50-6 精霊達と行く「風の渓谷」
翌日の朝御飯は、また飯盒で御飯を炊いて御味噌汁も作った。
他にも沢庵を切ったり卵を焼いたり。
各チームに職員とかがついてくれていて班分けしてやっている。
今回は子供達の食育も兼ねているのだ。
日頃は勉強のプログラムばっかりなんで、たまにはこういう感じでもいい。
家庭科の授業はもう少し大きくなってからにしないと、しっちゃかめっちゃかになるのに決まっている。
ついでに御昼の御弁当のオニギリも作った。
おチビ猫は尻尾をゆらゆらさせながら、これ以上無いくらい真剣な目でオニギリと格闘していた。
そして俺も。
今日はみんなと一緒に作るのだ。
型を使うのではなく、ちゃんと手で作っているのだが、俺の作品も出来の方は決してちゃんとはしていなかった。
俺なんかは百均で買ったオニギリの型を使ったって却って出来は酷いものなのだ。
あれ以来、オニギリなんて作ってない。
パック御飯を食べるのが多かったし、オニギリは出来合いを買ってしまうしね。
俺の作品をエリーンあたりが見たら大爆笑しそうだ。
それがエリなんかに見つかったら、俺の不器用さに深く溜め息を吐く事だろう。
俺の手にくっつく米飯が増えるだけで、ちっともオニギリが出来上がっていかない。
手を水に漬けて飯がくっつかないようにすると、今度はべちゃべちゃになって上手く作れない。
エリは向こうで副菜のおかずを作っているので、俺の醜態を見られていなくて幸いだ。
そうこうする間に御飯の仕度が出来上がったので、用意したテーブルで朝御飯を食べた。
テーブルは、ちゃんと子供用のサイズを作ってある。
こいつはダンジョンでエミリオ殿下のサイズがテーブルに合わなかったので用意しておいたものだ。
またみんなでキャンプをやってもいいなと思って作っておいたのだ。
それからバスで出発して「風の渓谷」へと向かった。
足元は、ちょっとバスが走れるような状態ではないのでエアカーモードで飛んでいっている。
道すがらはゴーレムが警備しているので、現地に魔物のようなおかしなものはいないはずだ。
一応は俺もレーダーでチェックしておいた。
いや魔物も化石の状態でなら居るのか。
さすがに、主役であるそいつらだけは居てくれないと本日は困ってしまうがな。
それから、みんなを集めて説明する。
「この地図に書いてある数字と文字で、御目当ての場所を見つけてくれ。
地図と同じ物が立ててあるから。
班毎に散らばってなあ」
ブラウンゴブリンには、道具の使い方も含めて色々説明しておく。
化石についてはバスの中でネット映像も含む資料で説明したが、かなり理解してくれたようだ。
相当に興奮していた模様だ。
俺はといえば、レミとファルを連れて、ある化石のところへ行った。
割と手頃な感じで地層の表層にあるのを見かけたのだ。
ともすれば見落としてしまいそうな物だったが、そいつはいくつか固まって埋まっていた。
なんていうか、そいつには「ミミ」があったのだ。
なんだか貝の一種のようだった。
河にいたのか、あるいはここが海に繋がっていたのか、それとも陸貝だったのか、そもそも貝ですらないのか。
鑑定すると、ミディオムという生物というか魔物だったらしい。
丁度ケモミミの旗に描かれた図柄のようなネコミミの顔っぽい感じに見える。
お手頃サイズだったし、レミにはこれくらいの奴がいいかなと思って。
レミも気に入ったのか、小さめのハンマーでコンコンやっている。
手を叩いてしまうといけないので一緒についていたのだが、何かトーヤが叫んでいた。
あそこは……。
「でっかいの、獲るぞー!」
「おお~!」
ちょっと、お前ら。
それは。
「おーい、アルス」
「なあに~」
子供達に混じって、もう既に何かの化石を母岩ごとゲットしたらしいアルスが振り向いた。
「ちょっとレミ達を見ておいてくれ」
「わかったよ~」
手を振るアルスに任せて、俺はトーヤ達の小学生グループのところへ行った。
「アルスちゃん、ネコミミ!」
レミが化石を指差して叫んでいた。
「うんうん、ネコミミだねえ」
アルスは、そう言いながら上手に取り方を教えていた。
相変わらず器用な男だ。
「おーい、お前ら。
さすがに、そいつは無理だぞ。
何日かけて掘り出すつもりだ?
本当に大物好きだな」
「男なら、大物狙いで!」
「うん、それは別に間違っちゃあいないがなあ。
今日は遠足で一日しか時間が無いからな。
やりかけで放っておくと化石が風化してしまうし、お前も化石ばっかり掘ってはいられないだろ?
応援を呼んできな」
「えー、誰を?」
そのようにコテンと首を傾ける様子がまた可愛らしい。
この可愛らしさから我がケモミミ園は始まったんだよな。
でもその中には、しっかりと汗臭い感じの男の子成分が詰まっているようだ。
「そりゃあ、お前の身内に決まっているじゃないか」
「あ、そうか。
うん。
じゃあ呼んでくる」
さっとゲートを繋いで、トーヤはエディと一緒に消えていった。
やれやれ、あいつの大物好きにも困ったもんだ。
俺は足元に眠る、全長二十メートルにも渡る巨大化石へ思いを寄せた。
さあ、ぐっすりと眠っているところを悪いのだが、もうすぐ起こしてやるぞ。
俺には、ちょっとした考えがあるのだ。
レミのところへ戻ると、もうすでに一個綺麗に化石を取り出していた。
作業、早っ。
「ネコミミっ!」
そう叫びながら、レミは嬉しそうに化石を両手で掲げている。
俺は笑って、その可愛らしいネコミミ付きの頭を撫でてやった。
ファルはと言えば、一心不乱に何か怪しげな化石を慎重にこつこつと叩いていた。
何かこう、レインボーファルスの心の琴線に触れるような物があったのか?
「おー、また何か面白い事をやっとるのか」
親方御一行様の登場だ。
手には使い慣れた道具の数々が。
ある意味でのプロ集団がやってきた。
「おう、化石掘りをしているんだが、トーヤがどうしてもそこの大物が欲しいらしくてな」
俺はさっきの場所へ行きながら、化石についての説明をした。
「うむ、こういう物ならばうちの国にもあるぞ。
石材の中に入っている物などが、貴族なんかに喜ばれる事もあるんでな」
そうか。
そういう物は日本のビルなんかでも、壁に使われた石材に偶然そういうものが入ってしまっている奴とかがあるんだ。
ああいう物がたまたまロビーにあったりすると、会社のいい名物なんだよな。
御客さんにも喜んでもらえるし、ついでにSNSで会社の宣伝までしてもらえる。
それにしても、なんと化石ツアーどころか商業採掘されているのか。
ドワーフのセンスで加工されているのだろうから、それもなかなかの物なんだろうな。
俺はそこに埋まっている物の概要を説明して、散らばっている部分の場所を特定して、ゴルフでボールがそこにあった事を示すマーカーとして使うような赤いピンを打ち込んでマーキングした。
ほぼ、完璧な作りの化石になりそうだ。
「それにしても、お前が魔法で取り出せばいいんじゃないのか?」
「あのなあ、それだと子供達の野外学習にならんじゃないか。
まあ、やってみてくれよ」
そしてドワーフ発掘隊による大物化石の発掘作業が始まった。




