子育て勇者と魔王の子供・25
オーラが加わって初めての夜。
嵐が来た。
ユーヤの目の前で、仁王立ちする女性二人。
「……なにがどうしてこうなってるんだろう?」
呟いたユーヤに、イリックとイリアが頷いた。
「にーちゃん、やっぱすげー」
「おにーさんはそのままでいてください。わたしがおおきくなるまで」
「??」
双子の言っていることの意味がよく分からない。
首をかしげながら、前方を見る。にらみ合う女性二人の間で、ぽちが「伏せ」のままだ。シヴィーラの魔力にやられている。
対しているオーラは怯んでいない。淫魔の魔力と言うのは、同じ女性には効果がないのだろうか。
「うふふふ、どちら様でしょうこちらの年増は?」
「あら、あなたこそどこから湧いて出たの小娘?」
怖い。
「……あー、あの」
割って入ろうとしたユーヤの袖を、イリアが引いた。
「ん? どうしたんだい、イリア」
「おにーさん、わたしきゅうにのどがかわきました!」
「あ! おれもそんなきがする!! うん、どんどんのどかわいてきた!!」
「え? ああ、じゃあ水筒から水を」
と、手に取った水筒が、ヤケに軽い。つい夕方に水を入れたばかりで、まだ誰も飲んでいないはずだ。
フタを開けると、空になっていた。
「あれ? いっぱいになるまで入れたのになぁ」
「ふしぎですね。でも、のどがかわきました! というわけでかわにいきましょうおにーさん!」
「ふしぎだな!! でも、のどかわいた!! だから、にーちゃんいこーぜ!!」
双子にぐいぐいと引っ張られる。オーラとシヴィーラが心配だが、子供を放っておくわけにもいかない。
「ぽちー、彼女らのこと止めといてくれな? 俺、二人に水を飲ませてくるからー」
「我輩を殺す気か貴様ー!!」
ぽちの絶叫は、唸る風にかき消された。多分、イリックだろう。
……戻ってくると、何故か三者とも、土まみれになっていた。
「?? どうしたんだ、皆?」
ユーヤの言葉に、
「いいえ、なんでもないのよおほほほほ」
シヴィーラが引きつって笑い、
「なんでもないですから、ユーヤさんはお気になさらず。さすがね……子供とはいえ魔王の血筋……」
オーラが何かを呟き、
「……」
ぽちは気絶していた。
「? まぁいいや。水浴びでもしてくるといいよ。近くに川があるし。ああ、オーラ、せっかくだし、イリアも一緒に連れて行ってあげてくれないか?」
「……」
「……」
オーラはしばらくイリアを眺め、イリアも同じようにオーラを眺め、ちびっ子はふん、と、息を吐き出した。
「しかたありません。せんぽくらいゆずってあげてもいいですよ、おねえさん」
「うふふふふ、そうね。女同士の話もいいかもしれませんね……」
なんだかよく分からないが、背筋がぞわっとしたユーヤは、思わず周囲を見回した。
……魔物の敵意は感じない。何故ぞっとしたのだろう。
「おほほ、じゃあ、あなたは私が洗ってあげ」
何か言いかけたシヴィーラが、突然風に乗って消えた。
「? 今シヴィーラさん、何か言いかけてなかったか?」
「ううん。べつにー」
イリックに言われ、気のせいだったかと思い直す。
「じゃ、俺、メシの支度しとくよ。オーラ、イリアのこと頼むな」
「ええ。さ、イリアちゃん、行きましょうか。じぃっくりお話しましょうねぇ」
「かぜをひいたらいやですから、すぐかえってきます」
「イリア、がんばれー」
「イリックもがんばってください。おばあさんがもどってきたらようしゃしなくていいですよ」
「おっけー!」
双子の会話に首をかしげながら、ユーヤは荷物から鍋を取り出した。旅の人数が増えたので、ご飯の支度も大変だ。まぁ、子供たちもオーラも手伝ってくれるだろう。
賢者の卵少女ぶいえす淫魔の美熟女! ……えーっと……なんだこのはーれむふらぐ(笑)




