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57-10 観覧式

 とりあえず今日は王宮へ行かねばならないので、実際に離宮を作るのは明日からにして建てる場所だけを決める事にした。

 また明日からでも、せっせとパーツを作っていくとしよう。

 本宮と離れのような建物がセットになっているタイプだ。


 とりあえず庭園とセットの離宮だから、小離宮といえど最低でも四百メートルかける二百五十メートルくらいの広さは欲しいところだ。

 一応はモデルとなる建物の設計通りに、四百メートルかける三百メートルのスペースは確保した。


 とりあえずとか暫定とか言いながら、多分これで終了になりそうな予感がするな。

 俺の事だから絶対にそうなりそう。


 上空から写した写真で、建物の区割りをしてみたのだ。

 やはりケモミミ園の北のスペースしかない。


 離宮はケモミミ園とワンセットみたいな物なので、あまり距離を離してもなんなのだが、ケモミミ園を拡張する可能性もあるので百メートルくらいは離しておいた。

 色々と簡単な図面を引いて、こんなもんかというところで御時間と相成った。



 二人で王宮へ行くと、丁度食事の時間となった。

 昨日みたいになる事を警戒して、いつでも姿を消せる態勢にしている。

 俺の警戒ぶりがおかしいのか、国王陛下が目を細めて笑う。


「心配するな。

 今日はお前達以外に来る者はおらんよ。

 それにしても、こうも風当たりが強いとは。

 これも日頃の行いというものかのう」


 ちぇえ~。

 だが王家の人はみんな結構笑っている。

 予想は出来ていましたよ、ってか。


「今日はかなり注目を集めているようですが、大丈夫なのですか?」


 王太子殿下も気になっているようだ。

 彼も執務を中断して見に来てくれるらしい。


「まあ、なんとかなるのではないでしょうか」


 俺は薄切り肉を頬張りながら、にっこりと笑う。

 腹が減っては戦は出来ぬ。

 製造業(げんば)の人間の座右の銘だ。


「御姉さん、御肉の御代わり!」



 そして今、俺達は王宮の真正面となるエントランスホールの屋根上にある観覧席にいる。

 目の前には、幅二キロに奥行が一・二キロという気違いじみた広さの、閲兵場などに使う王宮前広場が広がっている。


 武が生きていた頃は、ここに巨大な空中庭園を降ろしたり、国民総出の行事なんかをやったりしていたらしい。


 昔は、国がこの王都とアドロス・ダンジョンくらいしかなかったらしいので、国民がみんなここに集まれるくらいだったそうだ。

 外国から攻められて戦なんかになった時には避難所にもなっていたようだし。


 そして頼んだ通りに王宮前広場の周りにギャラリーとして兵士をおいてもらった。

 一般兵士の練兵場に公爵家騎士団の練兵場、その隙間までビッシリと貴族や騎士団、そして兵士がいた。


 まずは国王陛下から、式典開始の御挨拶があった。


「貴族並びに騎士兵士の諸君、聞いていたかと思うが、先日シルベスター第二王女とグランバースト公爵が婚儀を結び、そして新公爵家の騎士団を作る事になった。

 王家から公爵家へ降りたシルベスターのためにという事で、シルベスター騎兵団と称される事になった。

 とくと観るがよい」


 あたりはシーンと静まり返っている。

 陛下が目で俺を促した。


「それでは皆さん、まず軍楽隊から御楽しみください」


 この世界では、一般的にあまり軍楽隊というものはやらないらしい。

 進軍ラッパとかは吹くようだが。

 いっそ法螺貝でも吹いてやればよかったか。

 俺って、あれが大好きなんだよね。

 生まれ故郷である街の歴史において、あれ抜きでは何も語れんくらいの物なのだし。


 俺がさっと合図をすると、自衛隊音楽隊の制服を着たゴーレム群が凄まじい数で現れて演奏を開始した。

 音楽隊なんていうものは自衛隊の奴しか実際に見た事が無いので、そのスタイルを拝借した。


 かなりの数のゴーレムがかき鳴らすセッション。

 演奏タイミングはリンクしているので、まさに息ぴったりという奴だ。


 いろんな地球のマーチを高らかに演奏して観衆の度肝を抜いた。

 彼らが今まで見た事の無い楽器がたくさん使われているし。

 スピーカーなど使ってはおらぬのに凄まじい音量だ。


 それから俺のアナウンスが入る。

 それはいつもの魔法で会場の隅々にまで響き渡った。


「それでは、今より要人救出訓練の状況を開始する。

 現在、グランバースト公爵夫人が敵に捕まったので、ただちに救出しなければならない。

 そういう想定の訓練をいたします。

 それでは空を御覧ください」


 見上げた人々の耳に、バラバラバラという聞き慣れない音が聞こえてくる。

 そう、地球の人には御馴染みのアレ(ブレードスラップ音)だ。


