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44-7 魔物との盟約

 彼ら「フリーク」が案内してくれた先には、魔法による結界があった。

 彼らの意に染まない相手は決して侵入を許されない。

 そして、その先にあった物とは。


 それはなんと、俺がずっと探していた「カカオ」であったのだ。

 俺はまたしても魔物の宝物と巡り合った。

 それは極上のカカオ豆だった。


 この世界でやっと見つけたもの。

 これで、たとえ俺がいなくなっても、この世界にチョコは残る!


 ここでもファルが通訳してくれた。

 そして俺は取引を希望したのだ。


 彼らはカカオ豆、そして極上のカカオクリームやその他チョコレートの原料になる物を出してきてくれた。

 俺からも上質な砂糖・香料・その他チョコ菓子の原料となった物を並べてみた。


 彼らは、本能的にそれが何であるのか理解して興奮していたが、それをぶつける相手が役不足なので大変失望された。


 魔王アルフォンス、文化的な魔物さんに失望される!

 ヤ、ヤバイ。

 俺は慌ててエリに電話をして召還した。


「えー、なあに~」


 いきなり呼ばれて転移魔法で迎えに来られてやってきたのはいいのだが、魔物さんが大勢いたので焦っているようだった。

 サイラス王国騎士団やエミリオ殿下もいるので、すぐに落ち着いたが。


 だが俺が魔物さんと身振り手振りで交渉しているのを見て、また置かれている数々の物品を見て、なんとなく察してくれたようだ。

 さすがは俺の義妹、天下の大師様だけの事はあるぜ!


「えーとですね、これは……」


 ファルに通訳してもらいながら、キラキラした目で見つめる魔物さん達へ懇切丁寧に説明してやるエリ。

 さすが苦労人の大師は一味違う。

 既に、会ったばかりの知的魔物さん達から尊敬の眼差しを受けている。

 そして数々の逸品がみるみるうちに仕上がっていく。


 王子・公爵・子爵に加えてサイラスの騎士団にも貴族の子弟は多いし、それにその名を天下に鳴り響かせた大師様と、この滅多にないような素晴らしき異種族間の邂逅に見合うだけの豪華なゲストが大勢いて良かった事だ。


 それからエリのスマホが突然に鳴った。


「あ、ちょっとすみません」


 魔物さんに断って、少し離れた場所に行ってスマホで音量控えめにして話し出すエリ。

 日本人は携帯電話のマナーで異世界人に完璧に負けている。


 もし日本人の中で、この世界を蛮族の世界と罵るバカがいたら、このエリと対決させてやろう。

 あらゆる全てにおいて、地球でもマナーはいい方であるはずの日本人はマナー勝負で彼女に敗北を喫するだろう。


 そして多くの著名人が「昨今の日本人とマナーについて」というエッセイを書きたがるのに違いない。

 こいつは俺にとって自慢の義妹なのだ。


「御姉ちゃん、なんかいい匂いがする気がするんだけど。

 何を作っているの?

 マリーが騒いでいてさ」


 ポールが電話してきたようだ。


 おう。

 お前ら、セブンスセンスみたいな能力に目覚めてきてない?

 嗅覚中心に。


 俺のセブンスセンスの能力は、五感に関しては基本的に「視覚」にベースが置かれている。

 そのあたりの事情はESPと同じなのだ。

 それは上っ面の、意識的に使っている部分についてだけなのだが。


 人間は五感のうち八十パーセントを視覚に頼っている。

 俺もその例に漏れず、六感七感などと称する物や者は、マニュアル的に使う場合には、ほぼ視覚頼みの能力が多い。


 六感は五感がその触手を伸ばしたようなもの。

 ゴムボールの内側の空間を五感とするならば、その外郭をなす中空のゴムボールが六感。

 そこから生き残るために、その外へ目いっぱい伸ばしたような領域が七感とでもいうような部分なのだと考えている。


 だからセブンスセンスは本来なら七感などという怪しげな能力ではないのだが、五でも六でもないなら七と適当に言っているだけなのだ。

 セブンスセンス能力などという怪し気な何かは、本来この世には存在しない。


 俺がセブンスセンスと呼ぶものは『能力ではなく者』なので、一口に『感』とは言い難いものなのだが、俺のサイドからみると能力として使っている事も多いので、そう言うだけなのだ。

