恥ずかしいことを言ってしまった
お詫びの品でございます。
お納めくださいませ。
「先日のオーズさんとの調査の話をしていたら、なんとなくそんな話になりまして」
「すごいな」
「なにがです?」
驚いたように目を瞬かせるレオさんに、こっちが「?」となってしまう。
「いつの間にかクリスちゃんが市井官と民生官の橋渡し的な役割になってるところがさ」
「そ、そんな大層なことではないですよ!?」
レオさんの感心のポイントが思いがけなすぎて、慌てて否定する。
「いやいや、これまでの長い歴史の中で、ずっと協力しようなんて動きはなかったよ。それがクリスちゃんの話がきっかけで、変わっていこうとしてるんだから、充分すごいよ」
「ミスト室長もコーティ様もとても乗り気でしたし、多分いずれそういう流れになっていたのではないかと思うのですけれど……。西区の案件は差し戻し率が低いとも仰っていましたし」
「うん、もちろんミスト室長達も凄いと思うよ。そもそも協力っていう表現を使うのがまず驚きだからね。普通なら仕事量の軽減のために平民を使おうっていう思考になりがちで、『力を合わせて』なんて考えるの、貴族では本当に珍しいからさ」
「まあ、そうなんですか……そういえばコーティ様がそのお話の流れで、貴族には平民の力を侮っている輩が多いと嘆いていました」
「それ、俺も王城で仕事するようになってから、本当に如実に感じるんだよ」
「貴族でも平民でも、凄い人は凄いと思うんですけれど」
「だよな! でも平民と触れ合う機会が少ないからなのか、全然それが伝わらなくてさ。王城の人たち、そういうところ本当に頭かたいんだよ」
「やっぱりそうなんですね、コーティ様もそこが課題だと仰っていました。女性や平民が多く文官になると、最初におこる問題でもある、と」
「クリスちゃん……」
なぜか急に、レオさんががっくりと項垂れる。
「どうしました? お、お加減でも悪いですか!?」
やっぱり長旅の疲れが出たのだろうか。
心配で、回復呪文を唱えてみたり、扇で風を送ったりと慌てる私に、レオさんは脱力したように「ありがとう」と細く呟く。
その顔があまりにも元気がなくて「少し目を閉じて、おやすみになったほうがいいかも。肩を貸しましょうか? 膝枕がいいでしょうか」と問えば、レオさんは「じゃあ、甘えようかな」ともぞもぞと体勢を変えた。
ポスン、と膝の上にレオさんの頭が乗る。
一瞬目が合って力なく微笑まれた瞬間、自分がかなり恥ずかしいことを言ってしまったと気が付いた。
自分から、膝枕しましょうかって……。
いやいや、今は体調が一番だもの。だって、レオさんったら辛そうに腕で顔を隠してる。




