表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

63/1334

7-9 暗殺、殲滅、鎧対策

 結局、第一試合の後に暗殺者は来なかった。

 つ、つまらん。


 二回戦の相手はアントニオの敵じゃあなかった。

 おまけに思いっきり雑魚だ。

 連中の仲間でもなかったようだし。

 俺は周りの警戒に集中していたのだが、ちょっと余所見をしている間にアントニオが瞬殺していた。


 そして気を抜いていたアントニオが控え室の扉を開けた途端に、いきなり中から襲撃を受けた。

 だが生憎な事に、爆裂して吹っ飛んだのは襲撃者の方だった。

 当然アントニオはピンピンしていて爆炎の中で呆然と佇んでいる。


(バーカ。

 対アサシン用に自動反応式の迎撃装置を勝手に腕輪に仕込んでおいたんだよ。

 攻撃はバリヤーが自動で防ぎ、カウンターで敵を倒す。

 本人もそれは知らないから、お前も全然わからなかっただろう。

 朝に襲撃を受けていて即対応しねえ馬鹿がいるかよ。

 本当に舐めまくってやがるな)


 一番気の緩みそうな瞬間に展開された唐突な暴風に、思わず固まってしまっていたアントニオがジト目でこっちを見ていたので笑顔で手を振ってやった。

 その後で、暗殺者ごと破壊された控室を別の部屋へ交換して仕切り直しとなった。


 次の試合、アントニオはシードになっていた。

 そいつはアントニオが所属する隣国王都冒険者ギルドのギルマスからの要請なので、帝国の奴らもそこまで弄れなかったようだ。


 殊に、冒険者ギルド発祥の地であるアルバ冒険者ギルドからの要請は、いかに帝国の冒険者ギルドといえども断り切れない。


 そして試験は三回戦に進んだが、今度の相手はただならぬ様子だった。

 頭を綺麗に剃っている。

 これは、なんかこう地球の軍人のような匂いがするなあ。


 動きもなんとなく、それを彷彿とさせる隙の無さだ。

 手にコンバットナイフでも持たせたら似合いそうなタイプだ。

 服装も何か軍人を思わせる雰囲気がある。


 地球で言えば、上はカーキ色のランニングシャツ、下は迷彩服ズボンで足元は軍用のブーツといった感じの趣だ。


 じっくりと魔力を込めて鑑定で見ていると、暗殺者・元傭兵と出る。

 おまけに大殺戮王という、とんでもない称号を持っていた。


『人間千人以上を、あらゆる手段で殺してきた者が得る称号』なのだと?

 この地球に比べたら人口も少なそうな世界で千人殺しの称号の持ち主なのかよ。

 アルバトロス王国あたりの入国審査が厳しい国へ入ろうとしたら、それだけで全国指名手配になってしまいそうな称号だな。

 だから帝国みたいな国の子飼いになっていやがるのかあ。


 う、こいつは魔法やスキルも半端ない。

 わかる。

 理屈でなくわかる。

 伊達に大殺戮王なんていう称号は持っちゃいないな。


 いけねえ。

 こいつは多分、魔道鎧対策をしてきている!

 駄目だ、セブンスセンスではっきりと感じる。


(オイ、こいつはどうだ? 暗殺者か?)


 アントニオの念話が飛んできた。


(そうだ。構わねえから殺っちまえ。

 多分、敵冒険者グループのリーダーかサブリーダークラスだ。

 こいつを生かしておくと、大会終了後に仲間を指揮して、お前を襲ってくるだろう。


 遠慮はするな。

 コイツ……元傭兵だ。

 相当ヤバイ奴だぞ。

 あれこれと隠蔽しているけどな。

 しかもかなりの手練だろう。


 お前の魔道鎧もヤバイ。

 どうやら敵は魔道鎧対策をしてきていやがるようだ。

 速攻で始末しろ、躊躇うな。

 殺せ。

 渡しておいたアレを使え)


