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46―2 お花見ドライアド

「あたし達は、単に生存競争に負けたんです」


 仕方無しにフローラは事情を語り始めた。


 俺は地面にグラウンドシートを敷いてペグを打ち、その上でマットを敷いて御茶と御茶菓子を出しておいた。

 他のドライアド連中は楽しそうな感じで、御互いに御菓子を食べさせ合いっこをしていた。


「何を相手にして負けたんだ?」


 しばし沈黙してから、嫌そうにフローラは口を開いた。


「……苔です」


 は? おじさん、よく聞こえなかったよ。

 だが俺のリアクションにイラっとしたのか、奴は少し声を荒げた。


「コーケー!」


 またニワトリ化した奴がいるのか。


「苔? あいつらは地面に這い蹲っている貧弱な植物だよな?

 何故木に寄生した強そうなお前らの方が負ける?」


「奴らの方が強かったから」


 フローラは半べそで答えた。

 確かに苔は生命力が強いとは思うけど。

 採っても採っても、後から後から生えてくるので始末に負えない。

 昔の一軒家を古家で持っていた時は、苔毟りで()を上げたもんだ。


 でもあれはジメジメっとしたところに生えているよな?

 明るい日の光の中で青々と育つこいつらが、何故苔なんかに負けたのか。

 俺は首を捻ったが、まあこいつらが情けなかっただけなんだろう。

 いかにもな残念臭が思いっきり漂っているしな。


「まあいい。

 こんな荒涼としたところにいても、そういい事はないだろう。

 うちに移住せんか?

 春先に年一回働いてくれれば、後は遊んでいてもいいぞ。

 御菓子や魔力も貰い放題だ。

 うちには凄い御菓子職人さんもいるしな」


「本当ー?」

「ホント?」

「やったあー」

 

 なんか(えら)く喜んでいるなあ。

 だがフローラは立ち上がると、ちょっと悔しそうにして仁王立ちになり雄叫った。


「あんたら、ドライアドとしての誇りは無いの?」


「そんな事言ってー。

 あいつらと一戦交えようって言ったの、フローラちゃんじゃん」


「そうだよう」

「ブーブー」


 ああ、もう残念すぎるな、こいつ。


「わかったわよー……。

 じゃあ、御願いします」


 いやにあっさり折れたな、こいつ。

 そこは、もうちっと踏ん張るべきところなんじゃないか。

 ま、まあいいや。

 こっちも時間がないんだ。


「じゃあ、支度が出来たら行こう」


 すると奴らは、なんと寄生した木ごとズボっと引っこ抜く感じで歩き始めた。

 うっわ。

 なんかキモイわ。


 それから連中が『木の身木のままで』ズラっと整列して挨拶を始めた。


「チース」

「あざーす」

「宜しく御願いしやあす」

「ウイース」


 体育会系かよ。

 ま、まあいいけどな。

 あのハイドじゃあないのだが、俺もこういうノリは大好きなんでな。


 しかし、あれだ。

 こいつらって、なんていうのか、昔流行った怪奇植物系SFというか破滅物SFというか。

 そういう物を思い出すな。


 さしずめ「ドライアドの日」?

