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137-5 サプライズ・パーティ

 結局、俺は仮面の騎士(SF系デザイン)、シルは魔法少女っぽい感じの派手な奴、レミはなぜかカーバンクルをチョイスした。

 顔だけ出した、むくむくの白い奴の着ぐるみで、まるでロイネスの女の子版みたいな感じだ。


 とっても可愛いからいいんだけどね。

 どうせなら一緒に踊らせようと思ってロイネスを呼んでおいた。


「おい、今日は毒舌を無しで頼むぞ」


 俺は魔力をふわあっと投げかけながら言い含めておく。


「わかってるさあ。

 いつも通りにバッチリとね~」


「いつも通りだったらアカンやないか!」


 だが、奴はまったく聞いていないようだ。

 まあいいか、ここではすべて『精霊のやる事』で済んでしまうだろうしな。

 他所の国の公式行事に出すわけではないのだから。


 本日は王国から公爵家への正式な招待状だったので、他のチビは連れてこない。

 と思ったらこいつらは来ていた。

 それは、もちろんトーヤとエディの御狐コンビの事だ。


 奴らは御稲荷神使の格好だ。

 こいつらにしては手抜きの仮装だな。


 親方は、てっきりバイキングの仮装でもやるのかと思ったら、なんと『大相撲大横綱』だった。


「こ、この手があったか。

 それにしても迫力があり過ぎだぜ」


 親方は、元々あんこ体形というか、揺すってもビクともしないような安定のある体形だ。

 それでいて身長二メートル以上あるからな。

 それはもう凄い迫力なのだ。


 おまけに超ド派手な千秋楽っぽいデザインの廻し一丁の御姿なんだから、周りの連中がかなりビビっている。

 まあ、赤ビキニよりはマシかな。

 俺もさすがに、あのマイクロ赤ビキニスタイルでここへ御邪魔する勇気はない。


 そこへ、うちのおばはんが挨拶にきた。


「ほっほっほ、さすがは親方。

 この仮装武闘会に、もっとも相応しい御姿ではないですか」


 何っ、今おばはんが何かおかしな事を言っていなかったか?

 俺は懐から招待状を取り出してみたが、仮装舞踏会の舞踏の上から何かが剥がれて、武闘の二文字が現れた。


 ま、また先祖から伝わる魔導の力を無駄に使いおって。

 あちこちの出席者の間でも、ざわめきが広がっていった。


 時限式の魔導招待状か。

 たかがこんな事のために、豪く凝っていやがるな。

 手紙に張り付けてあった同じ素材で出来た薄っぺらい紙というか羊皮紙の間に何か仕込んでいやがるのだ。


 さては、最初からそういう趣向だと人が集まりにくいので、こういう仕掛けにしておいたのか。

 まったくもって困ったおばはんやな。


 昔はこういう物を使って、契約書なんかに細工をして、性質の悪い他所の国を嵌めたりとかしていたのかもしれない。

 まるで昔の「後で字が消えるボールペン」みたいな悪戯だ。

 あれも悪戯をしまくった奴らがいたので発売禁止になったのに違いない。


「皆様、御手元の招待状にあるように武闘会を開催させていただきます」


 そうか。

 例のオニダム大会で、まだ親方と決着がついていなかったからな。

 今度は舞台を改めてというわけか。


 いっそ俺が早めにこのおばはんを退治しておくのも一興なのだが、そんな事をすると後が怖いよな。


 どの道、メインイベンターは既に決まっている催しなのだから、俺なんか来ても来なくても本当はどうでもいいのだ。

 やれやれ。


「だとさ」

「もう、御母様ったら」


「ねえ、パパ。ダンスは?」


「そうだね。

 俺達はこっちで踊っていようか」


 そして俺とシル、レミとロイネスとで踊りだした。

 とりあえずルンバね。

 子供達が楽しめるように。


 大型のラジカセから流した音楽がホールに流れ、他所の貴族家の年少の子供達も、うちの集まりへ一緒に混ざりだした。


 みんな仲良く踊っている。

 さすがに貴族の御嬢様とかは『武闘会』参加は嫌なようだ。

 御相手は御父様とか執事さんとか、あとは見栄えのする使用人とかの身内ばかりだ。

 せっかく社交界へ行くという事で張り切って来たんだろうに。


 これ、貴族の子供達も御披露目で来るような大事なイベントじゃないか。

 王妃のくせに何やってんの、あのおばはんは。


 うちの若い執事達も連れてきていたので、おチビな御嬢様方の御相手で踊らせておいた。

『幼稚園公爵家』の執事であるこいつらは、そういう事にも慣れている。


 そして向こうの方では『トーナメント表』が発表されて、イベントの開始を知らせる銅鑼が鳴り響いていた。


 銅鑼を鳴らしているのはドワーフではなく、なんかバーバリアンっぽい扮装をした王国騎士だった。

 やれやれ、御疲れ様だね。

 でも若い騎士なので、結構楽しそうにやっているな。


 そして第一試合で親方と対戦が決まった若い貴族から悲鳴が上がってきた。

 親方が土魔法を使ってその場で作り上げた特設の『土俵』に引きずり上げられ、またしても悲鳴が上がる中で立ち合いが始まった。


 ドワーフの宰相なんか行司さんのコスプレだし。

 なんとなく、こうなるのがわかっていたという事なのか?


 どこの世界に、そんな筋肉達磨の行司さんがいるんだよ。

 行事の格好をしていたって、ほぼ横綱スタイルじゃないか。

 今にも四股を踏みそうな雰囲気だ。

 BGMもトーヤが用意したらしい大相撲のあの雰囲気そのままだ。


「にいしー、ハンニバル山~。

 ひがあしー、エリンシバル海~」


 呼び出しを行うトーヤの声だけが弾んでいる。


 嫌だねえ。

 あの親方と相撲の立ち合いをさせられるのかよ。

 人族なら誰だって泣くだろう。


 俺ならそれでも楽しむだけなのだが、さすがに王国武闘会における正規の取り組みに対して乱入するのは不粋だしな。

 乱入していいのはあの人だけなのだが、それだと盛り上がりに欠けるから絶対にやらないよな。


 決勝の面子はもう最初から決定済みなのだ。

 実力でな。


「はっけよーい、残った!」


 そして、その仮面の貴公子に扮した貴族の青年は、おそるおそるチョンっと拳を付けた瞬間に、立ち合い成立という事で、猛速で前に出た親方の張り手一発で吹き飛んでいった。

 親方と御揃いで陰を踏んだ名前のように息ピッタリ?


 今度は悲鳴を上げる間もないな。

 可哀想に。


 武士(こうしゃく)の情けで、彼には空中にいる間からゴッドヒールの金色の耀きを放っておいた。


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