おまけ1 宝探し中のアリスとシルヴァン
「ヒントには『双子の山』とあるな。山と言えば山脈だ。山脈は北にある。まずは北を目指そう」
アリスは潤んだ瞳でシルヴァンを見上げ、答える。
「はい、私、殿下のご指示に従いますわ」
シルヴァンは頷くと、足早に北の方へ歩き出した。
「あ、あの殿下? 私、その、デュカス公爵令嬢とは違って、このようなことに適した装いをしておりませんの。ですから……手を引いていただけますでしょうか?」
シルヴァンは笑顔で振り返りもせずに言った。
「なにを軟弱なことを言っている。これからあの山脈まで行くんだぞ? そんなことではダヴィドたちに後れを取るではないか」
「え? 殿下? 今なんと?」
アリスは息を切らしながら、懸命にシルヴァンの後ろを追った。
「何度も言わせるな。僕を誰だと思っている。それより、もっと速く歩けないのか? さあ、目指すはあの山脈だ。今日中に頂を踏むぞ」
そう言ってシルヴァンはさらに早足で歩く。
「今日は楽しい登山になりそうだ」
シルヴァンが振り向くと、そこにアリスの姿はなかった。
周囲を見回し、アリスが隠れていないか確かめると、シルヴァンは何事もなかったかのようにダヴィドとの約束の場所へ向かった。




