岩のち草
「それでは、ここでお別れですミリアム」
「……アリガトウゴザイマシタ」
「ちょっとゴルド! ミリアムから笑顔が消えているわよ!」
砂壁でのくすぐりを続けてたら、途中で町の人から話しかけられてしまい、くすぐりを解除し忘れて長時間くすぐってたなんて、なかなか口に出せません。
「良いのです。ゴルド先生からの最初のムチだと思えば、これから頑張ります!」
笑顔が無い状態で言われましても。まあ一時的な物なのでとりあえず良しとしましょう。うん。
「錬金術師さん。これ、足りねえかも知れねえが」
「これは、金ですか?」
町の人がボクに握りこぶしほどの大きさの金の塊を渡しました。これはなかなかの純度ですね。
「ですが、これほどの金。集めるのは大変なのでは?」
「それに見合った働きを君たちはしてくれたんだ。どうか受け取ってくれ」
「そう言うなら」
そう言って、ボクは受け取りました。これは今夜にでもいただくと……。
「……ゴルド? ヨダレが見えるんだけど、まさか食べるの?」
「あ、いえ、こほん。それでは次に向かうのは草の地ですね。確かシャルドネの師匠がいる場所だとか」
「そうね。テツヤという別な大陸から来たと言っていたわね」
……またしても別な世界からでしょうか。そんな予感しかしません。
「シャルドネの武術の師匠ですし、ここは信用しましょう」
「ええ、信用して貰って良いわよ」
「テツヤ……聞き覚えがあるような気がしますが……」
ミリアムが独り言を言っています。何か心当たりでもあるのでしょうか。
「思い出せません。代わりに草の地にも雪の地の人間が住んでいます。万が一その師匠さんがいなかった場合はその人に相談してみてください。私が先に連絡をしておきます」
「ありがとう。助かるわ」
ミリアムの右手には鳥かごと二羽の鳥がいました。もしかして連絡用の鳥かなとは思っていました。
ん? 二羽?
「二羽って事は、雪の地にも連絡を?」
「はい。マリー様に定期連絡を。ゴルド先生が草の地に旅立つという話もしておこうかと」
「でしたら、この本についても連絡して貰って良いですか?」
「本ですか?」
ミッドの両親が持っていた本を見せ、難しい表情を浮かべるミリアム。これでも魔術研究所の関係者なので、実は何か知っているのかも知れません。
「わかりました。このタイトルっぽい紋章を書いて鳥に送りますね」
「お願いします」
もしかしたら魔術研究所に何か情報があるかもしれません。ボクが解読するよりも早いと思います。
「さて、最後にミリアムに伝言を伝えて依頼完了としましょう」
「え、何ですか?」
そう言って、シャルドネはミリアムの耳元に何かをささやきました。
その瞬間、ミリアムの目から大きな涙を流し、その場で崩れ落ちました。
きっとミッドが消える際に言った言葉をミリアムに届けたのでしょう。
☆
さて、町を出てしばらく歩き、岩の地特有のゴツゴツした地面から次第に草木へと変わっていきました。
「草の地の名前の由来は……まあ言わずとも分かるわね」
「ええ、この先に見える壮大な草原が物語っています。ただし少し問題もありますね」
「何?」
雪の地、そして岩の地と歩き続けて思ったのですが、やはり空気中の魔力が薄くなってきています。
「全く無い訳ではありませんが、この地では精霊術を普段通り使えそうに無いですね」
「魔力の関係?」
「はい。空気中の魔力が薄いです。死神グリムほど弱まる心配はありませんが、回復に時間がかかると言った感じですね」
そういう意味では、今日貰った金の塊は助かります。万が一な事があれば、これを取り込むことで多少の魔力は回復出来ます。
「油断は出来ませんが」
「まあ、雪の地と岩の地で騒がしかった分、草の地ではおそらく魔術を使う機会なんて少ないと思うわよ?」
「どうしてです?」
そして気がつけば、まっすぐ見えた先には村が見えました。
雪の地で見た活気のある商店街とはほど遠いですが、人々は笑顔で過ごしています。
「ようこそ私の生まれ故郷の草の地へ。ここは平和の地とも呼ばれているわ」
岩の地編はここで終了となります。次回からは草の地編となります。ここで一旦キャラクターのまとめに移ろうかと思います。
・ゴルド
見た目:短い銀髪、目はくりっとしていて少年顔。
特技:精霊術(鉱石)、神術、魔術、聖術、召喚術、治癒術
・シャルドネ
見た目:ツンツンした短い金髪、釣り眼、十六歳
特技:拳術
その他:心が欠けているため、力加減ができない(徐々に回復中)
雪の地
・マリー
見た目:長い紫の髪にツインテール。メガネ
特技:神術、魔術
その他:異世界から来た
・ミルダ
・ゲイルド
岩の地
・ミリアム
見た目:青く長い髪に白い肌
特技:魔術、神術
・ミッド




