、お兄様、当然、お兄様も王都に向かうのですよ!」

「えー、行っても役に立たないどころかトラブルの元になっちゃうだろ? ここで大人しくしてるよ」

 目を吊り上げて妹ちゃんが詰め寄ってくるが、俺に対する同情や親切心で決めてしまっていいことではないだろう。


 ところがだ、薄幸の侍女もアヤメも何やら荷造りだのこの離宮の掃除だのを始めているのだ。

 まるでここを後にするかのように。


 もしかして、俺一人でここに置き去り?

 いや、この周辺って本当に何も無いから置き去りにされたら餓死するぞ??

 それとも本当に王都へ戻れって?

 いやいや、それは無いだろ、流石に?

 ここであっさりと戻すくらいなら、そもそもがこんなトコに押し込める必要が無い訳だし……。




 気付けば馬車の中、向かい合う席には妹ちゃんと薄幸の侍女、屋根の上にはアヤメといった形で、一路王都へと向かっている。

 あれ~?

 いや、自分で言うのもなんだが、バカ王子なんか王都に連れてっても何の役にもたたないぞ?

 まあ、旧・バカ王子である中身俺じゃないバカ王子に比べれば害はもたらさないだろうけど……。

 それ以外は以前のバカ王子と大差無いのだ。


 う~む、謎だ。

 ま、まさか誰かに俺を害させて、それをネタに一気に! とか考えてるんじゃ??

 ……ないな。

 アヤメが特に反対する様子も無いし、そういう使い方するならもっと以前に出来ていた筈だ。

 まあ、顔だけはいいからな、バカ王子。

 余計な口を開かない様に注意された上でパーティーかなにかに参加ってのが一番有るかな?

 見た目だけは確かに一級品なのだ。

 中身が俺に関わらず、黙っていれば気品なんか溢れてしまうのだ。

 口を開けばボロが出るがな、むっちゃ庶民だし。


 当初は色々と「使えねぇ」と思ったバカ王子の身分だが、良く良く考えれば切れ者で冷酷な「氷の王子」とかだった場合、中身の俺とのギャップで早々に偽者扱いされて闇に葬られていたかもしれないし、良くて軟禁だったろう(あ、あんま、今と変わらないか)。


 そう言えばあの馬牛とかの動物たちにお別れとかしなかったな。

 あいつら、そんなの気にもせず、もっしゃもっしゃと草食ってるんだろうけど。


 にしても薄幸の侍女も随分と状況に慣れたな。

 隣に妹ちゃんが座ってるせいもあるんだろうが、同乗している間ずっと涙目というのは心にくるもんな。

 改善されて俺もほっとしている。


 まだまだ先は長いからな。





 王都に着くとすぐさま妹ちゃんの周囲に軍務系の貴族やら、お付きの侍女やら色んな人間が取り囲んで、会話をする余裕も無く連れ去られていってしまった。


 まあ、当然だな。


 逆に俺に用事があるなんていうおかしな人間は居ないようで、少しほっとしている。


 既に俺付きというのが既定となってしまった薄幸の侍女とアヤメと共に東宮に向かう。

 建物としては大きいのだが、中身はガラガラである。

 外見は美しいのだが中身は空っぽというところが、俺ことバカ王子に似ている。

 

 いや、普通の男子高校生(埋没系)が異世界行って活躍なんてのは、元々普通じゃないか、とんでも無いチート持ちになるか、神とか悪魔クラスの協力者を得るかのいずれかでもないと無理だろ?


