ドレスにメイクを合わせてみれば
「柔らかい……」
「クリスティアーヌ様は猫っ毛ですからね、もともと髪質は柔らかいのです。いつもはガッチリと固めてますので」
確かに下町にいたときは、髪の毛が短かったのによく絡まって困ったものだ。しかもなぜかすぐにぺちゃんこになるし。もしかして学園にいるときはそう簡単には直せないから、ガッチガチに固められていたのだろうか。
「自然で可愛らしいけれど、すぐにボリュームがなくなるのが心配なところでしたが」
「レオ君ったらすごいわねえ」
シャーリーが箱の中からとりだした可愛らしい髪飾りを、私の頭にそっと着けてくれた。
「ドレスと、お揃い……」
レモンイエローのふんわりした薄布を幾重にも巻いて薔薇のようにあしらい、白いレースでアクセントをつけたその髪飾りは、私の琥珀色の髪を明るく引き立ててくれる。
あんまり好きじゃなかったこの髪が、こんなに素敵に見えるなんて。
「ほら、とっても可愛らしいわ」
「髪飾りのボリュームがしっかりしているので、これなら長時間でも華やかさが損なわれません」
自慢げなお母様。そして、納得顔のシャーリー。
私も、ただただ驚くしかなかった。
鏡に見蕩れている間に、シャーリーによって手早くはっきりメイクからナチュラルメイクに変えられていく。目尻はアイライナーでちょっと垂れ目気味に調整され、唇は艶感のある淡いピンク、仄かなチークで可愛さまでプラスされたみたい。
化粧の魔力、すごい……!
「妖精さんみたいに可憐で、とても素敵よ」
鏡の前でクルッと回ってみれば、明るいレモンイエローのドレスがふわふわと揺れる。髪の毛もふんわりと舞って、気の持ちようなんだろうけれど、嘘みたいに軽い。
「これでダンスを踊ったら、さぞかし愛らしいでしょうね。早くレオ君に見せてあげたいわね」
「当日は紅とチークはもっと控えてもよいかもしれませんね。研究しなくては」
これ以上ナチュラルメイクにしたらほぼすっぴんではないのかと心配になるけれど、なんとなく鼻息があらいシャーリーとお母様に抗う気もおきない。
なにせ美容関係に関しては、正直全然気にしてこなかった。ふたりの判断のほうが自分より数万倍頼りになる。
「これまではクリスちゃんのお顔が映えるドレスを選んできたけれど、こうしてドレスに合わせて雰囲気を変えるのもいいものね」
「はい、より美しく、より気高くと考えておりましたが、もっといろいろな装いを試したほうが、クリスティアーヌ様の魅力を引き出すことができるのですね。盲点でした」