 ザ・デイ・オブ・ザ・ドライアド。


 これの元ネタである小説は子供の頃によく読んだよ。

 あれは大好きだったな。

 映画にもなったし。


 また読みたくなっちまった。

 ネットの電子書籍で売っていないかな。

 あ、検索したら売っていた。


 書かれたのは1951年か。

 1963年生まれの俺よりも、かなり前の年に出版されたんじゃないか。

 干支が一周り回っているな。


 それは古いはずだわ。

 ではポチっとなあ。

 ()うた。

 後でゆっくりと読もうっと。


 怪奇映画にするのなら、こいつらを使えばタダで出来そうだ。

 でもスタイルが普通の木っぽいからな。

 少しばかり迫力に欠けるぜ。

 その分、キャラが毒舌なんだが。


 こいつらって別に怪奇植物とかじゃなくて普通の木のくせにすいすいと歩き回るんで、リアルだと余計に不気味だわ~。

 おまけに、木のままでペラペラ喋るのがまたキモイ。

 それに全然怖くないんで、こいつらを使ってもコメディ映画にしかならんな。


「とりあえず、全員集合なあ。

 お前らの勤務地は、新設のケモミミ小学校の校庭だ。

 勝手に街をうろつき回って、アドロスの街の住人を驚かさないようにな。

 では、しゅっぱあつ」


 俺は転移魔法で、ケモミミ園というかケモミミ小学校へ帰投した。

 当然、目聡い園児達が見つけて寄ってきた。


 野球とかは危ないから園の方ではやらないように言ってあるので、小学校の方でやっているのだ。


「えんちょうせんせい、おきゃくさん?」

「御客さんというか、今日からうちの仲間になるから宜しくな」


 そしてまたドライアドのうざい挨拶が始まったので、以下略。


 面白がった園児達が奴らにぺったりとくっついて離れない。

 まあ別にいいけどな。


「じゃあ、お前ら。

 この校庭の周りに沿って等間隔で並んでくれ」


 すると全員が、すぺたすぺたすぺたと上下に弾むような感じで歩いていき、間隔をあけて並んでいく。


「こんなもん~?」

「こんなもんよ~」

「こんなもんだよね~」


 皆、適当な事を言いながら埋まっていく。

 おう、丼勘定だな。

 こいつらってドワーフと、どっこいな感じじゃね?

 まあ、あいつらドワーフだって精霊族なのだが。 


 とにかく、植わった見た目だけは大体いい感じになった。

 後は桜っぽく花が咲くかどうかなんだが。


 俺は桜の花のイメージを脳裏いっぱいに浮かべて魔力を展開してみた。

 おおー、なかなかいい感じになった。

 木の幹もなんとなく本物の桜っぽくなってきたし。


 なんていうか、あのゴツゴツ感と節くれだった感じがな。

 今までは、幹も枝も少し綺麗な感じ過ぎたのだ。


 桜って花が咲いていないと、桜の木なんだと気付かないパターンとかよくある。

 だが、あの節くれだったような感じがまた詫び寂びがあるんだよね。


 蕾はぐいぐい大きくなり、そして花弁を広げ、俺が与えたイメージ通りの見事な桜の花になった。


「おお、お前ら。

 やればできるじゃないか」


「ふふん。あたしらを誰だと思っているの!

 天下のドライアド様よ~」


 苔との戦いには負けたけどな。



 それから俺はケモミミ園へ戻って山本さんを捜していた。


「山本さーん、山本さ~ん」


 桜餅を、そして御花見団子を~。

 おかしいな、どこにもいない。


 なんだろう?

 スマホも切っているみたいだし。

 もう、山本さんったら。

 今居てくれないでどうするんだ。


 お、真理だ。

 真理に聞いてみよう。


「真理! 山本さんを見なかった?」


「え? あ、うん。

 み、見なかったわよ」


 ん?

 なんだか真理の挙動が怪しいな。

 山本さんがどうかしたのか。


「まあいい。

 それより、こっちへ来てくれよ」


「まあ、なあに。

 また何か変な事をしているんじゃないでしょうね」


 失礼な。

 そう思いつつ、一緒にゲートを潜って小学校へと戻り、真理をドライアドに紹介した。


「また、何か拾ってきたのね……」


「こいつらは魔物じゃないぞ。

 精霊憑きの木だ。

 桜に変身させてみたんだ。

 どうよ」


「ま、まあ、いいんじゃないの?」


「お前ら、こっちが副園長先生だから、宜しくな」


「ウイース」

「姐御宜しく」

「姐さん、よろしゅう」

「御世話になりやす」


 なんか、またガラが悪くなっていないか?

 とにもかくも、御花見の用意は整った(桜の木だけ)。


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