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133-2 王族の行事

 その向こうでは、親方達が餅をついていた。

 見ていると、何か臼の方が可哀想に見えてくる。

 俺が作った特製臼だから、壊れてしまう事は絶対にないのだろうが。

 そっちもギャラリー兼餅待ちの連中が犇めいていた。


「それ、息子。

 行くぞ」


「おう、かかって来いや、親父~」


 少し勘違いしているのではないかというような親子の会話をしつつ、非常にいいリズムで見ている方がドキドキするほどの、かなりの高速でつきまくっている。


 その隣ではトーヤ・エディ組が可愛らしく、子供用の臼でペタペタしていた。

 親方達ほど派手についていないが、これまた器用に上手についていた。

 さすが多才な狐獣人なだけの事はある。


 そこでは、うちの娘が御皿と御箸を持って待っている。

 うちの子も、いつの間にか日本人並みに御箸を使える。

 周り中がもう日本人並みに箸を使えているせいか、本当にいつの間にか上手に使っているんだよね。

 箸で食うような食い物を大量に出しているしな。


 もっぱら餅の供給はエルドア王国からになってしまっている。

 また、その他のドワーフの筋肉達磨どもが背中を丸めながら、ちまちまと上手に指先で餅を丸めて、三百人以上いる園児などに餅を超高速で供給しているのだ。


 どうして、こうドワーフって奴らは初めてやる行事をこうも簡単にこなすのか。

 俺なんか生まれてこのかた、怖くて餅なんか一回もついた事が無いんだけど。

 つく方も、つかれる方も怖いんだ。


 各地の王族達は行事が忙しいので顔を見せていない。

 うちだって一応は王族ではあるのだが、この離宮は殆どケモミミ園の拡張施設だからな。

 だが、そんな事は今更なのであった。


 今日はエルミアの教会の子供達も呼んである。

 餅を食べる時は事故が付き物なので、かなり注意喚起しているけど。


 うちも最初の頃は、餅を強引にアイテムボックスへホーミングさせるなどの対応をやっていた。

 獣人の子は噛む力や飲み込む力も強いので、結局喉に詰まらせる子は一人もいなかったのだが。


 今は子供達にゴーレム達が多数ついてくれているから、よっぽどの事はない。

 最近うちに来た子達が一番危ないのだが、そういう子には年長の子達がついてくれている。

 どっちかというと、年寄りが危ないんだけど。


 うちに年寄りはエバンス爺さんしかいないが、彼は矍鑠(かくしゃく)としていて、餅を喉に詰まらせる心配はまず無い。

 どっちかというと、アボランゼにいる文官肌の息子の方がやりそうな雰囲気だ。


 その次に年寄りなのがこの俺なのだが、さすがに若返った体で餅を喉に詰まらせない。

 日本人の魔王が異世界で餅を喉に詰まらせて死んだなんて日にはね~。


 そんな事にでもなった暁には両世界に跨っての笑い者だぜ。

 死ぬ時を暁というのもあれなのだが、まあ笑いを取れる案件という事で!


 やはり公爵は暇と見えて、二人の犬公爵も来ていた。

 よく考えたら、元祖犬公爵が本日の長老だなあ。


 まあ、元Sランク公爵は餅などには負けまい。

 嚥下障害なんぞには死ぬまで縁がなさそうな雰囲気だ。 

 彼の娘である犬王妃の方は王宮の新年行事があったので、さすがに来ていないが。


 彼はプリティドッグの子供達と仲良く餅をついている。

 危ないから子犬達に杵は持たせられないので、餅つき自体はジョニーと組んでいる形だ。


 南の公爵も交代でついていた。

 南の公爵だけに可愛い犬達と餅つきをさせたので、後で御義母様から文句を言われそうだ。

 バレたら「正月のやりなおし」くらい言い出しかねない。

 餅つきだけなら、やりなおしてもいいけどな。


 北のアニオン公爵は、アルグランドにいる娘のところへ行っているようだ。

 アニオン公爵家の騎士団を引き連れて、娘の嫁入り先である国の国民に餅を振る舞う算段のようで、うちからもゴーレムの応援を出しているが、そっちの付き添いは山本さんだ。


 葵ちゃんも瑠衣を連れて一緒に行っているので、レオンもあっちへ行っている。

 相変わらず、あのウルトラ幼児は野放しのようだ。

 まあ少々の事では、どうこうする事もないだろうし、第一あのオルストンの跡取りなのだから。


 ショーの奴が、元少年兵(幼児兵)を率いて果敢に餅つきミッションに挑んでいた。

 こいつらも逞しいので上手にやっている。

 東南アジア方面にも、こういうスタイルの餅つきってあったかな。

 あったとしてもずっと戦争をしていたから、この子達はまずやっていないだろうがね。


 まあ、あいつらの中に餅を喉に詰まらせるような間抜けな奴は絶対にいないだろうから心配はあるまい。


 俺も日本では本格的な餅つきなんて、とんと縁がなかったのだが、なぜか異世界ではつきまくっている。


 門松だって家に飾った事などなかった。

 ああいう物は値段が高いからな。

 会社には大きい物が飾ってあったけど。


 おせちなども振る舞われ、ヨーロッパの有名な宮殿を模した異世界の離宮では、さながら日本の園遊会のように和風な催しが行われている。


 着物を着て日本髪を結ったゴーレム達が、琴などの和楽器で正月らしい音楽を鳴らしているし、面白いのか着物を着ている子供達もいる。

 もう日本の子供だって正月に着物はあまり着ないんだけどね。


 今日はドライアドの連中も着物を着ていたりする。

 相変わらず、頭はピンク色なのだが。

 着ている着物も桃色系の柄が多い。


 バルドスの爺は王都の広場の方へ行っているようだ。

 また五千年の武技でも披露しているものに違いない。


 神聖エリオン様は、今年は王都の出張船橋神社にて巫女さん姿で頑張っている。

 餅だけは随時ゲートを通じて届けられているのだが。

 餅はカロリーが高いので、そろそろファルス体形が全長十メートル(おやのしんちょう)を超える頃だろうか。


 ゲートの魔法で繋いであるので、気が付くとジェニーちゃんがこっちに来ていたりするのだが。


 王都では今年もエルフ茶屋が出されていて、看板娘のレナちゃんは今年も頑張っている。

 子供達は年々大きくなっていくのだが、このレナちゃんはまったく見かけが変わらないので、やはり不思議なものだ。


 エルフの永遠の少女。

 彼ら、エルフ新町のエルフは悲しい逸話の持ち主達だが、今浮かべているその笑顔は本物だ。


 彼女には、相変わらず貴族の馬鹿な若者達が群がっている。

 御祭りとか関係なく、日頃王都から馬を飛ばしてエルフ新町に通い詰めているアホな連中なのだが、不思議とこの手の連中には出世する奴も多く、あれこれと上手くやっている事が多いようだ。


 生活に張りがあるというか、仕事にも気合が入るのだろうか⁇


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