 さすが、長年に渡って武功をあげてきた一門だけの事はある。

 次の瞬間にアントニオは、何の躊躇いもなく俺の預けた多弾頭魔法ミサイルMIRVを二十発全弾そいつに向けて撃ち込んだ。


 弾頭は俺が魔力を込めまくった特大フレアなので、そいつが炸裂した試合会場が炎どころか真っ白に近い直視出来ない光輝で埋め尽くされた。

 アーク溶接のように目に悪そうだから、一応は光量も大幅にカットしてある。


 計四百八十発の大花火大会だ。

 俺の街の花火大会と、どっちが玉数が多いかなあ。

 二時間換算で一分あたり四発ぽっちか。

 まだ数では負けてるかな。


 でもまあ、そいつを全力で瞬間的に打ち込むんだから、こっちの方が凄まじい威力だ。

 花火大会で使う火薬全てを用いても特大フレア一発にも及ぶまい。

 この圧倒的な物理飽和攻撃に耐えられる人間はそうそういまい。


 もしいたら、そいつは魔王みたいな奴だろうから完全に討伐対象だな。

 ああ、それは俺の事だったわ。


 俺は一応周囲の観客席に何事も無いように、完璧に超強力なシールドを張り巡らせておいた。

 終わった後には焼け焦げた試合会場を残すのみだった。

 

 そして、ベスマギル動力により以前とは比べ物にならないほどの輝きを放つ魔道鎧を着込んで、その場にて微動だにしないアントニオがいた。


 魔道鎧で防護されたアントニオの足元以外の会場のスペースが粉々になっている。

 この試合会場、今回もう使えないんじゃないのか?


 以前の魔道鎧は、目視で見えるほどの魔力で体を覆い纏わせていたが、今の物は半ば物質化したような存在感で輝いている。


 MAPの過去ログで確認すると、アントニオの野郎はその場を一歩も動いてねえ。

 こいつも本当に大概だよな。


 こそーっと奴の腕輪のアイテムボックスに、今使った分のMIRVの魔法を目視で補充しておく。


 あれだけ派手に相手をぶっ殺した事は、特に問題視されなかった。

 Aランク試験って、こんなに殺伐としたものだったのか。

 それとも、この国だからなのか。


 あるいは、帝国がアントニオを殺しにかかっているからなのか。

 前は自分が当事者だったからよくわからないな。

 ここまでアレな展開じゃあなかったし。

 あの時も大概にしろっていう感じの面子だったのだが、今にして思えば真っ当な強者が多かった気がする。



 そして、いよいよ予選決勝だ。

 このあたりになると人数も減るから試合も立て続けだ。


 最終予選の相手は、なんだか物凄く嫌な感じがする。

 俺が『視て』嫌な感じがするというのは、もちろん大変よろしくない相手であるのに決まっている。

 これは……まさか、もしかしたら……。


 俺はいくつか魔法発動の準備をした。

 そう、回復魔法を。


(おい、気を付けろ。

 こいつ絶対にヤバイ。

 何かとんでもない事をしてきそうだ。

 へたをするとお前を殺すためだけに観客全員を巻き添えにする気かもしれん。


 油断するな。

 お前を殺す事を最優先にしているイメージだ。

 だが何をしてくるかわからん)


(了解した。

 俺も嫌な感じを受ける。

 掴みどころの無いような嫌な感じだな。

 これが戦場ならば一時撤退のケースだ。

 いや、お前がいてくれてよかった)


 なんだろうな。

 注意深く観察していたが、何か向こう側の観客、相手選手の後ろの人々が突然崩れ落ちるのを見た。

 すかさず鑑定したら毒ガス中毒と出た。

 重症と。


(ヤバイ、毒ガスだ。

 少し息を止めろ、絶対に吸い込むな。

 風魔法で空気を大量に作り出し続けて、魔道鎧から外の全周へ向けて強力に放出しろ。

 ベスマギル・バッテリーがあるから出来るだろう。

 それから魔道鎧の威力で周囲の空気を吹き飛ばせ)


 アントニオの魔道鎧が可視光を放つほどに輝きを増した。

 そして彼は中で風魔法により空気を生成している。

 この辺は例の鎧男からの教訓で、アントニオには徹底的にレクチャーしてある。


 次の瞬間、会場の人間が将棋倒しのようにバタバタと倒れ始める。


「審判、あいつをなんとかしろ。

 会場全体に毒を撒いている」


 俺が叫んだので審判が騎士団に合図をするが、次の瞬間にその審判も倒れる。

 騎士団が出てくるが、これもバタバタと倒れてしまう。


 そして男は倒れた。

 自らの放った毒で。

 そして死に顔に凄惨な笑いを浮かべて死んでいった。


 あいつら、なんて滅茶苦茶をしやがる!

 敵も味方も毒を放った本人も、そしてまったく関係ない一般の人間までも、すべてが巻き添えじゃないか。


「ゴッドポイズンヒール」


 俺は慌ててエリアヒールの要領で、超回復魔法を会場中にぶち広げていった。

 これまた凄まじいMP消費だった。

 一京MP単位で魔力を消耗していく。


 あまりの燃費の悪さに驚愕した。

 こういう魔法なのは最初からわかっていたのだが、さすがにこれはないぞ。

 かなりヤバい毒ガスを使っているようだ。

 こんなもんを戦場で使われたら堪ったもんじゃないな。

 いや、もしかしたら男のスキルか何かなのだろうか。


 通常のこの魔法の行使とは違う、無理な範囲魔法としての使い方をしているので、更に輪をかけて魔力消費が激しいようだ。


 これが車ならば、さしずめリッター十メートルっていうところか。

 ガソリン満タンでも一キロメートル走る前にガス欠するわ!

 酷い車だと四百メートル程度でガス欠だ。


 やがて、会場中の人間がのっそりと起き上がってくる。

 どうやら死んだ人はいないようだ。

 一番強烈に毒ガスを食らう羽目になった当の犯人自身を除いては。


 しかし、ベスマギル製造以外でこんなにMPを食うとはなあ。

 こいつはMP馬鹿食いで強引に効果百パーセントを達成するように設定した特殊魔法だから仕方がないといえば仕方がないのだがな。


 この魔力を馬鹿食いする燃費の悪さは、課題達成型魔法であるゴッド系魔法の重大欠点だ。

 だが、その欠点故の超々強力魔法なのだから、それに関しては改良の余地など一切ない。

 効果の方はそれを補って余りある代物なのだが。


 こればっかりは、この特殊魔法固有の性質なので、もうどうしようもない。

 これは本来ならば、超魔力量の持ち主である俺が使う事を大前提にした魔法なので。


 普通の人間なら、これを使うためにベスマギルバッテリーか、あるいはオリハルコン製の超大型バッテリーが必要だろう。


 そんな物、俺のところ以外には絶対にあるまい。

 今のところは真理とアントニオだけの特権だ。

 こいつらは「普通の人間」とは言い難いのだが。

 真理なんか、もろに人間じゃないし。


 試合が始まってすらいないのだが、相手の反則負け扱いでアントニオの予選突破が宣言された。

 多くの人は何が起きたのかすら、よくわかっていないようだ。 


 しかし、どうなっているのか。

 あれほどの騒ぎがあったにも関わらず、そのまま決勝が行われるようだ。

 帝国め、なんて無茶をしやがる。


 そして俺はゴッドエリアポイズンヒールの魔法を獲得した。

 自ら放った変則的な魔法を、セルフ見取りで習得して。

 こういうやり方も有りらしい。



 そして本戦第一戦は、なんとあの呪われた鎧男だ。 

 どうしても、こいつは本戦まで来るよな。

 厄介な能力だもの。


 チラっと姿を見かけた人化ドラゴン君は、今回も予選敗退で落選したらしい。

 どうせまた変な拘りかなんかで、予選の内に負けを宣したんだろう。


 今回は、俺が決勝で戦った魔法使いもいないようだし。

 彼は、はっきり言ってAランクと言われても当たり前に思うような魔法の実力なんだ。

 その気があるなら、余裕でSランクまで上がれそうなタイプだ。

 どうせ仕事で引っ張りだこなので大忙しなんだろう。


 もう余裕すぎて、無理にAランクに上がる必要なんか全然ない人だわ。 

 暇な時に気が向いたら腕試し程度に参加するくらいなのかな。

 本来なら彼はとっくに優勝しているはずの実力だったし、もしかすると前回が初めての気まぐれな参加だったのかもしれない。


 まあ彼の事だから、自分よりも魔力量の凄い俺と正々堂々思いっきりやりあえて満足だったくらいに思ってくれているのかもな。

