表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/1334

4-5 墓参り

 翌日、国王陛下の案内で真理と一緒に武の墓参りにいった。

 この世界にも白い菊っぽい感じの花があったので、それを持って。

 妹さんから甘味が大好きだと聞いていたので、エリ謹製の甘味を御供えに持っていった。


 真理さんからのメールを、プリンターが無いので強引に画面データを用いてアイテムボックス内でインクと紙を合成して文書の形にし、チャック付きビニールに入れて御供えした。


 車の中に、うちの墓参り用の線香とローソクが積んであったので、それをコピーして供えた。

 それらは王家で使えるようにたくさん渡しておいたし。

 その様子もビデオや写真に撮って真理さんへのメールに添付した。


「何も国王陛下自らが案内してくださらなくても」


「わしがそうしたかったのだ。

 いや、これは当代国王であるわしの義務じゃ」


「そうですか」


「これから、どうするのかの」


 王宮でもそう訊かれたな。

 よほど気にかけてくれているのだろう。


「まだ決めてないです。

 とりあえず王都の武さん、ああいや、初代国王陛下の縁の地を回ってみようかと」


「ははは、名前でよい。

 お前や真理殿に他人行儀にされては、我が先祖も困るであろう」


「ありがとうございます」


「それにしても数奇なことよのう。

 御主と同じ国、同じ時代に生き、同じように異世界に来ながら、千年の時を越えて我が祖先となろうとは。

 そして……御主も稀人だったとは」


「黙っていて、すみません。

 だいぶ、あちこちで脅されたものですから」


「うむ。確かにの」


 それから国王陛下は明るい声で、彼の子供達について語った。


「お前達のおかげでエミリオの行き先はよくなりそうじゃ。

 敵に差し出すのではなく、兄弟国の婿として送り出す事が出来そうじゃ。


 前回も似たような事があったしの。

 あの時は酷いもんじゃった。

 兄達も散々画策した連中をどやしつけ、今度弟にちょかいをかけるようなら、縛り上げて『貴族殺し』の前に差し出すと。

 はっはっはっ、我が息子達も逞しくなったものよ」


「あのう……」


 さすがの俺も、それにはゲンナリした。

 そして、もう一つの可能性について考えていた。

 武が千年先なのでなく、自分が千年後なのかもしれないと。

 そんな話は考えたところで、どうにもならないのだけれども。


 PCは現代の時間に繋がっているから、たぶん時間軸は今俺のいる時代が地球とリアルタイムで整合性があるのではないかと思っているのだが。


 国王陛下はアントニオのSランク推挙を約束してくれたし、彼によるオルストン伯爵家再興を後押ししてくれるとの事だ。

 あれは、いつか方を付けねばならない王国の恥だったと。


(武~、お前の王国も大変だぜ。

 ま、千年も経ちゃあな。

 これが地球でも、あちこちの国境線すら変わっちまうほどの長刻さ。

 でもお前の子孫達は立派に頑張っているぜ)


 それから真理と二人で王宮を辞して、あちこちを回ってみた。 

 彼女によると、街のあちこちに彼の好みや面影が今でも見てとれるという。

 解説を貰いながら写真やビデオを取り、都度メールに添付して日本の真理さんに送った。


 ギルマスにも真理を紹介しようと思ってギルドへ行ったが、なにやら立て込んでいるらしい。

 まあ、また今度でいいか。

 急ぐような案件でもない。

 真理はギルマスが生まれる遙か昔からこの王国に居て、おそらくギルマスが死んだ後も存在していくのだろうから。


 じゃあアドロスへ行くとするかな。

 一旦真理の家にでも戻るか。


 ギルドを出て二人でアドロスへ転移し、ダンジョンの前に出た。

 だがダンジョンの入り口で何か騒いでる奴がいた。


「だから、このダンジョンにはスタンピードの兆候があるんです!」


「ふざけるなよ。

 この間もドラゴンがまとめて討伐されたばっかりじゃないか!」


「だから、三体もまとめて出てくるのが、そもそもおかしいんです」


 なるほどな。

 俺は今やダンジョン異常の専門家みたいな立ち位置だし。

 会った冒険者がそこで滅多に出ないはずのポイズンスライムにやられ、魔物の出方がおかしいと言う。


 そして、異様に浅い階層にはぐれたキメラ。

 三頭もまとめて湧いてくるドラゴン。

 指輪と、その番人。


 今もこうして、ダンジョンの異常を訴える人間と遭遇しているし。

 こういう微妙にタイミングを要するような事に関わり合う事になるのは、俺のセブンスセンスの特徴の一つでもある。


 まあ、どの道やる事は一つだ。


「おい小僧。

 話なら俺が聞いてやる。

 俺は王都のSランク冒険者アルフォンス。

 件のドラゴンの討伐者だ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