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137-7 意外な対戦

「どうでもいいが、これ【バレンタイン企画】なんだよな。

 シル、肝心のバレンタインはどこへ行ってしまったんだ?」


「さあ。

 でもみんな、それなりに楽しんでいるみたいよ」


 まあ、それでもいいか。

 ちなみに、このバレンタインというイベント、うちの商会でも結構な売り上げなのだ。

 地球から仕入れた物を右から左に流すとか、あれやこれやでバレンタインでも莫大な利益は上がっている。

 地球の商売人の手管に乗らせていただいた格好だな。


 お次の対戦は、なんと南の公爵と東の公爵か。

 これもまた微妙な対決だな。


 堅物一本の東に対し、強面風でいながら実は精悍な王妃様の家来みたいな立ち位置だったらしい小太りな南の公爵。


 同じサイラス出身で従兄妹同士という関係から察するに、南の公爵なんて昔から王妃様にボコボコにされているのだろう。

 今も溌剌(はつらつ)として存在感溢れる王妃様と、もっさりした感じの南の公爵。


 てっきりアルバトロス王国の公爵家の跡取りなんだとばかり思っていたら、サイラスの公爵家の三男だった。

 それで成り上がったのだから実にたいしたものなのだが、このシーンでは幾分厳しいのではないか。

 向こうは体も締まって、カイゼル髭がよく似合う厳めしい顔付きなのだが、こちらは。


 緩んでいるとまでは言わないが、プリティドッグ絡みの痴態を散々見させていただいたので、どうにも割引だな。

 どうしてもとなったら、武士の情けでタオルでも投げてやるか。


 どうやら二人は木剣でやるらしい。

 東の公爵は大振りな両手剣、南の公爵は細身の片手剣だ。

 これは両手剣の方を食らったら結構痛そうだ。


「では、南の。勝負」

「御手柔らかに願いますよ、東の」


 おお。

 やる気だな、東の公爵。


 そして勝負は一瞬にしてついた。


「まいった!」


 重量級である自分の剣をあっさりと弾き飛ばされて、一瞬にして喉元に剣を突き付けられた東の公爵が降伏した。

 些か太目感を拭えない印象の南の公爵が、日頃の動作からは信じられないほど俊敏に懐に飛び込んで、一本気で真っ直ぐ過ぎる東の公爵の剣を鋭く弾き飛ばし、その眼前に木剣を突き付けたのだ。


「あれ?」


 だが俺の後ろで高笑いが聞こえる。


「おっほっほ。

 アル、ああ見えてもマックは、やる時にはやる男なのですよ。

 何せ、この私直々に子供の頃から鍛えたのですから。

 こちらへ来て再会してからもね!」


 なるほど。

 その姿が目に浮かぶようだな。

 特に南の公爵の涙目が。


 このおばはんと来た日には、子供時代には既に冒険者資格を持っていたらしいし。

 フィアのような味噌っかすとは違って、この人の場合は筋金入りだろう。

 親も元Sランク冒険者だったらしいからな。


「ここで会ったが、うぬが不運」と言ったところなのだろうか。


 どうやら、この王妃が王太子妃としてやってくる前から、南の公爵はこの国の公爵家跡継ぎに収まっていたらしいし。

 そいつは逃げるに逃げられないわねえ。


「マクファーソン殿、御疲れさん」


 俺は、汗を拭き拭き緑茶などをいただいている彼を慰労した。


「ああ、ありがとう。

 久しぶりにいい汗をかいたわい。


 何せ、我が国の元西の公爵バイトンと来た日には、あの為体(ていたらく)であったからな。

『いざとなったら、あなたが西の公爵の代わりを務めてください』などとロッテの奴が抜かしおって、散々鍛え直されたものさ。

 あれは今思い出しても顔が歪むわ。

 いや、お前がこの国へ来て西の公爵になってくれて本当によかったわい」


 そ、そうだったのか~。

 それはまあ、国を護る役目を持つ王家の一員である公爵たる者の御務めだから仕方がないよね。

 その御蔭で俺も他の公爵達からの覚えが目出度いようなので、まあいいか。


 その王妃様ときたら体力が余っているらしく、華麗にバレーをソロで踊っていた。

 股間に白鳥を飼ったまま。

 あれ、豪く気に入っているんだな。

 まあキャラクター的には合っているかな~。


 バックダンサーとして同じく股間に白鳥を仕込んだドワーフを躍らせたい気がするが、連中は既に派手なオレンジ色の衣装、しかもミニスカートでラインダンスを踊っていた。


 見苦しい、やめろ!

 ここをどこだと思っているんだ。

 ケモミミ園やブルーアイランドじゃあないんだぞ。

 連中、もうかなり酒が入っていそうだな。


 ボーイさんが通りかかると御盆ごとかっさらって、度数の高いカクテルをまるで水のように開けていくからな。

 だが、この王宮の主がやりたい放題なのだ。

 ましてや酒の入ったドワーフの集団など誰も止められるわけがない。

 それに今でもラブラブな国王陛下は王妃様に甘いからな。


 仕方がない。

 いっそ、俺も連中に混ざるか?



 そして、次の相手は王妃様対アレクだった。


「おい、アレク。

 何故、お前がここにいる⁉」


 だが巨大なウサギは、にっこりと笑うと見事なバレーを踊ってみせた。

 ウサギ流体力学に不可能はないものらしい。

 ああ、こいつも三歳女児だからバレーの習い事に憧れる時期だよね。

 って、そんなわけがあるかあ。


 どうやら、単に王妃様の真似が楽しいだけらしい。


「ところで、あいつの飼い主はどこだ?」


 すると、隣で見物していたミハエルが答えてくれる。


「ああ、それならウサギだけが招待されたみたいだな。

 飼い主の方は学校があるからと」


「そうだったか」


 そもそも、ここって日本と時差がないからアメリカ人は寝ている頃なんじゃないか。

 時間的にニューヨークは早朝くらいかな。

 いつも、さりげなくジョゼなんかもイベントに混ざっているけど、あれは若さと体力に任せての狼藉っていうところなのか。


 どうやら王妃様の御気に入りにブックマークされているらしいレイトン家格闘ウサギ総長たる帝王アレクは、このアルバトロス王国王家から直々に王宮の行事に招待状をいただける身分になったらしい。


 これは基本的に王族貴族以外は招待されないようなハイソサエティな行事なのに。

 そこでミニスカ・ラインダンスをしている、ごつい奴らも含めてな。


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