52-3 遅れてきたエース
子供の日なのに、あまりにも子供向けと違う方向に走ってしまったので、早々に子供の部に切り替えた。
ちなみに大人の部で優勝したのは親方とドワーフ宰相のペアだった。
エルドア王国の王太子であるアニキは、宰相の息子と共に最後まで食い下がって粘ったのだが、最終的に年寄りコンビに蹴散らされた。
まあ、あの辺は年季の差だわな。
トーヤがやたらと張り切っていたのだが、他の子もやる気満々だ。
そしてダンスが始まった。
音楽はタンゴなのだが、あまりタンゴらしく踊っていない。
なんかミュージカルっぽい感じに踊っているし。
主に獣人のリズムのような感じで。
みんな、御互いわかりやすいように色ゼッケンをつけている。
「とりゃあ」
「せいっ」
掛け声も、どうやらドワーフの影響を受けているようだ。
まあ男の子の御祭りなんだから、これくらい元気があってもいいかな。
別に本当にどつきあいをしているわけではないので。
「一本!」
「それまで」
「勝者、赤っ」
次々と勝負が決められていく。
二組以上残った場合は決定戦をやって予選の勝者を決めるようになった。
おかしいな。
ポイント制とか羽飾りによる勝ち残り勝負だったはずなのだが、かなり武道っぽい感じになってしまっている。
まあ別にいいんだけれど。
女の子はちょっと呆れているようだったが、それなりには楽しんでくれているようだ。
山本さんが箱詰めの生菓子を出したり、鯉のぼり型の色鮮やかな生菓子を作ったりしている。
ファルはがっつりと、でっかい鯉の生菓子を丸齧りにしていた。
エミリオ殿下は早々と敗退してシェリー王女と一緒に御茶を飲んでいる。
さすがに体力勝負で、人族の子が獣人の子にダンスで勝つのは難しい。
ひょろいタイプの日本人がマッチョな黒人ダンサーに勝負を挑むようなものだ。
ファルはシェリー王女に抱えられたまま、恵方巻きのように鯉を咥えて一気食いしている。
エミリオ殿下としては、今日は婚約者が一緒にいてくれた御蔭でタンゴドレスを着なくて済んだ事に胸を撫でおろしていた。
あれはちょっと派手な衣装だからな。
我が婚約者殿がそれを残念そうに見ていたが、さすがに今日は無理だろう。
ウォッカ姫とプリー君は、また勝手に引き分けを宣言して、山本さんの御茶教室で和菓子をいただいていた。
いつもなら葵ちゃんが着物を着てやってくれるのだが、御腹に子供がいるので当分それは無しだ。
勝負の方は、案外と三歳のテキーラ王女が奮戦していた。
上から羽を狙われるので小さい子は不利なはずなのだが、ダンス用スパッツを履いて跳んだり撥ねたりで羽を取らせない。
いつの間にか、テキーラ王女の御洋服が撃墜マークで溢れてエースの称号が輝いていた。
一緒に御相手をしているのは宰相の息子で、将来はバンダナ騎士団入りを目指しているらしい。
多分あの国で開催したら、バンダナを取られたら負けというルールになるのではないだろうか。
騎士団はバンダナを象徴にしているようなので、あれを取られるという事は武士が髷を切られるようなものなのかもしれない。
前に一度取れかけているのを結んでやろうかと思って声をかけたら、豪く慌てて飛び退いてバッと手で押さえていた。
彼らにとってバンダナという物は無闇に他人に触らせてはならないような神聖な物だったらしい。
尻尾巧者の猫族マルタ君は、尻尾でピシっピシっと技を決めて決勝に進出していた。
彼の長い尻尾による攻撃は、本来の体の動きとは別物で、尻尾での攻撃を決めても体は常に残心が取れている状態だ。
もっとも長いのは尻尾だけで、他の攻撃は手足が短いので、なかなか正式な作法での一本が決まるまでに至らないのだが。
ジェニーちゃんは、その可愛さで決めまくりだった。
タンゴの場合は女性の決まり手が案外と多い。
ドラゴン血統の身体能力の高さとドラゴンハーフの可愛さで、ビシっと技が決まる。
相方は身体能力もそれなりで、あれこれと小器用なトーヤなので、その相手を無難にこなしてくれている。
ちゃちゃっとゲームは片付けて、おやつ会にしようかなと思っていたのだが、そこへ闖入者が現れた。
それはなんとアントニオ一家だった。
こいつらが、こんな風に突然来るのは珍しい。
「おい、珍しいな。
どうした?」
「いや、レオンが一緒に遊びたいらしいんで混ぜてやってくれ」
そうだったか。
でも、この子の相手をするんだからな。
やたらな子では相方は務まるまい。
ああ、ちょうど歳の近い奴がいたじゃないか。
「ファル、ちょっとレオンの相手をしてやっておくれ」
二匹目の鯉に手を伸ばそうとしていたファルが、スパッとこっちへとやってきた。
最近、かなり身体能力が上がってきているようだ。
「よーし、レオン。一緒に遊ぼう!」




