子育て勇者と魔王の子供・13
ぽちが加わって、一日の距離はかなり進めるようになった。このまま順調に歩けば、一両日中に人里につけるだろう。
「王子、姫、こやつ置いて走ったほうが速いですが」
「だめ。にーちゃんおいてったらおこる」
「だめです。おにーさんといっしょにあるいてください、ぽち」
相変わらず、魔王の子供である双子は、勇者ユーヤになついてくれている、らしい。
一体どうしてこんなにユーヤになついてくれているのか。
「我輩、納得がいかないのですが。何故に王子も姫もこやつにそこまで信頼を寄せていらっしゃるので? こやつ、勇者ですぞ。魔王様を殺しに来た男ですぞ?」
同じような疑問をぽちも抱いている。二度目に遭遇したときにユーヤに疑問をぶつけてきていた。
「うるさいなー。ぽちはいいからあるいてればいーんだよ」
「ああ……綺麗なお顔で容赦なし……まさしく魔王様の御子……素敵」
「きもちわるいです。だまりなさい、ぽち」
「了承いたしました、姫。素晴らしい……」
こいつこのまま子供たちの傍に置いておいていいのだろうかと、ちょっと思ったユーヤである。
教育に悪い気がしてきた。
食事時。
「ぽち、お前って食事に何を食べるんだ?」
「ふふははは! 貴様の肉を食わせ」
「ぽち! にーちゃんにかみついたらだめだ! おしおきどかーん!」
「ぬわおう!?」
イリックの一撃で、ぽちは焦げた。その後、自分で獣を狩って来て泣きながら食べていた。
「普通に肉食なんだなお前」
「一番の好みは人肉だぞ。貴様は肉が硬くてまずそうだが」
「ぽち。おにーさんをたべたらつぶします」
イリアの冷たい目線に、ぽちは泣きながら素敵と呟いていた。変態である。
夜間。
「王子、姫。我輩の毛皮はあたたかいですぞ?」
「あ、そうだな。あったかそうだ。ぽちにくっついて寝たらいいんじゃないか、二人とも」
夜間は気温が下がるので、少し寒いかもしれない。実際今までも、双子は常にユーヤにくっついてきていた。寒いのと心細いのが重なったのだろう。ぽちは一応魔物なので、寒いのも心細いのも緩和されるだろうと、ユーヤは思ったのだが。
「えー、やだー。おれ、にーちゃんとねるー」
「わたしもおにーさんとねます」
双子はあっさりと拒否した。
「? なんで? ぽちは温かいと思うけど」
「やだー。こいつきもちわるいもん。へんたいじゃん」
「きもちわるいです。へんしつしゃといっしょにねたくありません」
にべもない。
結局、双子は今までと同じく、ユーヤの横で毛布に包まってくっついてきた。
「ぬぐぐぅ……おのれ勇者……我輩も御子と一緒に寝たかったのに……」
子供たちの判断は正しかったかもしれない。明日も一緒に寝たほうが良さそうだ。
……ぽち、退治したほうがいいんじゃないかな、勇者(笑)




