9-5 戦闘準備
防衛用に自動警報装置を作ってみた。
内部に魔力によるセンサーを組んでみる。
魔力の照射器と魔力に反応するセンサーの組み合わせによるものだ。
これらのイメージの元になった物は工場で普通に使われている物なので、自分も交換作業などでよく使っていたため比較的簡単に作れた。
センサーはマギクリスタルを加工してみた。
魔力で作られたものは魔力に反応する。
照射された魔力は物体に当たると遮断される。
それを魔法PCの周辺機器として接続してある。
何かに反応すればアラームが鳴る。
魔力には探知系の魔法と鑑定が載せてあり、侵入したのが何者かも表示される。
識別した対象が登録された人物なら、ログは記録されるが警報は出ない。
高い場所にも反応するようにして、ディスサーチも付与してあるので敵にはその警報装置の存在が探知できない。
というか、この世界の人達は地球式の警報装置なんて存在すら知らないわな。
自動迎撃兵器も装備する。
センサーの応用で敵味方識別装置を搭載した。
タイプM2重機関銃の魔法機関銃を配備しておいた。
土魔法で土中に埋め込んであるが、敵を検知すると一斉に飛び出して、火、いや魔法を吹く。
仕組みは違うかもしれないが、元ネタは軍用のロボット自動機関銃だ。
こいつは取り扱い要注意の代物だ。
最新の注意を持って、充分テストした後に仕掛ける。
ちょっと思いついた事があって真理に聞いてみた。
「お前ほどじゃなくてもいいけど、魔法生物あるいはゴーレムのガーディアンみたいなものは作れないの?」
「作れない事はないけど、制御のシステムとかが難しいかも。
時間稼ぎのための単純な動きのゴーレムならどうかな。
どちらかっていうと、その方が貴方向きかしら。
魔力に任せて強力なものを大量に生み出す。
それを盾にして逃げるもよし、間隙をついてこそこそするもよし、物量作戦で敵を踏み潰すもよし」
なるほどな。
今はそれがいいだろう。
真理からゴーレム生成の魔法を教わった。
今回作るゴーレムはミスリルの核を奢ってあって、土のボディで壊れても回りから吸い上げ、供給魔力の続く限り動き回り、おおざっぱな命令で自動的に動く。
前進して踏み潰せとか、その城を叩き壊せとか。
細かい命令はその都度出すしかない。
くっくっくっ。
オリハルコンやベスマギル製の核も作ってやったぜ。
一応、それらにも真理のコアのデータをダウンロードさせてもらって組み込んでみた。
ほぼコピーしたと言ってもいいだろう。
転移の腕輪を作った時と同じような感じの作業だ。
今は完全に劣化版の物しか作れないけど。
これは、そのうちに高性能な物に出来るだろう。
元になった物が素晴らしい物なのだから。
後はソフトの問題だよな。
魔法PCやチート・アイテムボックスの能力に期待しよう。
ボディは自由に換装できる仕様だ。
その素材は鉄・ミスリル・オリハルコン・ベスマギルで作っておいた。
上級魔法金属製のボディは数が限られる。
ゴーレムは数を大量に生成しているので、通常は魔法で生み出された時の岩くれで出来たボディだ。
換装用のボディも、装備してやったアイテムボックスのインベントリに用意されている。
魔法も付与し、俺の使う魔法の全てを投入した。
そして巨大な魔法金属性の魔力バッテリーを積む。
こいつらにも装備してあるアイテムボックスに突っ込んでおけば、これも嵩張らない。
こいつも規格サイズになっていて、いつでも換装可能だ。
同じ型でも物によって千倍性能が違う。
更に物理兵器も全て搭載しておく。
大型の物には、いざという時には人間が乗れるようにコクピットまで……最早これはスーパーロボット!
それを見た真理が呆れていた。
「デジャブー……千年前の悪夢再び!
また余計な事を言っちゃった」
スーパーロ……いや、ゴーレム用のライフルを作成してみる。
お倉入りになっていて使う機会の無かったレーザー擬きも引っ張り出した。
やっぱり、これは男のロマン!
これは上級魔法・消滅の光メギドをビームに凝集して、貫通力の上昇並びに命中時に敵の体内で爆散する効果を与える。
ドラゴンブレスを収束したビーム版ブレスも作ってみた。
掃討に便利な火炎放射器の魔法も備える。
口径二百ミリの大型ストーンバレットは大型ゴーレム用のライフルに標準機能として採用されている。
単純に人間様用ライフルの十倍サイズだな。
完全に魔法の大砲だわ、これ。
銃身の下には、グレネードランチャー代わりに雷魔法で打ち出す電磁銃の砲身を装備する。
その弾丸はオリハルコン製だ。
命中したら敵を貫き内部で魔力爆発を起こし、爆散しその全てを魔力エネルギーに消費するように設定する。
これはへたをすると核爆発並みの威力があるので楽しみだ。
だがこれだと威力が強すぎて、幼稚園の防衛用には使えないじゃないか。
当面、使用禁止だな。
というか、使う機会が果たしてあるのか?
