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末永く爆発しろ!

終わらせられそうなものから終わらせときます


 あれから20年の時が過ぎた。

 かつてのバカ王子である俺も、そこそこの評価の王配となっている。

 

 俺たちの結婚式はその前の粛清とセットで語られる事が多い。

 けっこうバッサリ逝った。


 鷹を生んだトンビに見えたこっちの親父さん。

 最初から娘に禍根を残したまま国を譲る気は無く、機を窺っていただけだったらしい。

 最初はあのアホ貴族子弟をせせら笑っていたこの国の貴族も、気付けば自分の首に縄がかかった状態。

 俺の母国の兵士&妹ちゃんという実効武力もしれっと俺たちの結婚のためという顔でこの国に入ってきており、連携を取る暇も与えなかったため、例え武力蜂起出来ても各個撃破であっさり。

 王族を舐めてたり、好き勝手やってた連中は全員消えた。


 こうした一連の動きの中、他に表情の選択の余地も無かったんで、ニコニコとした顔で過ごしてたら、粛清対象にならなかった貴族たちに豪く恐れられる様になってた。

 一連の動きのきっかけが、俺の「成敗!」モドキだったせいもあったのか、なんか、とんでも無く冷酷で、簡単に人を殺せる人間だと思われたっぽい。


 いや、同情する必要も無い相手だし、「戸締りすトコ」と内心ガクブルでも、不満やら忌避感を表に出す訳にもいかないしで、笑顔以外選択肢無いだろ?

 母国での様に侮られるのも嫌だが、過剰に恐れられるのも疲れるもんだね。


 結婚式はその後だったんで、変な連中もおらず、華やかで盛大なものとなった。


 母国からは王族、貴族が大勢、王子の唯一の友人と言っていいエリシアも呼ばれた。

「立派になって」とまるで実の姉の様に涙を流していたと、後になって妹ちゃんから聞いた。


 結婚して甘い新婚生活とはいかず、最初の仕事が待っていた。

 国内巡幸である。

 

 貴族粛清の余波やら、その後の領地の変更やら、箍を締め直すと同時に国民に次の世代の王国の象徴としての姿を見せ、安心感を与え、国への忠誠を高めることを狙った動きである。

 凡庸に見せといて、こっちの親父さんもシビアである。


 ま、ウチの奥さんが幸せそうだったから文句は無いけどね。

 下手に王宮に居るより、二人の時間が多かったし。


 俺も頑張ったよ?

 癒しの手で町や村の病人やお年寄りを癒しまくった。

 なんか、数こなして効果が上がったしね。

 骨折くらいなら、その場で治せる様になった。

 明確な病気で無くても、加齢による関節の痛みとか消せるし、有難がって拝むお年寄りまで居た。


 でもって、「そろそろお世継ぎを」なんて声が大きくなって来た頃、例の北の大国がアホやらかした。

 俺の元・結婚相手、逃げた花嫁の居る国に攻め込みやがった。

 ウチの母国の方に隙が無さ過ぎたせいもあると思う。

 俺の結婚の一年後に上の妹がこっちとは反対側の別の王国の第三王子を将来の王配に迎えて、妹ちゃんの方も地味目だがしっかりとした軍官僚系の貴族子弟と婚約したしな。

 

 4か国の連合で北の大国ボコった。


 俺も戦場に出た。

 前線で剣を振るうなんてことはしなかったが、本陣で置物しつつ、そこに併設の治療所で治療しまくった。

 癒しの手が最大級まで上がったっぽい。

 運び込まれた時点で生きてりゃ、取りあえず命は救って見せた。


 ウチの奥さんは最強ユニットだからね。

 スパ□ボ序盤でネオ・グラ◯ゾンを自ユニットで投入した様なもん。

 そりゃ心配だったけど、本人がやる気だし、この国の軍って、ウチの奥さんが先頭に立って開いた傷を押し広げるって戦法しか出来ないからね。実は防衛戦とか超無能、全軍突撃しか出来ない。


 妹ちゃんも頑張ってたみたい。

 こっちとは方面が違ったから、片が付くまで会えなかったけどね。


 あ、あと、例の花嫁泥棒くんも一軍を率いて頑張ったらしい。

 俺が道化になった甲斐があったってもんである。


 北の大国は最初に攻め込んだ連中と、後から送り込んだ連中合わせてボロ負けで、最終的には軍としての体裁を保っていたのは、あっちの将軍中心とした数百名のみになってた。

 言葉で言っても分からない相手はボコるしかないし、ボコっても分からない相手は始末するしかないよね?