 知識チートも、その世界が「そういう風」に出来ていない限り不可能だ。

 ウチの親父さんみたいに統治者が有能で、外国との戦争も内乱も、産業の疲弊も社会制度の老朽化も資源の枯渇も発生してないなんて状況は知識チートの出番じゃない。


 不穏な大国が北にあるとは言え、戦争の前段階の外交で上の妹が頑張ってるし、戦争になったとしても妹ちゃんこと下の妹が内外に傑物として認められている。

 俺の出番は無いし、その方が皆にとって幸せなのだ。

 俺が必要とされるなんて事態は、この国にとって最悪のケースと言っていい。


 余計なことはしないよう注意しつつ、アヤメの協力でなんとかなりそうなことを少しずつ手助けしていく。

 これが俺のここに来てからのこれまでの生活で判断した俺のすべき生き方だ。


 恋愛とかもせっかく異世界に来たんだから憧れはするが、バカ王子の悪評プラス内面俺のヘタレだから、まず無理だろう。

 

 さて、ろくに説明も受けずに帰って来たが、アヤメは妹ちゃんから詳しいことを聞いているだろう。

 呼び出して話を聞いてみるか……。




 外交の基本、遠交近攻だっけか?

 直接ウチの国とは国境線を接していないメルランジャ王国。

 そこのお姫様と俺の縁談が持ち上がって、お姫さんがウチの国に来るんだそうだ。

 川を船で遡航して、そこから馬車でって感じでこちらから行くと一ヶ月近くかかる。

 向こうから来る場合は川が下りなんで、一週間くらい短い旅程なんだがな。

 かなり遠い国なわけだ。

 貿易とかで付き合いはあるけどな。

 

 まあ、近くの国にはバカ王子の評判伝わってるからな~。

 年齢的に丁度いい相手も、結婚式で掻っ攫われた例の相手くらいしか元々いなかったしな。

 俺以外の皆さんが頑張ったんだなぁってことだね。


 うん、なんか実感湧かないっていうか、むちゃくちゃ他人事って感じ。


 相手のお姫さんに「気の毒になぁ」って思う程度。


 ただ気になる点もある。

 近くの国ほどでは無いにしろ、メルランジャにも多少は「バカ王子」の噂くらいは伝わっている筈なのだ。

 それに高い身分の者同士の縁談ともなれば、独自に調査を行うくらいのことはしても当然だ。

 メルランジャは別にウチの国と比べて圧倒的に格下という訳でも無い。


 な?

「向こうにこの縁談を進めたい何らかの理由」が無い限り、ここまでトントン拍子(俺が花嫁かっ攫われた時からだろ、どんなに早くても?)に進むなんてことは有り得ないのだ。


 それにこうした縁談という形にはっきりとなってしまう前に、一度、顔を合わせる機会を設けるということが出来ないほど疎遠な国でも無い。


 なんか、あちらさんも事情持ちって感じがしないか?

 どんな事情かなんてのは分からないけどさ。


 その辺、アヤメに聞いてみても情報収集の対象外だったため、一般的な知識(俺はそれすら持ってなかったんだけどな)しか知ることが出来なかった。


 少なくとも相手の「国」自体には縁談をどうしても急いで進める理由は無いようだ。

 となると、メルランジャのお姫様自身になんか縁談を急ぐか、結婚の機会を逃したくないって理由があるってことだよな? 


 ちょっと怖くね?


 いや、面食いって訳じゃないし、元々の俺からすりゃ贅沢を言う気も無いけどさ、アヤメやエリシアや妹たち、周囲の顔面偏差値が高い環境に居るとさ、それが当たり前になっちゃってさ、薄幸の侍女だって前世俺からすりゃ美少女だぜ?

 でも、そんなのを意識したりせずに居る。


 こう、審美眼というか、評価基準というかが厳しくなっちゃってる気がするんだよ、元々のバカ王子のせいかもしれないが。

 

 外見は「慣れる」というし、置いておくにしても、内面や行動に問題がある場合ってのも考えられるよな?

 

 まあ、考えても仕方無いか……。

 俺の意思で決められることじゃないしなー。

 よっぽどによっぽどじゃない限り、アヤメに頼んで何かをってことも無いだろう。


 じゃ、旅の疲れを取る為に一眠りでもするかな!?


 お休み~。



という訳で縁談が持ち上がりました

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