軟禁されろ!
話が全然進みません^^;
結局、豚鬼は廃嫡、その親は強制的に引退蟄居、幼い豚鬼の弟が当主となり、国から後見役という名の監視兼教育係が付くことになった。
教育係ねえ・・・。
バカ王子(この俺)って実例見てるとちょっと安心出来ない気がするんだけど、この国の教育って?
そんなことを考えている俺は、というと今度は南の離宮(避寒用)へと移動している。
可哀想なことにあの運の無い侍女も一緒だ。
貴族社会的には既に手遅れな存在と看做されているのかもしれない。
王宮勤めの侍女は貴族の子女や親族なども多いからな。
生贄というか餌食というかは少ない方がいいという判断だろう。
バカ王子は女好きなバカではあったが、下種な行為とは無縁だったんだけどねぇ(まあ、「上」からそういう声をかけられるってのが「迷惑」になるってことを理解していない点でダメダメだけど)。
結婚式がらみで追い落としたみたいなバカ王子排斥派閥が悪い噂も追加してたんだろうなぁ・・・。
今回の件も、第一報があった時点じゃ、俺の方がなにか仕出かしたのだと思われてたみたいだし。
レーベテインは居心地良かったんだけどな、近所のガキとかと遊んだり。
大人の方はあの一件の後、態度が変わった人たちが居たけど、子供連中は変わらなかったのが救いだ。
大きくなってからガクブルするかもしれないが。
さて、南の離宮だが、数代前のやたら太った王が作ったもので、現国王であるウチの親父様は使用していない。
モノがモノだけに売りさばいたりとかは出来ないんで、一応は菅理はしていたみたいだが、利用するのはそれこそ数十年ぶりになるのだとか。
騒ぎを避けるための避暑地で騒ぎになったのに懲りたのだろう。
実質的な軟禁だな、これは。
確かえらく広い館だった筈で、全盛期には庭にこの国には居ない動物が放し飼いになっていたとかいう話もある。
俺と侍女とアヤメの三人、えらく侘しい生活になりそうだ。
そう思って辿りついた離宮では「お兄様っ!」と一見萌え台詞、しかし口調には萌えの欠片も無い挨拶が待っていた。
「俺と性別が逆だったら」と言われる、武に秀でた妹。
長女が絵に描いた様なお姫様的外見を持ちつつ政治と外交の才を持つのに対して、腑抜けたバカ王子とは対照的な凛々しい外見と剣の腕と戦略眼を持ち、女性でありながら将才すら持っている傑物である。
うん、俺でも「バカ王子と性別取り替えた方がいんじゃね?」って思うな。
背はバカ王子としての俺よりは低いが、元の世界の瀬戸忠志よりは高い。
「理想の王子様」として宮廷で女性からの人気が高いというのも頷けるものである。
「相変らず腑抜けていらっしゃいますね。今回の件に関してはお兄様にしてはマシな行為だったとは思いますが、今までが今までですからね。お父様としても頭の痛いところ。どうせレーベテインでも遊びほうけていたのでしょうから、私が性根を入れかえて差し上げます。」
この子のこともバカ王子は苦手にしてたんだけど、いい子じゃんな?
見捨てず、見下げず、ちゃんと家族としての情があるのが分かる。
ほんと、こんなバカ王子関わらないのが一番楽だろ?
文句ばっかり言われてたって、文句言われることしかしてなかったらしょうがないじゃんな?
「久しぶりシルビア。いちおう、これでもエリシアにはしごかれてたんだけどな? ほら、こことかまだ少し痣が残ってるだろ?」
「妹とはいえ、女性の前で肌を晒さないでください! これだからお兄様は・・・。」
腹をめくって見せたら赤くなった。
なにこれ可愛い!
この可愛さを分からなかったとは、バカ王子は本当にバカだな!
妹萌えってフィクションかと思ってたら現実にあるんだな!
いやいや、これは愛でるべき存在だろ!?
「心配してフォローしにきてくれてありがとな?」
「・・・・・・これだからお兄様は。」
俺、なんかしたか?
妹ちゃん、なんか下向いてブツブツ言ってるんだけど?
こうして、俺の離宮での生活が始まったのだった。
「かつてはこの庭に動物が放し飼いになっていた」と言ったな?
あれは嘘だ!
現在進行形で、今でも庭には動物が放し飼いになっている。
流石に肉食の動物は居ないが、シルビアのしごきから逃れて昼寝をしていた俺の顔を、生暖かく、生臭い舌がベロリと舐めている。
非常に間の抜けた顔だ。
馬と牛を足して、そこから凛々しさとか逞しさを抜いた外見をしている。
こいつは何故か俺の目覚まし役を自認しているかのように、俺が昼寝をしていると必ず寄ってきて顔を舐める。
他にも小動物から人が乗れるサイズまで、大小の草食の動物が居るが、どれもどこか間の抜けた顔をしている。
でぶ王の好みかもしれん、というか絶対にそうだ。
自分以上に間の抜けた存在を見て安心してたのだろう。
庭は俺が来るというので慌てて体裁を整えた様で、草がぼうぼうとかは無かったが、こいつらがモッシャモッシャと食うので綺麗に手入れされた庭という感じでは無くなってしまっている。
まあ、シルビアとかは嫌いそうな動物たちだが、俺としては割りと好きだ。
ゆるキャラ的な感じでな。
しかし、こいつらが元々は野生の生き物だってのは、少し信じ難い。
生存本能があるのか疑問に思えるほど、人に対しての警戒心が無いしな。
ちょっととろくさいあの薄幸の侍女にさえ、大人しく撫でられたり抱えられたりしてるんだぞ?
アニマルセラピーとでも言うのか、侍女はこの動物たちに囲まれてレーベテインに居た頃よりリラックスしている。
相変らず俺に対しては警戒しているようだが、まあ、せいぜいが少し身構える程度で、見るからに挙動不審な態度は取らなくなっている。
アヤメも俺のおつかいが無いこともあって、また周囲に出かける先も無いから俺が出歩かないことも重なって、かなりのんびりと過ごしている。
影で修練はしているようだがな。
こうしたまったりとした空気に馴染んでいないのはただ一人。
「お兄様! ここでさぼってらしたのですね!」
妹ちゃんことシルビアだけだ。
ズンズンとこの勢いで探し回っていたのだろう。
うん、ちょっと怖い。
ただ、その一生懸命さが有り難く、また微笑ましい。
「さあ、素振りあと五百本ですわ!」
自前では癒しの手効かないから手加減してくれないかな?
妹たちは全員傑物です
なもんでバカ王子としてはコンプレックスで避けてました