殆ど核兵器みたいなオウンゴール兵器だ。
まあ、一応作ってみただけだな。
昔実在したらしいアメリカ軍の『核バズーカ』みたいなものだな。
あれも当然のように御蔵入りになったらしい。
なんたってバズーカ砲じゃ射程距離が短すぎるわ。
ライフル弾に仕込む、核兵器としてはかなり威力の乏しいカリフォルニウム原爆だって、もっと射程が長い。
アメリカ軍の連中も、核を配備した当初は核兵器に対する知識が乏しかったそうだからな。
凄い威力のある新型爆弾くらいにしか思っていなかったようだ。
一回演習で、バズーカ砲の最大射程となる自分の手前数百メートル先を目掛けて、数十キロトンの破壊力があっただろうそいつを使ってみたら良かったのに。
きっと日本の被爆者の気持ちがよくわかるだろうよ。
一応ベスマギル製のエネルギー開放兵器もあるが、使ったらまず間違いなく水爆以上の威力があるので、さすがにこいつを使うのは躊躇する。
敵が地下要塞に篭った事を想定して、バンカーバスターを製造しておく。
何物をも貫通するオリハルコンのボディ。
このボディそのものが生成とは逆のプロセスを辿って、強大なエネルギーを放ちながら爆散する。
その生成時に食い尽くした凶暴な魔力を全て、魔法爆発のエネルギーに還元するのだ。
水爆の地下核爆圧に匹敵する衝撃の直撃だ。
例え、ぶ厚いベトンに包まれた地下要塞でもぺしゃんこさ。
そいつには各種シールドを無効化する魔法を作成し搭載してみた。
全てを貫く悪魔の貫通兵器だ。
更にケツには火薬式のブースターを搭載する。
本体の四倍の大きさを誇るブースターが、地上擦れ擦れから無煙火薬に点火して本体を地下へ打ち込む。
それはきっと、いかなる堅個な要塞の外壁をも苦も無く貫通する事だろう。
それからああ!
はっと気がついて後ろを振り返ると、ちょっと長生きな美人のお姉さんが冷たい眼差しでこちらを見ていた。
少し気を落ち着けて爆撃機を製造してみる。
なに、飛行魔法を付与したモックアップの爆撃機の模型を作って、そいつの中に人が乗れるようにしてみただけだ。
アイテムボックスの爆弾倉を設置した無限爆撃仕様だ。
飛行動力は風魔法と重力魔法。
そしてレビテーションも付与しておく。
万が一の際は静かに滑空する事も可能だ。
まあ何かあった時はホーミングで回収するけど。
ドラゴンナイトの襲来に備え、ドッグファイトのできる戦闘機も各種用意する。
魔法により空中でのホバーリングも可能なVTOLも用意した。
というか、単に魔法の力で飛んでいるだけのドンガラなのだが。
これも魔核を使用した一種のゴーレムなのだが、今のところ他の岩くれ達と似たようなレベルなのでラジコン飛行機レベルの代物だ。
まあ、他の機体でもホバーリングは出来るんだけど。
男のロマンだよ、男のロマン。
これくらいあれば、アメリカ軍が異世界侵攻連合軍を組んで攻めてきても大丈夫そう。
真理にもそれらを一式持たせた。
「だから!
あたしに何と戦争をしろと……」
女の小言は聞きたくないので、転移魔法で素早く消える。
どこへ行ったかって?
決まっている。
いきなりオルストン家へ転移魔法で現れたかと思えば、執事さんと奥方に手を上げて挨拶してから、すかさずアントニオの手を取って転移魔法で消えた。
そしてガラスの園へ行き、作った物を一通り見せておく。
「お前なあ……まあいいか。
そうだな。
ロボット機関銃と、ゴーレム一揃いは面白いな。
あと警報装置か」
さすがはアントニオ、話が早い。
それに、やっぱり男の子だぜ!
早速屋敷に帰って、警報を取り付けテストする。
警報の発信先は当主夫妻二人のスマホだ。
そして俺が警備会社の役どころとなる。
一応、スイッチ一つで屋敷全体へ展開できるバリヤーも配備する。
一通り仕掛けの設置を終えると、挨拶もそこそこにドロンと消えた。
「忙しない方ですのね」
「ああ、以前からああいうせっかちな男なんだ。
気にしたら負けだよ、マルガリータ」
今日の紅茶はアールグレイっぽい感じの紅茶だ。
地球産レシピの御菓子でまったり茶会中のオルストン家の面々なのであった。
もちろん、帰ってうちの警備隊の警報もエドとかのスマホを鳴らすように設定した。
他の警備隊員にもスマホを貸与する。
ハンズフリーやパーティチャットモードもセットした。
建物を守るために表面へ展開するバリヤーのシステムも配備する。
警報装置・バリヤー・自動迎撃システム・監視カメラ網・通信装置・魔道アサルトライフルに重機関銃、地上攻撃が可能な戦闘機に戦車代わりの巨大人型兵器。
そして警備の兵隊である冒険者どもは訓練の日々だ。
さあ帝国め。
いつでも攻めて来い。
お前らの動向は、皇宮にて不可視のカメラがしっかりと監視している。