 今度見かけたら絶対飲みに誘おう。


 俺だってSランクに上がる必要性がなかったなら、わざわざ帝国なんかにまで試験を受けに来ないだろうな。

 俺の時はアルバ開催の時で助かった。



 本戦第一戦の対戦相手である鎧男への対策は三つ用意した。

 一つ目は俺のやった方法だ。


 専用の封じ込めシールドを腕輪に付与したのと、アイテムボックスによる目視の空気抜きを魔法としてワンパッケージに創り上げて腕輪に装備させておいた。

 これがあればアントニオでも、パッと俺と同じ事がやれる。


 あとの二つは保険だが、ここはもう手段なんか選んでいられないのだ。

 事は、最早既に単なるアントニオのAランク合格なんていう問題ではなくなってしまっている。


 アルバトロス王国とベルンシュタイン帝国の、決して表に出ない『裏国家戦争』だと言ってしまってもいいほどの非常事態なのだから。

 トロフィー代わりとなるのがアントニオの生き死にそのものだ。

 アントニオ、絶対に死ぬなよ~。


 そして試合が始まった。

 アントニオは迷わず速攻でシールドを張って空気を抜きにかかるが、あっさりと鎧男に剣でシールド自体を切り裂かれてしまう。


 おふう。


「そう何度も同じ手は食わんよ」


 シールドすらも切れる特殊な魔法剣か。

 そんなヤバイ代物があったとは。

 くそ、この手に対しては対策していやがったのか。

 残念。


 まあ、そんな気はしていたんだよな。

 俺も対シールド魔法剣と、対シールド魔法剣を防ぐ特殊シールドでも作っておかないとな。

 いっそ新ゴッド魔法として作ってみるか。


(やれ、アントニオ。

 本命である第二弾を)


 そしてアントニオはアイテムボックスから、ある物を鎧男の頭上に射出した。


 べっとり。

 その不思議な物体は、まさにそう表現するのが相応しい感じに、それはもう大量に鎧男に降り注いだ。


「うお! なんだ、これは」


 あはははは。

 そりゃあ、この世界の人間は誰も知らないだろうなあ。


 鎧君、それは「ホットメルト」というものだよ。

 自動車のヘッドランプに使っている、レンズをハウジングに固定する特殊な接着剤なのさ。

 地球じゃ、それはもう大量に使われている物さ。

 単体では、この世界初の御目見えだな。


 俺の世界でも、その存在なんか知らない人間が殆どの、自動車部品製造用の特殊な専門部材なのだから。

 まあ、自動車整備工場勤務の人間なら知っているかもな。

 経年劣化で傷だらけになったプラスチックレンズだけを交換する作業もあるだろうから。


 相対速度を持って光に寄って来た小虫の体当たりや砂埃その他で、ヘッドランプのレンズ表面だけが傷だらけになって汚くなり、かなりみっともなくなるのだ。

 ヘッドランプとしての機能も低下する。

 大事な保安部品なので、あまりライトが暗いと最悪は車検が通らない。


 熱のせいで黄ばんできて見栄えが悪くなったりもするし、フロントガラス同様に対向車の弾いた小石が当たったりする事もある。

 中には、固い体を持つ小型の甲虫類まで突してくるから、どうしても所詮は表面をコートしただけのプラスチックであるレンズ表面だけは傷む。


 会社の帰り道に蛍の大集団の襲撃を食らった事もあったっけなあ。

 あれは光っているから突っ込んできてもすぐわかる。

 ヘッドランプの光が御仲間だと思われてるのかもなあ。


 あれって確か国の天然記念物だったような気もする。

 大事な体なんだから命を粗末にするなよな。

 頑張って地元の小学生達が一生懸命に世話をして保護してくれてるのによ。

 確か餌となるカワニナの養殖なんかもやっていたんじゃないのか?

