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140-6 帰還 聖なる旅の終焉

 そして、その後も幾度となく人々の、また子供達の危機を救いまくった一体と一頭。

 それは全世界に各地の神の化身として伝説を残していった救世の旅、星を巡る旅。


 しかし、いかなる時も聖火だけは決して絶やさずに。

 人外ゴーレムたる者は、クリスマスコンパスや蟻地獄ゴーレムなどと同じように、自分が生まれてきた意味を決して忘れてはならないのだ。


 やがてメルスの化身として活躍しつつ、ひよこ大陸を貫通してロス大陸へと帰還し、ハイド王国でもやりたい放題にやりながら、ついにはゴール目前である王都アルバの王宮庭園を駆け抜けた。


 王都外苑の壁はすべて飛び越してきたものらしい。

 そしてまた反対側から飛び越えていくのだろう。

 最終目的地アドロスへ帰還するために。


「なんだ、こいつらは。

 またあいつが何か余計な事をやらかしているのか⁉」


 本日は中庭で息抜きをしていた疾風のミハエルが、思わず茶を噴きながら眉を寄せるほど異様な風体の組合せだった。


 それから王宮ゾーン西門にあるグランバースト公爵家本宮(シルベスター離宮はあくまで離宮)である西のフォートレスの銃眼が立ち並ぶ前を、御仲間のゴーレム達であるシルベスター騎兵隊にハンカチを振って見送られながら王宮ゾーンを後にし、最内のアルバストーン製防護壁を飛び越えてから王都アルバの西大通りを一心に駆け抜けていく二人。

 いや、一体と一頭。


 そして彼らは王都の警備を振り切って駆け抜け、ついに帰ってきたのだ。

 世界を一周してブツダム生誕の地たるケモミミ園へと。


 生憎な事に、そこに生えているのは沙羅双樹の木ではなく、数えきれないほどに増殖した植物系精霊であるドライアドの群れなのだが。


 グランバースト公爵家シルベスター離宮内のヒナダムGが開催された拡張空間、というか捕まってしまわないように中には入れないので離宮前、そこが感涙のゴールだ。


 弟子のドラゴンと共に、千手で天を突きあげ、万歳しながら駆け抜けようとした千手観音像。

 しかし、今度は縦方向の北方面に向かって惑星周回二周目に入ろうとしたところで、園長先生が仕掛けていたカスミ網に引っかかってしまった。


 カスミ網は日本では違法な代物だが、動く仏像の密猟というのも非常にレアで珍しいケースではないだろうか。

 これが日本国内であれば警察も検挙を躊躇われる内容である。

 またあの苦労人な総理大臣が唸ってしまうような案件であろう。


    ◆◇◆◇◆


 お、無事に千手観音ヒナダムGを捕獲出来たか。

 さすがに、こんなものを野放しにしたままではなあ。

 ミハエルやギルマス・アーモンにでも見つかると、また煩いからな。


「おまえ、ようやく帰ってきたのか。

 いや、おまえってば、何故そんなに体が霊光に輝いているのだ!

 何をやってきたんだよ。

 ヒナダムの閉会式までには帰ってきてくれるのかなと思ったのに。


 さて、ところで聖火のログはどうなっているかな。

 おお、感心感心。

 聖火はちゃんと絶やさずにいたね。

 それは聖火ランナーの心得中の心得なんだからな。

 ところで、一緒にいるそいつはなんなんだい」


 俺も思わず不思議そうに、そいつを見てしまった。

 それも無理もないだろう。

 まるで聖者(カスミ網に引っかかり中)に従う従者のように、恭しく付き従っているドラゴン。

 この魔法糸の網が、特に主に危害を加えるものではない事がわかるのか。


 これはまた賢い子だな。

 顔も何か、聖なる雰囲気を放っているし。

 おまけに手には、何だか光る玉を持っている。

 ドラゴンというよりは、まるで伝説の東洋系の龍だな。


 だがケモミミ園にいる連中よりは多少小ぶりなのだが、この子も紛れもないドラゴンなのだ。


「なあ、そいつはここで飼うつもりなのか?」


 俺も、若干困惑気味に訊いてみた。

 しかも千手観音はそれを聞き、驚いたような表情をしているみたいだし。

 一体何をやりたいものやら。


 千手観音は、しばしドラゴンを見ていたが、やがてゆっくりと頷いた。

 ドラゴンが心なしか、はにかんで微笑んだような気がして見えた。


 みんな結構色々と拾ってくるので今更なのだが(大型魔物は自分が一番拾ってくるのだし)。

 とはいえ、野良ドラゴンなどが子供達に害をなしては困るのだ。

 見たところ、躾はとても行き届いているようなのだが。


「じゃあ、ドラゴンよ。

 竜舎へ案内してやろう。

 だが、おまえ。

 ここで暮らすつもりならば、先輩竜の言う事はよく聞けよ」


 頷く、まだ若そうなドラゴン。

 網から解放した千手観音の後を甲斐甲斐しく大人しくついてくるようだった。

 そしてゲートを潜って行った先の竜舎で、ゴン太に声をかける。


「おーい、ゴン太。

 新入りのドラゴンだ。

 野良竜なのをブツダムが拾ってきたらしい。

 こいつの躾を頼む。

 特にグランバースト公爵家の血の掟、家族の掟についてとかな」


 呼ばれて、のそっと現れた、自分よりも遥かに大きなサイズのゴン太にビクっとするそいつ。

 ゴン太は胡乱そうな目でそいつを見ると、グアアっと一声大きく吠える。


 あれかな。

 勝負付けというか、上下関係の確立というか。

 先住猫と新入り猫の関係?


 新入りが恭しく頭を下げて、それから何かをドラゴン同士でボソボソと話している。

 そして豪快に大爆笑するゴン太。


 あれ?

 何かいい話でも聞けたのか?

 よかったら俺も聞きたいな。

 これはファルを呼んでこないと駄目だろうか。


 とりあえず、念のためにヒナダムGをジョリーに見せてみたが、特に問題はないと言う。


「若干、神聖エリオンや精霊に近くなっておりますが、大筋は元のゴーレムからそう変わってはいませんね。

 元々あなたが作るゴーレムときたら、あの真理さんの化身であり、そのベース魔核の製造責任元こそは船橋武、あの錬金魔王なのでありますからな。

 それをあなた、精霊魔王たる者が更に改造して使っているのでありますから、元来普通ではない物なのです。


 大体、あなたの作る全てのゴーレムは、何らかの形であなたの性格を受け継いでいますのでね。

 何か不審な点があるとしたら、御自分の胸に手を当てて考えてみられればよろしい。

 では私はこれで」


 うおう、ジョリーにまで言われちまったぜ。

 言われてみれば、まさにそうなのであるがね。


 気が付くと新入りのドラゴンは、話を聞きつけて急いで見に来たファルに、得意の「よしよし」をやられて思いっきりデレていた。

 その手にした不思議玉を更に輝かせて。


 そして同じくファルに撫でられて、その巨身を大幅に輝度を上げた霊光に輝かせ、厳かにグランバースト公爵家の竜舎を照らしている千手観音ヒナダムGが聳えていたのだった。


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