45-6 楽しい披露宴
厳かに式も終了して「エリオンの聖歌」の余韻も残しつつ、披露宴へと進んでいった。
エリ大師が厳かに『ケーキを連れて』の登場だ。
この王家の紋章入りの強化外骨格を持つウエディングケーキは、最初は只の魔道具だったのだが、既にゴーレム化している。
ビジュアル的にも更に進化した。
ドワーフとエルフが力を合わせて作り出した芸術作品なのだ。
素材は俺が魔法金属などを提供したので凄い事になっている。
この魔法金属製の外骨格だけで、小国の王宮くらい余裕で買えそうだ。
ケーキは運ばれたワゴンに乗せられているが、ケーキ職人の後を付いていき、レビテーションで宙を浮き自らテーブルの上に乗る。
まず外骨格を、付近の邪魔にならぬようにガチャっウイーンという感じでスライドしてオープンする。
そして各皿に乗ったケーキを、指定された段をスライド機構でスライドさせて、更にアームを操作して新郎新婦の前へ捧げ置く。
以前は新郎新婦が可動式の台(名古屋式ゴンドラ)に乗らないといけなかったが、今はケーキの方が降りてきてくれる。
まるでSF映画のワンシーンだ。
この最新型ウエディングケーキに慣れなくて戸惑うカップルのために、現地語の音声ガイドによるナビゲートシステムも付けられている。
一応は日本製品? なので非常に親切設計となっている。
二人共緊張しているようだったが、神父様主導でファーストバイトの儀式は無事に終了した。
ちゃんと御互いに食べさせ合えたのでOKだ。
本来ならば、ここでチュウを要求するシーンだが、聖職者の式で子供も多いのでパス。
と思ったら、「ねえ、チュウはしないの?」と、レミちゃんから爆弾発言が。
爆笑する披露宴会場。
おチビ~。
やるなあ。
「だそうじゃが」
しゃれっとして国王陛下がおっしゃった。
楽しんでいるな、陛下。
王妃様も笑っている。
「キース! キース‼」
割れんばかりのキスコールに包まれて、若い花嫁さんは真っ赤になってしまったが、覚悟を決めて目を閉じてキス顔に。
神父様は優しく彼女の手を取って、そっとキスを。
さすが神父様も歳の功だな。
でも、なかなか離れないんだが、このカップル。
もしかして初めてのチュウ?
そういや、最近まで御互いの気持ちを打ち明ける事もなかったのだったな。
もう、おチビさん達がガン見している。
特に女の子が。
動画サイトのコメも思いっきり野次り加減に踊りっぱなしだ。
地球に中継していたのは内緒。
やがて御飯の時間となった。
巨大なケーキも、これだけの人数だとあまり腹の足しにならない。
色々と運ばれてくる御食事の数々。
花嫁さんも、しっかりと食べられるようにラフな格好だ。
結婚式では、新郎新婦に挨拶しに行く人が絶えないのでなかなか御飯が食べられないとよく言うが、ここではみんなが御飯に夢中なので邪魔しに行く人が誰もいない。
手巻き寿司も出したので、みんな夢中で巻いている。
子供達は既に食べ方をマスターしているので手慣れたものだ。
新郎が新婦に食べ方を教えながら巻いてあげている。
俺は新婦さんの両親の所へ行って巻き方を教えてあげた。
自分の席に帰ってきたらなんと、おチビが納豆巻きを作ってくれてあった。
この前、王妃様に作ってもらって食べて以来、おチビの好物リストに載ってしまったものらしい。
いや、これはまた結婚式に出す食べ物としては微妙過ぎやしないか?
