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子育て勇者と魔王の子供  作者: マオ
36/117

子育て勇者と魔王の子供・34

 魔王の子息イリックと息女イリアを保護した勇者ユーヤ。彼の子育て能力を疑い、双子を保護したいと言い張る獣魔物(でも実は乗り物扱い)ぽちに、同じくなのかそうでないのか、とにかく一緒に行くと言い張る賢者の卵、オーラ。

 何はともあれ、とにかく住み着く場所を探すことにした。

 落ち着ける場所が良い。

 魔物を連れていても詮索されないような場所。しかし子育て環境の良い場所。

 たまにちょっかいをかけてくる淫魔シヴィーラのことなども考えると、あまり人がいる場所だと危険かもしれない。

 何がきっかけで魔王の遺児と知れるかも分からない。

 人と触れ合うことは最小限にしたい、のだが。


「にーちゃん、おれ、なんごくいってみたい」

「おにーさん、わたし、ゆきがみてみたいです」

 子供たちは物見遊山気分だった。

「いや、あのな? これから住む所を考えようって言ったんだけど」

「うん。かんがえた! あついところがいい! そんで、うみでおよぐ!!」

「わたし、さむいところがいいです。ゆき、みてみたいです」

 双子は好みが真逆のようだ。子供の意見は受け入れてやりたいけれども、両極端な意見を出されても困る。


「間を取るのがいいと思いますけど」

 と、オーラ。

「子供の言葉に振り回されてちゃいけませんよ、ユーヤさん。ましてこの子達、魔王の子供ですからね? ユーヤさんはたまに忘れてるみたいですけど」

 ユーヤはきょとんとしてから、言い返した。

「忘れてないよ。でもさ、別に普通の子供と変わりないだろ?」

「ユーヤさんのそういうところって凄いと思います。鈍いだけかもしれませんが」

 疲れきった様子で言われ、褒められているのか貶されているのかよく分からない。


「我輩は寒いところが良い。暑い場所は毛皮がなぁ」

 と、ぽち。もっさりとしている毛皮は、確かに南国向きではない。

 その前に、問題が一つ。

「お前いつまでついてくる気だ。むしろペット扱いされたいのか?」

「外道勇者め。魔物にも権利を認めろ」

「そもそも乗り物だろお前は。権利もクソもない」

「…………悪魔か貴様はー!!」

「大体お前に聞いてないし」

 勝手に意見を言われても困る。生活費を出してくれるのなら別だが。


 あらぬ方向に向かって吠えているぽちは放っておいて(だんだんスルーすることにも慣れてきた)ユーヤは地図に目を落とす。

 どこに行くべきだろう。

 安心して暮らせる場所。子供たちがのびのびと生きていける場所。

 この世界のどこに行けば、魔王の子供たちがのんびりと生きていけるのだろう……?


住処を探してます。

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