 やがて黒い点が見えて、それが大きくなってくるかと思えば、王宮前広場上空でホバーリングし、ロープを伝って迷彩服のゴーレム達がするすると降りてくる。

 そして狙撃のための位置取りにつけ、速攻で狙いを付ける。


 今回はデモンストレーションなので、実際の人質救出作戦のようにはやらない。

 人質の安全を確保などと言っていると物凄く時間がかかってしまうので。


 ペイント弾を使用した射撃で、人攫い役のゴーレムがバタバタと倒れた。

 そして駆け寄ったゴーレムが、シルの役を演じるゴーレムを助けマイクで報告する。


「訓練状況終了。敵は全て殲滅。

 グランバースト公爵夫人を確保いたしました」


 うちで訓練用語である『状況』などという温い物が、開始されたり終了したりなどという事は非常に珍しい。

 というか今回が初めてだな。


 常にいきなり実戦の、自衛隊で言う所の『作戦行動開始』のみである。

 敵を倒したり目的を達せれば無言で作戦終了なので終了の用語は存在しない。


 今日は空挺部隊の投入は無しにした。

 ヘリによる軽戦車や戦闘装甲車の投入も考えたのだが、ここの連中にその凄さは理解できまい。

 装甲車もいくつかは用意出来ているのだが。


 輸送を担うタンデムローターのCH47チヌークも『本物が』再現できている。

 チヌークなんか、あの独特のブレードスラップ音を耳にして仰ぎ見れば、物凄いアップで編隊を組んで低空を通り過ぎていく、俺が小学校の頃から御馴染みの機体だ。


 あれも物凄く息が長いモデルだ。

 改修は常に続けているのだろうが、アメリカ本国でもまだまだ使われるものらしい。


 本当はもっと大型のヘリ、シードラゴンが欲しかったのだが、あれは見た事がないので断念した。

 俺ならばネットの画像から作れない事もないのだが、これはうちが無理に作ってもあまり意味がないので。

 この世界には無限収納のスキルが存在し、ゴーレムさえもその中に収容できるのだから。


 収納に押し込めない生きた人間の輸送だけはまた別なのだが、そこは数で勝負と洒落込みたい。

 そいつは、うちだけが使える必殺技だ。


「次は、再び空を御覧ください」


 俺の解説が入ったかと思うと、瞬刻の間も置かずに轟音が鳴り響き、戦闘機隊がやってきた。

 今まであまり使ってこなかったが、こういう時にはよく映える。


 アクロバット飛行のように、色付きの煙を吹いて七機が虹のハートを描く。

 搭乗しているのも、やっぱりゴーレム娘達だ。

 うちは魔法で飛ばしているので、本物の戦闘機よりも遥かにトリッキーな動きが出来るから細かい絵が描ける。


 次に出て来たのが「戦車部隊」だ。

 彼らは俺から見て左手、つまり王宮の東側にある総合庁舎方面から出現している。

 しかも、前に御披露した榴弾砲を搭載した自走砲のような出来損ない戦車ではなく、これらはちゃんとした見栄えのする奴だ。


「本物」の74式戦車を使用しているんだから。

 まだ日本では現役で使っている奴だ。

 魔法で動かしているわけではなく、ちゃんと本物のディーゼルエンジンで動いている。


 訳ありで戦車は74式と61式しかないので、ここでは74式を使っている。

 最新型である10式戦車が欲しかったな。


 また90式は重量が重いので、輸送の関係上滅多に拝めない希少な代物だし。

 あれは今一つの代物であったので生産台数自体も少ないし。


 前に俺が作っておいたエセ戦車は、不格好で少々見栄えが良くないので今回は不採用とした。


 それらが見事な行進を見せる。

 閲兵場をぐるりと回り、先頭が国王陛下の前に差し掛かるところで、ゴーレム達が「(かしら)~、右っ」と叫ぶ。


 砲身は下げたまま、戦車の砲塔が三十度ほど右を向く。

 つまり俺や国王陛下のいるところへ。


 これはそこに司令官がいる想定なので、普通は『砲口を向ける』なんていう事はやっちゃあいけないのだが、まあうちの場合は戦車にもちゃんと頭右をやらせるのだ。


 そして砲塔から上半身を出して、同じく王宮側を向いたゴーレムが挙手をする。

 砲塔がそっちを剥いているので戦車長は自動的にそっちを向いているがな。


 戦車は一千両ほど出してやった。

 そいつが横十列に組んで進軍する縦百列の大戦車部隊が、まるで動くモザイクのようにゆっくりと進軍していく。


 各戦車には随伴歩兵が十名ほどついており、行進しながら同様に頭右を行なっている。

 軍隊式の掛け声はよくわからん。

 頭右は、小学校の時に運動会の行進だかでやっていた奴だ。


 あれは確か、「かしらー、みぎっ」の号令に従がって右手を右斜め上に突き出して、頭もそっちへ向けるんだと思ったが。


 あまりにも昔過ぎて、もう思い出せない!

 まあ、ここは格好だけつけばいいかなと。


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