誰だよ、これをメニューに入れた奴。
まあ、せっかくチビが作ってくれたので美味しく食べた。
エリ-ンとデニスも、子供の世話があるので一緒に来ている。
この披露宴を一番堪能していたのは、やはりエリーンだった。
こいつもいつかは嫁に行くのだろうが、こんな事をのたまった。
「いやあ、こういう御式はいいですねえ。
花嫁さんが落ち着いて御飯を食べられるので最高です」
うん、君がそういう奴なのはよく知っているよ。
さて、そろそろかな。
何がというと、おチビ達が御昼寝に入るのだ。
次々と轟沈していく子供達を、世話係の人達が運び出していく。
エドやロイスは当然こっちの組だ。
もう面倒なんで彼らも式に参列させてあったのだ。
披露宴会場からゲートの空間魔法でケモミミ園まで繋ぎ、子供達を運び出していく。
プリティドッグの奴らもいたのだが、ちゃっかりと王妃様のところに集合して国王夫妻から御飯をせしめている。
奴らの肉抜き御飯はもうそっちへ渡しておいた。
同じく轟沈したエルミアの子達も送り出していく。
こっちはエリーンやデニスの他に、エルミアの街の住人や新郎新婦の親戚に、ダニエルを始めとする孤児院の大きい子達が抱えていった。
後に残っているのは国王御夫妻と、王女様方とエミリオ殿下の関係者、そして騎士団の面々だった。
それに新郎新婦と新婦の御両親と兄弟、うちの料理人関係と、俺を含む王都の神殿関係者だ。
ワンコどもは王妃様や王女様に抱かれているか、子供達と一緒にケモミミ園で御昼寝中だ。
「アットホームで良い式じゃったの。
歳の差なんて関係ない。
実に良い夫婦じゃ」
「本当にねえ。
歳の差なんて、まったくたいした事じゃないわ」
国王夫妻が、やけにそこに拘るな。
まあいいんだけれども。
今日は、何故か王女様方が俺に近寄ってこない。
ん? なんだろうな。
何故かエミリオ殿下も少し落ち着きがない感じだ。
こういうのは珍しいな。
だが俺達にはまだやる事があるので、そのような些事は放っておく。
そう、それは新婚旅行の御世話だった。
毎度御馴染みのアルフォンス航空とアルフォンス旅行代理店の出番だ。
南の島には、あれから更なる進化を遂げたゴーレム達がいる。
皆、御客様を御迎えするための訓練というか修練というか、そういうものを日々頑張っている。
そして今日は久々の御客様を御迎えするのだ。
進化したゴーレムは航空機のアテンダントさえ務められるようになった。
既に人語も喋るのだ。
俺達は例の携帯空港から乗り込む事にした。
王宮の庭に接続された空港の設備を二人とも珍しそうに見ながら歩く。
時折立ち止まっては軽く説明しながら、のんびりと進んだ。
ここでは飛行機に置いていかれる心配は無いので、その点は安心だ。
いつか「おっと飛行機が出ちまった~」のアトラクションをやってみてもいいな。
うん、そいつはミハエルの結婚式の時にでもするか。
「疾風の飛行機」という事で。
初めて見る航空機に二人とも凄く驚いていたが、すぐに御席の方へ案内した。
葵ちゃんの出発アナウンスにより、機体は飛行機発進時の擬似効果音を上げながら上昇していく。
そして前方に向かって推進していく。
特に花嫁さんの方が大興奮の御様子だ。
俺のやる事にまだ免疫が無いからな。
「凄い凄い。
地面がどんどん小さくなるわ」
窓にべったりとくっついて大はしゃぎだ。
まるでファルみたいだ。
やがて雲の上に出ると、飽きずにじっと外を見ていた。
そんな彼女を神父様は優しく見守っていた。
今日の機内食はドラゴンステーキAセットだ。
付け合わせのブロッコリー・ポテト・人参などの野菜に、最高のステーキソース。
他には和牛っぽい感じの魔物のローストビーフなどがある。
焼き立て最高級パンにチーズとヨーグルト、そして高級果実の果実水がつく。
デザートはエリのケーキだ。
この夫婦は酒を飲まない。
このコースには赤ワインが素敵に合うのに残念だ。
二人は果実水で乾杯して料理に舌鼓をうった。
俺もまだ仕事が残っているので、自粛してノンアルコールビールでいかせてもらった。
今日もブルーアイランド・リゾートは快晴で、白い砂浜、マリンブルーの海、抜けるように青い空、その全てが眩しかった。
新婚の二人の笑顔も輝いていた。
後の世話は葵ちゃん達に任せて、俺は転移魔法で御暇した。
今から神父様に代わって、ダニエルを助手にエルミアで回復魔法の御時間なのだ。
自分が初めて魔法を覚えた時の事を思い出して、とても懐かしい気持ちがした。




