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45-5 豪華な平民結婚式

 そんなこんなで時はあっという間に過ぎて行き、早くも結婚式当日を迎えた。

 花嫁の御両親は豪く緊張してしまっていたが、神父様は既に達観しているようだ。

 そして不安そうな花嫁を優しくエスコートしている。

 神父様以外は、宮殿はおろか王都さえ初めてだからな。


 迎えてくれるのは、この結婚式を執り行ってくれる大神官のジェシカだ。

 さすがに平民である神父様の結婚式にバルドスの爺の出番はない。


 代わりに俺が『大司祭』の資格で参列する。

 神殿の、俺が首を挿げ替えさせた若い清廉な幹部達も出席した。


 ファルも今日は巫女さん姿なんかではなくて、ロス教の様式に則った、おニューの神官服だ。

 ただし、神聖エリオンである事を示す特別なデザインで、それは一際目立っていた。

 こいつは地球の協力グループが総がかりで作ってくれたもので、なかなか見栄えがする。

 俺がそいつを、素材の作成も含めて異世界で再現した物なのだ。


 美しい光沢の薄いブルーの化学繊維の布地に、白い厚地のリボンをスタイリッシュに縫い付けて、その背中の真ん中に、ファルスのシルエットを象徴的に象って新しく作ったデザインの『ロスの紋章』を飾っている。

 これを『エリオンの聖衣』と呼び、ファル以外は着る事が許されない。

 まあ素材レベルで俺以外の他の人間には作れないだろうがな。


 他に着る事が出来る者がいるとしたならば、それは将来また人化できるようになった時のレインしかいない。

 彼女は、まだ体が癒えていないので、精霊の森の外でその姿を拝む事は出来ないが。


 当然、結婚式の模様は地球へも中継されており、ファルはカメラの前でぴょんぴょんと飛び跳ねている。


「御姉ちゃん達、綺麗な御洋服をありがとう。

 今日は頑張って歌うね~」


 そう日本語で叫ぶファル。

 この子は本当に賢いな。


 今日は『エリオンの聖歌』を披露すると、掲示板で予告してあったのだ。


「ファルちゃん、可愛い~」

「徹夜で頑張った甲斐があったわ~」

「歌、楽しみにしているよー」


 画面に様々なコメが踊る。

 

 レインボーファルスの学習能力は驚異的だ。

 まだ生後一年にも満たないにも関わらず、様々な言語を理解する。

 もしかすると、この世界の事は生まれる前からインプットされているのかもしれない。


 英語や日本語もあっという間に理解した。

 動画サイトで貰える漢字などのコメントも全て理解できる。

 やはり人外の、規格外の生物なのだ。


 式は早めに始めさせてもらう事にした。

 そうしないと、御腹が空くとうちの子達がそわそわしてしまう。


 多分エルミアの奴らもそう。

 今日の参列者は圧倒的に子供が多いからな。

 うちも、どんどん子供が増えており、ついに八十五名を数えている。

 エルミアの子も五十人以上もいる。


 百四十名近い飢えた子供を御する事は、この魔王の力をもってしても不可能なのだ。

 餓鬼とはよくぞ言ったものだ。



 結婚式は厳かに行なわれた。

 ロス教大司祭の主催にして、王都アルバ大神殿管轄の結婚式なのだから。


 うちの芸能志望の子供達が衣装を着て、前に出てアルバトロスの国歌を歌う。

 続いて、ロスに捧げる聖歌と神聖エリオンを称える賛歌を歌った。


 可愛い聖歌隊がファルに向かってウインクする。

 陛下もそれを見て非常に感慨深いようだ。

 最早、伝説が完全に日常化している。


「これより、辺境の街エルミアの教会神父御夫妻の結婚式を始める」


 俺から、いつもどおりの短い祝福の挨拶を贈った。

 居並ぶ司祭達も厳かに揃って礼をする。

 この連中は神父様とは顔見知りで、場合によっては部下になっていたっておかしくない関係なのだ。

 神父様の境遇に関して色々と思う事もあったのかもしれない。

 国王陛下からも御祝いの御言葉を賜った。


「それでは、新郎新婦の御二人は前に」


 ジェシカが二人に声をかける。

 この場合、新郎の方が神父だから日本語的にややこしいな。


 王侯貴族は指輪を交換するが、平民ではそこまでやらない。

 ただ、証として無理して用意するカップルもいる。

 生活に余裕ができたら後でプレゼントしたりとかのパターンもありだ。


 この二人には俺が指輪を用意した。

 日本でよく見る、ごく普通の金の指輪だ。

 うちの御袋もこういうタイプの物をしていた。


 この命が安い世界では、愛した人の形見としての意味合いもある。

 盗賊に襲われ、後で盗賊団のアジトから見つかった物が遺族に返されたりなどという事もありがちだ。


 冒険者ギルドでは、いかにも形見といった物品については無償での返還を推奨している。

 それは武が始めた習慣だそうだ。

 今の冒険者ギルドの形を作ったのが武だからな。

 冒険者カードのシステムを作ったのも、あいつなのだし。


 愛の誓いを終え、指輪を交換して、大神官のジェシカが二人の結婚を認める宣言を出した。

 次にファルが前に進み出て、神聖エリオンの名においてこの夫婦を祝福すると宣言を出し、エリオンの祝福の聖歌が始まった。


 今日は王都以外の参加者が多いため、これを初めて聞く者も多いので、感激の声があちこちから漏れた。

 花嫁の両親は感極まって号泣している。



627:感激する洋服屋の卵


 うっわあ、何度聞いても凄いわあ。

 か、体が、なんていうか、はあ。


628:感激するデザイナーの幼生


 凄い、私達が考えた服であれをやってくれているなんて!

 もう感涙よ。


629:間隙をつくサイトの観測者


 ああ、マジ半端ねえわ。

 これアクセス数物凄いんだけど。


630:感激する仕事中のお姉さん。


 感動ねえ。

 体が震えて、もう止まらないわ。


 上司に頼み込んで職場にも流してもらったんだけど、たまたま来ていたクライアントも聞いてくれていて、感動のあまり契約書にそのままサインしてくれたみたいよ。

 かなり難しい駄目元の契約だったんだけどね。

 ありがとう、ファルちゃん。


631:感激の大司祭魔王


 おう。

 おまいら、ありがとうな。

 おかげさんで、いい式になったわ。


632:感激の名無し


 ねえ、園長先生。

 やたらなハンドルネームを使うと、また変な称号がつくわよ。

 アクセス数半端ないんだし。



 あ、もう付いていた。

 新称号、大司祭魔王。


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