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子育て勇者と魔王の子供  作者: マオ
33/117

子育て勇者と魔王の子供・32.5

 わが城から魔王退治に出て行った兵士が、勇者と呼ばれるまでになったのは誇らしい。

 旅立った彼が魔王城までたどり着いたらしいとの報告を受けたとき、これで世界は平和になると、王は確信した。


 それから一月。

 戻ってきた彼は、嫁と二人の子供を連れていた。

 王はなんとなーく、状況を理解した。


 うんうん、そうか。やはり命は惜しいか。そうだよな、ワシだって妻と娘と息子を残して死ねんわ。

 魔王は病死した?

 いやいやそんな下手なウソつかんでもええ。

 そんなにあわてんでもいいわい。ワシだって鬼ではないぞ。魔王を倒すのに失敗しても怒らんから。

 今までだって、さんざんいろんな戦士や剣士や魔法使いが挑んでも倒せんかったわけだし。

 この年になると、いろいろと諦めもでてくるからな。 

 いやー、お前さんが羨ましいわい。若いってええのう。

 ええから。あわてんでええから。責めたりもせんよ。

 可愛い子供じゃのー。双子か。可愛いのー。お前にちーとも似とらんな。嫁にも似とらんような。

 ん? 嫁じゃない?

 何を言うとるか。嫁が怒っとるぞ? いやいや、いいから。謝っとけ。

 円満な夫婦のこつはな、引きずらんことじゃ。あと、折れるときは折れろ。良いな?

 ん? いやいや、だからそんな下手なウソをつかんでもいいわい。

 こんなに可愛い嫁と子供がおる男に、魔王退治せいなんて酷なことはいわんよ。

 田舎でゆっくり達者で暮らせ。元気でな。

 ああ、退職金は出んぞ? 魔王退治に失敗しとるんじゃからな。



「……ぜんぜんまったくちっともさっぱりしんじてもらえなかったですね、おにーさん」

「……そうだね……」

「にーちゃん。げんきだせ」

「……大丈夫だよ、俺は大丈夫……」

「……どうしてあんなに力一杯否定するんですかねこの勇者さんは……」

「? オーラ、何か言ったか?」

「いーえ! なんにも!!」

「なんで怒ってるんだ……?」



 勇者かと思った男は勇者ではなかった。王はがっくりと肩を落とす。

 平和はまだまだ訪れないのかと。

 彼が退室し、城を去り、王都を去った後、知ることになる。

 魔王が、その姿を消したことを。

 

 え、なんじゃそれ。なんだと? 魔王城にまで行けたと?

 なにぃっ!? 魔王の姿がないと!?

 ちょ、ま、おい! 本当かそれは真実か!?

 おぉい!! 呼び戻せ!! 誰を? あの男じゃ!

 ほら、えー、あー、なんといったか……魔王城までたどり着いた男がいたじゃろ?

 ほれ、あー、こないだ戻ってきたではないか、嫁と子供連れて。

 名前が思いだせんのう……とにかくあやつに事情を聞かねばなるまい!

 ……なに? どこに行ったかわからん? 捜せーーー!!


い、一体何を言っているのかわからねーと(略)状態の王様。

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