私もひとつ、提案があります!
「そうね、これまでは生徒会役員の抱えの料理人に準備していただいていたようですが、これを機に一般の料理人のかたたちに参入していただくのもアリですわね」
「あーわかりますぅ、お酒とか特に、高級すぎるのよりフルーティなお酒とかのほうが軽くて飲みやすかったりしますもんね」
「ああ、いいんじゃない? 酒でも食事でもデザートでも、豪華なものから平民でも食べ慣れたものを出すと、貴族にとっては新鮮で、平民にとってはほっとするラインナップになる。文化の融合ともいえるんじゃない?」
グレースリア様が乗り気になってくれたからか、フェイン様はじめ他の役員たちも次々に賛同してくれる。私はすっかり嬉しくなってしまった。
もしかしたら、貴族と平民が身分を越えて、和気あいあいと会話するきっかけが作れるかもしれないんですもの。
「はいはいはいはい! 私も! 私もひとつ、提案があります!」
マルティナ様が勢い込んで挙手をする。どうやらそうとう熱量のある提案みたい。
「毎年外部から出し物を披露してくださるゲストをお呼びすると思うんですけどぉ、今年は『ソルガ』の歌劇がいいと思うんですぅ! 私、もうたくさんの女性陣からお願いされててぇ」
「でた」
「浮わつき過ぎですわ」
即座にフェイン様とアデライド様が眉をしかめる。
「毎年でるらしいよ、『ソルガ』を呼びたいって話。あれでしょ、レックスとかいう看板役者がいるんでしょ? 去年も一回話にはあがったけど、彼がくると紅月祭が収拾つかなくなるって却下されたけどね」
なんだかその話、聞いたことがある気がする。私はこっそりルーフェスに近づいて、耳打ちした。
「もしかして『ソルガ』って、王都で一番有名だっていう歌劇団かしら?」
「そうだよ、姉さん、レオさんと一緒に行ったんじゃなかったっけ」
「やっぱり」
レオさんが連れて行ってくれた、あの歌劇団なんだわ。あの楽しくて華やかな歌劇なら、みんなに見せてあげたいと思う気持ちもわかる。
「歌劇の質が一流で、貴族にも平民にも、広く熱狂的な人気のある歌劇団だとお伺いしたことがありますけれど……確かに歌劇の間中、身分に関係なく、全員が舞台を楽しんでいましたし」
「貴族にも平民にも人気があるのならば、一考の価値ありですわね」
「その人気が問題なんだよね。女性人気が高すぎて、パニックになるんじゃないかって話だよ」
せっかく勇気を出してマルティナ様の援護射撃をして、グレースリア様もちょっと興味を持ってくださったというのに、ルーフェスにさっくりとくぎを刺されてしまった。




