レオさんとの紅月祭
レオさんに紳士的にエスコートしてもらって、弾むような気持ちで馬車に乗り込む。
学園までの道中、たくさんのお話をしたけれど、心臓がずっとバクバクしていて、あまり記憶がない。だって、間近でレオさんとお話しできることが嬉しすぎた。
レオさんもずっと笑顔で、なにを言っても笑ってくれる。夢のように幸せな時間。
それでも馬車が学園に近づくにつれ、私の中にも別の落ち着かなさが襲ってきた。だって今日は、私の中で気になることがたくさんあり過ぎる。
とにかく、紅月祭を成功させたい。
実は朝から学園に赴いて、できうる限りの準備は済ませてきた。なんせこのドレスでは走り回っての準備なんて難しいのですもの。
全生徒が楽しみにしているパーティーの食事もデザートも、完璧に準備が済んでいるし、お酒もたっぷりと用意した。
並べられた料理にあたるライトも完璧で、多種多様なメニューの数々をより魅力的に見せてくれている。
きっと、きっと皆に喜んでもらえるはずだ。というか、喜んでもらえると信じたい。
そして、紅月祭が無事に成功したら私、どうしてもレオさんに伝えたいことがあるから……。
こっそりと、レオさんの顔を盗み見る。
すると、レオさんもこちらを見ていたらしくばっちりと目が合ってしまった。
にっこりと微笑まれて、顔から火が出る思いで視線を逸らす。
ああ、やっぱり私、レオさんがとてもとても、好きなんだなあ……。
レオさんとともに紅月祭の会場に入った私に、昨年のような好奇の目はもう寄せられなかった。皆様和やかに、笑顔で迎えてくれるのが嬉しい。
昨年のように前日までイジワル系キツい顔立ちから、ふわふわコーデのかわいい系メイクに一気に切り替えると別人だと思われてしまう。
その悲しい現実をわかっていただけに、今年はシャーリーと話し合って、計画的に毎日徐々にかわいい系メイクにちょっとづつ寄せて行って、ここ一カ月ほどは、「以前に比べてずいぶん印象が柔らかくなった」と言われるレベルに調整してこの場に臨んだのだ。主にシャーリーの努力が報われた思いだ。
「おっ、今年も会場のライティングは錬金科に頼んだんだな」
「ええ、皆様とても協力的だったと聞いています。去年のノウハウをベースに、今年はさらに後半のダンスの時と外部の演者の出し物の際に、特別な演出があるそうです」
常とは異なる華やかな会場のライティングに気づいたらしく、レオさんが会場を嬉しそうに見渡している。実は私もどんな演出になるのかはしらないから、とても楽しみ。
少し会場を進んでいくと、早速料理のいい匂いがし始めた。
生徒たちも興味津々で集まっていて、料理のある近辺はひと際にぎやかだ。私も、レオさんにぜひ見て欲しくて、レオさんを誘って料理の方へと進んでいく。