 それでもあっちの王は「まだ負けてない」とか戦争続行するつもりだったらしいけど、しばらくしたら「病死して王子が後を継いだ、謝罪と賠償を行うので残った軍の退却の許可と、捕虜返還交渉をお願いしたい」と特使が派遣されてきた。まあ、王が寄ってたかって詰め腹切らされたんだろうね。

 王は利益分配機関だからね、適切な利益分配出来なきゃ排除されるよね。


 これで連合国勝利だったけど、逃げた兵士が盗賊化するとマズいし、荒らされた村や町の復興もあるしで、終戦したから即帰国とはいかなかった。

 重症者と農民兵を帰国させ、俺も嫁さんも治安維持のため、軍を動かした。

 巻き込まれた住民の治療なんかも行ったよ、俺は。

 戦いそのものじゃ役に立たないからね。

 癒せるとは言っても、奇跡レベルまではいかないから、場合によっちゃ壊死した腕や足を切り落とした上で癒しの手の出番なんてことも。

 

 良くさ、日本でのニュースで全治一週間の軽傷なんて出ると「不幸中の幸いだね」とか思ってたけどさ、命には別状無くても人生には大きな影響を及ぼすケガってのもあるんだよね。

 お腹いっぱいになるくらい、色んな不幸を見た。

 勝ち戦でも戦争は嫌だね。


 ただ言われるまま兵士として他所の国まで連れて来られ、置き去りにされて盗賊になって縛り首になる連中も見た。

 あっちの国の上の連中による被害者とも言えるが、攻め込まれた国の連中からみりゃ、殺しても殺したりない加害者だ。

 きっちりとあっちの軍が兵士を回収してきゃ、少なくともこんな死に方だけはしなくてすんだろうにな。 

 ま、そんな余裕なくなるくらい攻め滅ぼしたこっちの言うセリフでも無いが。


 後始末としては、色々面倒な交渉があったっぽい。

 最終的に攻め込まれた国に賠償金。

 各国との国境線に一番近いあっちの国の町の破却(更地に)。

 各国との不可侵条約の締結。

 といった形に落ち着いた。


 北の大国は、まあ、現在の王の間はアホはやらんだろ?

 シャレにならないくらい兵士も騎士も死んだしな。

 

 色々、落ち着いたトコでウチの奥さんの戴冠式が行われ、俺は正式に王配になり、何故か国教会の大司教にもなった。

 信仰心なんて欠片も無いんだがな?

 この国で一番の癒しの手の使い手でもあるんで、仕方ないって言えば仕方ない。

 国教会としても粛清されたアホ貴族との繋がりが深かった連中も居たしな。

 直接手を下せない分、国からの冷遇って形になってたし、俺からすりゃ面倒なだけだが、あっちからの歩み寄りってことでもあるんだそうだ。


 こうして奥さんが女王となり、その後跡継ぎにも恵まれた。


 今じゃ15歳の長男筆頭に三男四女の子だくさん。

 息子は奥さんの血を見事に引いて、既に身長は俺を越してるし、肉体の分厚さでは既に勝っている。

 親子喧嘩でもしようものなら、一方的にボコられることになるだろう。

 既に初陣(とは言っても隣国から流れ込んだ盗賊討伐だが)も済ませている。

 長女と三男は俺の癒しの手を受け継いでる。

 三男はかつての俺を思わせる呑気さであるが、それでも知勇共に一定水準に達しており、バカ王子とは呼べない。

 周辺国との関係も良好だし、国内も安定、かつてのバカ王子でも大過なく生涯を過ごせそうだ。



「オヤジぃ、また母さんとイチャついてんじゃねえぞ! 母さんも母さんだ、オヤジに対して甘過ぎだろ! 結婚して何年たってると思ってんだよ! 思春期の息子の前で自重しろよ自重!」

「兄さん、言って聞くくらいならとっくに改善されてますよ。私が何度口を酸っぱくして言ったことか。両親が仲がいいのはいいことですけど、万年新婚夫婦は止めて欲しいですわ。この間なんて私たちが同じ部屋に居るのにキスしてたんですよ」

 誰の血が強く出たんだか、ウチの子は真面目なんだよねぇ。

 

 ま、これも幸せって奴かな。



まあ、短編で収まるかと思ったら収まらなかった一発ネタ作品ですんで(;´∀`)

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