139-4 ひな祭りG
それから三体のヒナダムGの調整を終えた俺は、各種のパーツを作り、仮組み立てしたりバラしたりを繰り返した。
何しろ組み立て対象のサイズがでかいからな。
いつものように、その場でいきなり作ったのでは行事に間に合わない。
ノーマルヒナダムで作ったシリーズを踏襲しているが、ジャンプしたりなどの機能を標準搭載してある感じだ。
普通なら、こういう重量物を飛んだり跳ねたりさせると危ないのだが、そこは魔法様々だ。
所詮は幼稚園児達を中心とした子供達の御遊びのための道具なのだから、安全さえ確保できればいいのだ。
定番の尻尾シリーズなども作ったし。
ペットダム風の可愛いプリティヒナダムGシリーズも作ったが、そういうものは可愛いと見せかけて、その実は結構エグかったりするのだ。
ヒナダムを組むための組み立て場も大量に製作した。
さすがに人力では組み立てられないからな。
なかなかに壮大な景色になった。
見渡す限りロケット打ち上げ用のプラットフォームを備えたかのような巨大ロボット工場の群れだわ。
これが地球なら、たとえヒューストンあたりでも有り得ないような光景だな。
それらへと移動できるポータルになる場所からは、ゲートを潜ればすぐに行けるのだが。
場所の制約を受けないのは、やっぱりいいな。
そして組み立てた場所からプラットフォームへはゲートを通して移動させ、搭乗する本人も移動して乗り込むのだ。
もちろん、それっぽいBGMも流して気分を盛り上げる。
ヒナダムと違って中へ乗り込む仕様なので、サイズ的に当然のように大人用も作った。
今回は搭乗者の能力が反映される仕様なので、大人の部と子供の部で競技は分けるかな。
いや、それも面白くないか。
子供でも、パワーはヒナダムGのものなのだからな。
まあ成り行き任せでいくとしますか。
おっと、肝心の御雛様の製作を忘れていたぜ。
そしてグランドプラザに設置された巨大雛段に立ち並ぶ、大慌てで製作された雛人形達の雄姿。
基本形のヒナダムを巨大化させたようなものか。
むろん、もれなく自立行動型のヒナダムGなので、何かあればこいつらが出動するぜ。
もちろん、こいつらも人工的な魔導ソレノイドアクチエーターによる顔面スキル付きなので、怒らせると夢に出てきそうな代物だ。
概ねのパーツが出揃ったので子供達を呼んできた。
まずは御雛様会で、おやつの時間ね。
今回は野外御雛祭りだ。
ピクニックシートを敷いて、子供達は思い思いに座り込む。
前もって山本さんに頼んでおいたので、雛祭りの御菓子は既に届いている。
「今年はちょっと変わった御菓子も用意してみましたよ」
「どれどれ」
おや。
カクテル風デザインの御洒落なムースみたいだが、中身は本格的な菱餅だった。
こいつはスーパーで売っているような、なんちゃってカクテル菱餅おやつとは次元が違う。
上にはスライスした生の苺が生クリームの上に添えられていた。
「へえ、いいじゃないですか」
「あはは、勤務先の和菓子店でも、こういう物を作ったりしていたんですよ。
大きい子向けにね。
さすがにうちの田舎では高級過ぎて商品化は出来ませんでしたが、御店や実家の関係で配りました」
他に見せてくれたのは、桃色に着色した和風クレープと、苺で作った顔に見立てたデザインの御雛様クレープだ。
和風クレープは桜祭りでも団子付きで出されているな。
そしてヒナダムジャイアントの御雛様は実に壮大なスケールだった。
五段飾りで、各段の高さが十メートルサイズなので、御雛様と御内裏様の頭頂まで七十メートル近くある。
ほぼアドロス遊園地の観覧車とほぼ同じ高さだ。
幅も六十メートルほどあるから、もはや巨大建造物と化していた。
さすがの怪人赤マントにも手が出せないようだ。
悔しそうにしている赤マント常習犯の子達。
怪人赤マント対策にこういう手段もあったんだよなあ。
まあ、ケモミミ園の中の御雛様は諦めるとして。
また悪戯小僧にやられっぱなしで髪の毛が伸びてもいけないので、屋内の御雛様は自立型ヒナダムにしてある。
あれはあれで子供達のいい遊び相手になるのだが。
各地の子供達も集めてきた。
エルミアの方はエリーンに任せきりでいいし、エミリオに言っておいたのでサイラスの子供達は、あの子が連れてきてくれるだろう。
ハミル殿下は彼女の侍女と先に来ていたし、ベル君の関係も呼んでおいた。
今日はフィアの奴も呼んでおいたので、ベル君には早めに仕事を切り上げてきてもらう感じにするように上司へ頼んでおいた。
あと織原も忘れずに呼んでおく。
もちろん、愛しの彼女も一緒だ。
「あれからフィアの奴、何も騒ぎは起こしていないですか?」
織原が若干心配そうに訊ねてきた。
「ああ、御蔭様でな。
何かあればベルグリットが来てくれれば安定するし、最近は新御兄ちゃんのお前にも慣れてきているから」
「うーん、新御兄ちゃんの称号ですか。
それは俺としても微妙ですね~」
「まあ、そう言うな。
俺も大神殿の責任者として、あいつを預かっているんだ。
親権者としては、賑やかなうちの雛祭りくらいは出させないとなあ。
あいつの親からもよろしく頼まれているんだし」
頼まれた先が、日本で言うなら黄泉比良坂相当となる、あの世とこの世の中間にあたる空間だったのは、また御愛嬌だがな。
「まあ、大丈夫なんじゃないですか?」
「頼りにしているぞ、魔法番長」
「園長先生。
そろそろ、その言い方は止めにしません?」
「織原組の子供達は、その呼び名が気に入っているみたいなんだが」
「うう、それを言われると言い返せない」
「はっはっは。
いいじゃないか。
俺なんか、自分から副園長先生に『俺と一緒に冒険の旅に出よう』などと誘っておきながら、殆どどこへも出かけずに今ではこのザマなんだからなあ。
まあダンジョン探索へ連れていったくらいか」
「園長先生も、今の生活は気に入っているんじゃないんですか」
「まあ、そらそうだ。
これだけ楽しくやっていたらなあ」
壮大な巨大ロボット軍団は、女の子達からも大変興味を引いたようだ。
みんな俺の作ったロボット・カタログを熱心に眺めている。
見本を巨大御雛様にしておいたしな。
御雛様って、昭和の昔から大きい方が豪華で喜ばれるんだよなあ。
中にはマリーみたいに小さくても自分の御気に入りの御雛様を大事にしているような子もいるがね。
「アル御兄ちゃん」
「お、来たか、エリ」
さっそくポールにもカタログを見せてやる。
この子はトーヤ達と一緒にロボットアニメを見ているしな。
ポールは真剣な表情でカタログをめくっている。
勝敗に拘るよりも、結構マニアックな仕様に作る子だからな。
エディと同じくらいマニアックでいながら、さほど勝ちに拘るタイプではない。
本当に職人気質な子なのだ。
「今年はマリーもやる」
「そう。
じゃあ、御兄ちゃんが作ってあげるよ。
どんなのがいい?」
「可愛い奴」
「そうか。
じゃあ、こんなのはどう?」
可愛らしい美少女戦士のような、御雛様戦士のページを示すポール。
おお、さすがはポール。
なかなか目の付け所がいいじゃないか。
そいつは結構プレミアな代物なのだよ、ふふ。
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