子育て勇者と魔王の子供・34
魔王の子息イリックと息女イリアを保護した勇者ユーヤ。彼の子育て能力を疑い、双子を保護したいと言い張る獣魔物(でも実は乗り物扱い)ぽちに、同じくなのかそうでないのか、とにかく一緒に行くと言い張る賢者の卵、オーラ。
何はともあれ、とにかく住み着く場所を探すことにした。
落ち着ける場所が良い。
魔物を連れていても詮索されないような場所。しかし子育て環境の良い場所。
たまにちょっかいをかけてくる淫魔シヴィーラのことなども考えると、あまり人がいる場所だと危険かもしれない。
何がきっかけで魔王の遺児と知れるかも分からない。
人と触れ合うことは最小限にしたい、のだが。
「にーちゃん、おれ、なんごくいってみたい」
「おにーさん、わたし、ゆきがみてみたいです」
子供たちは物見遊山気分だった。
「いや、あのな? これから住む所を考えようって言ったんだけど」
「うん。かんがえた! あついところがいい! そんで、うみでおよぐ!!」
「わたし、さむいところがいいです。ゆき、みてみたいです」
双子は好みが真逆のようだ。子供の意見は受け入れてやりたいけれども、両極端な意見を出されても困る。
「間を取るのがいいと思いますけど」
と、オーラ。
「子供の言葉に振り回されてちゃいけませんよ、ユーヤさん。ましてこの子達、魔王の子供ですからね? ユーヤさんはたまに忘れてるみたいですけど」
ユーヤはきょとんとしてから、言い返した。
「忘れてないよ。でもさ、別に普通の子供と変わりないだろ?」
「ユーヤさんのそういうところって凄いと思います。鈍いだけかもしれませんが」
疲れきった様子で言われ、褒められているのか貶されているのかよく分からない。
「我輩は寒いところが良い。暑い場所は毛皮がなぁ」
と、ぽち。もっさりとしている毛皮は、確かに南国向きではない。
その前に、問題が一つ。
「お前いつまでついてくる気だ。むしろペット扱いされたいのか?」
「外道勇者め。魔物にも権利を認めろ」
「そもそも乗り物だろお前は。権利もクソもない」
「…………悪魔か貴様はー!!」
「大体お前に聞いてないし」
勝手に意見を言われても困る。生活費を出してくれるのなら別だが。
あらぬ方向に向かって吠えているぽちは放っておいて(だんだんスルーすることにも慣れてきた)ユーヤは地図に目を落とす。
どこに行くべきだろう。
安心して暮らせる場所。子供たちがのびのびと生きていける場所。
この世界のどこに行けば、魔王の子供たちがのんびりと生きていけるのだろう……?
住処を探してます。