 あれは光に寄ってくる避けようがない誘導弾だから困る。


 そういう車の見栄えを気にするオーナーのために、ランプメーカーはレンズのみの補給部品供給を行ってくれているのだ。


 ヘッドランプの製造工程以外では、そういう時に使用するものさ。

 たとえそういう修理を頼もうとも、おそらく普通の人間は作業中に一緒にいないだろうからホットメルトを見る事すらなかろうよ。

 外したヘッドランプを見れば、それの存在がわかるのかもしれないが、普通の人はそんな物に興味がないからな。

 ボンネットを開けると見える場合もあるだろうが、そんなもん気にもしていないわな。


 まあ、ちっと熱いだろうけど我慢しな。

 あいつの首から下が見事に熱いどろどろの接着剤に埋まった。

 それでも中の人間はダメージを受けたりしないのだから、本当に大概な鎧だな。

 御蔭で、こっちも安心して非常識な手段を講じられた訳だが。


 普通だったら、とっくに蒸し焼きになって死んでいる。

 そいつは八十度くらいまで長時間熱しないと、どろどろにならないからな。

 たとえ中東あたりにある砂漠の炎天下でも耐えられるように出来ているのだから。

 こいつも部品組み立て工程では数百度の温度に加熱されるはずだ。


 アントニオがブリザードの氷魔法を唱え、強力な吹雪を食らった直径三メートル重量五トン越えのホットメルトの山は見事に固まった。


 というか、こいつはランプ内の気密を厳重に保つように、非常に強力な粘性があるから余計に始末が悪い。

 少々冷えて固くなったとしても、結構粘っていて簡単には砕けないからな。


 またこいつは凄く重量があるから、動きづらい鎧ごと封じ込められたら、ちょっとすぐには出られないぞ。

 あれは見かけは小さいので油断して、黄土色の硫酸紙で包まれた煉瓦のようなブロック状のホットメルトが満タンに入った小型の箱を迂闊に一箱持ち上げようとすると、うっかりと腰をやりそうになるくらい重量が重いのだ。


 あれから俺は少し調べたのだ。

 こいつは剣技などは凄まじいが、そんなに魔法が得意じゃないのだ。

 それならば、こいつを自力で外から溶かすのは無理だろうよ。

 後は……。


 魔法の言葉を囁くだけさ。

 そしてアントニオが奴の耳元でそいつを囁いた。

 すると鎧男は吃驚して、すぐにその場で自ら負けを宣した。


 なに、たいした事は言ってない。

 ギブアップしないと、ディスカースで鎧の呪いを引き剥がすと言っただけだ。

 こいつもゴッド系に進化させておいたので確実にやれるはずだ。


 奴には鎧の力が必要なのだ。

 調べたら、自分からあの不便極まる鎧を着込んだのだという。

 その理由まではわからなかったが。


 アントニオはホットメルトを収納し、鎧男は自由になった。

 あいつめ、収納のスキルは持っていないとみえる。

 まあ、こっちにとってそれは幸いだがな。

 そいつは奴にとっても幸いだろう。

 御大事な鎧の脱げない呪いをひっぺがされたくなかったら。


 そして奴はこっちを恨めしそうに見ている。

 奴も俺の仕業だとすぐに見抜いたようだ。


 あはっ。

 オルストン家の人間なんて武功馬鹿で真っ直ぐな人間ばかりだからな。

 こんな奇天烈で悪辣な事を思いつくのはセコンドについた俺の仕業だと、以前に俺と対決した彼ならすぐ理解出来ただろう。


 俺はステージから降り立った奴のところへ行って、晴れやかで素晴らしい笑顔を披露してやった。


「まあ、そんな顔をするなって。

 こいつは勝負なんだからよ。

 今度会ったら酒でも奢ってやろう」


 だがあいつも、顰めっ面でこう言い返してきた。


「くそっ、約束だからな。

 その言葉は絶対に忘れるなよ。

 俺のAランク昇格祝いは必ずお前に奢らせてやる!」


 あっはっは、そりゃ楽しみに待っているぜえ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
480発の最凶魔法なんて凶悪な攻撃(;^ω^)
[気になる点] > そして、木を抜いていたアントニオが 木を抜いて→気をぬいて [一言] ちょくちょく誤字多い
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