子育て勇者と魔王の子供・41
王がユーヤを探しているとの話を聞いて、オーラは驚いたようだ。
「それは……あの、ユーヤさん、王都に戻るのは止めておいた方が」
「? なんで」
「だって……あまり良いほうには考えられません」
不安げな彼女を、ユーヤは不思議に思う。
「何故? 王はただ詳細を聞きたいだけだと思う」
「その詳細が問題でしょう? だって、魔王の子供を引き取ったなんて知れたら……最悪、処刑じゃないですか」
心底から心配そうである。
「そうかなぁ。いくら魔王の血を引いていたって、こんなに素直で可愛いのに」
「…………そう感じるのはユーヤさんだけです」
「そうかなぁ」
魔王の子供だって、ユーヤにとってはただの可愛らしい子供だ。頭はとても良いし、魔力も強いけれども、素直な良い子と思っている。願わくば、このまま素直に育ち、魔王の後継ではなく、真人間……真魔物になってほしい。
「だいじょうぶです。おにーさんはわたしとイリックがまもります」
「だいじょうぶだ! にーちゃんはおれとイリアがまもるから!」
双子は力強く言い切り、それぞれユーヤの手を握ってきた。小さな手が、可愛い。魔王を倒して世界を、皆を救いたいと旅に出たあのときの気持ちと同じように、この子達も護ってあげたいと思うのだ。
「王子、姫、このような勇者など、愚かな人間の手で殺させたほうが」
室内で火柱が起きた。ユーヤはイリックのおでこをつついてやる。
「イリック。部屋の中で火は駄目だ。火事になったら他の人の迷惑になるし、弁償しなくちゃいけないぞ」
「うん、おれわかってる! だからもやしたの、ぽちだけ!」
なるほど。見てみると、床も壁もスス一つついていない。見事である。きちんと力の制御ができているようだ。ぽちサマサマか。一日に何度もぽちに対して力を行使するので、かなり制御が上手になったようである。
「上手になってきたなぁ。でも、室内で火はよそうな?」
「うーん。うん、わかった! へやのなかではかぜできりさくことにする!」
違う方向に理解された。教育って難しい。
「……いや、えーっと……毛が抜けるし、血が出るから掃除が大変だろ?」
「あー、そっかー。んじゃ、外でぽちいじめることにする!」
「…………んー……惜しい。そこは『これからはあんまりぽちをイジめない』って言って欲しかったな」
「えー」
嫌そうに呟くイリックに、イリアが何か囁いた。
「(イリック、いじめないっていうのです。そのあと、たぶんっていえばいいのです)」
「…………わかった! にーちゃん! おれ、あんまりぽちをいじめない!(たぶん)」
「そっか。ありがとな」
小声の部分に全く気付かないまま頭を撫でてやり、嬉しそうなイリックを見つつ、横目で炭の確認。
「おのれ……うまいこと王子を丸め込みおって……外道勇者め……」
この調子なら間もなく完全復活しそうだ。ぽちの声で大体の復活速度が予想できるようになってきた。
磨いても意味のないスキルだが。
「ま、とにかく、オーラが治ってから王都に戻ることにするよ。大丈夫、心配するようなことにならないって」
「だといいのですが……」
相変わらずのぽちの扱い(笑)