 その存在自体が、元々「力押しの世界」なのだから。


 そもそも、その類の能力なんかは、本来ならば生物が限界を超えて生き残るために有り得ない力を求めて手にしたものなのだ。

 命がけのシーン以外には基本的に目覚めるというか進化しないはずだ。


 俺に関して言うならば、セブンスセンスと称する者は『与えられた者』なのだから。


 この子達は「飢え」という、生命を犯される最大の危機から、そういう知覚を得ているのかもしれない。

 エリがこの道で信じられないような才能を発揮するのは、そういう事なのかもしれない。

 まあそういうものは、セブンスセンスとは明らかに異なるものなのだが。


 俺がセブンスセンスと呼称するものには、『そう在るための決定的な条件』が必要なのだ。


 彼らの父親は冒険者だった。

 最後には、それで命を落とすほどの人生を送ってきた。


 遺伝的に何らかの能力を得たのは有り得るのかもしれない。

 俺自身も、セブンスセンスは祖父からの能力の遺伝という前提があって手にしたような能力だったからな。

 それがそのものではないのだが。



 そうか。

 嗅ぎ付けられちゃったんなら、しょうがない。

 俺はゲートを開いてやった。


 一瞬、ポールは魔物を見て妹を庇う体制に入ったものの、すぐ勘違いに気が付き、彼はあっさりと警戒を解いた。


「チョコのいい匂いだ」


 目を閉じ、鼻をくんくんさせるポール。

 この子は本当に美少年だ。

 その心根もあって、掲示板のショタ系住人からは安定した支持を受けている。

 だが、エミリオ殿下もまた同様の人気だ。

 この世界でも絶大な人気を誇る王子様なのだ。


 それが二人無駄に揃ってしまった。

 こんなジャングルの、しかもこんな魔物さんの結界の中で。


 地球へ生放送しておいてやらんと後で連中が煩いな。

 生放送を開始してから計ったように沸いてきた少煩い変態女子どもを黙らせつつ、俺は魔物との交渉を再開した。


 色々と対価の商品を出してみたのだが、意外と彼らの心の琴線に触れたのは、なんと玩具系だった。

 しかもレトロ系が多い。


 ブラウンゴブリンと同じで、この世界の知的魔物は文化的な素養を非常に好むようだ。

 リバーシ、バックギャモン、双六、トランプ、囲碁、将棋、チェスなど。

 フリーク達は、もう目をキラキラと耀かせて、それらを弄っている。

 カカオとは別の、また新しい宝物を手に入れたのだ。


 その御蔭で彼らは、我がアルフォンス商会との取引に快く応じてくれるようだ。

 だがこの先、彼らが人間の利害のために迫害されるような事があってはいけない。

 その保護も約定に盛り込んだ。



 サイラス王国とアルバトロスの王族を呼んで話をつけた。

 契約書類も作ったが、「盟約」という形で取引を行なってもらう事にした。

「船橋武なら、必ずそうする」は、ここでも殺し文句になった。


 てっきりミハエルが来るのかと思ったら、なんと王太子カルロス君自らがやってきた。

 久しぶりに従兄弟の国王と会いたかったのもあるようだ。


 それとフィアンセ殿の話もあるらしい。

 サイラスの国王は当然結婚式に出る事になる。

 祝いの品はサイラス特産のチョコレート関係になりそうだな。



 マリーがしっかりと味見をしている。

 この子の味覚は本当にたいしたものだ。

 エリーンのように食い意地が張っているだけではない。


 キッチンエリの新作は、この子の駄目出しが出たら確実にボツになる。

 必ず後で欠陥が見つかるので店には出せない。

 そして暖簾分けのかかった職人は、この子のジャッジが下るまで固唾を呑んで見守るのだ。

 恐るべし、エリ姉妹。


 そしてポール。

 この子が将来マリーと組んで王都に店を出したなら、恐らく「他国」いや「他大陸」からさえ、王侯貴族の御婦人が列をなすのではないかと噂されている。


 今も多くのマダム達から関心が高い。

 だが同時に「魔王の身内」としても知れ渡っているため、おかしなちょっかいをかけられていないのは姉に準じる。


 さらにキッチンエリには、「魔王の手下」もいると言われている(エリーンの事だ)。

 おかしな奴らは、かなり痛い目に遭わされたようだ。

 俺も、あいつには色々と、そう色々と持たせてあるのだ。

 殺傷・非殺傷兵器各種、そして精神に強烈にダメージを与える物などのエグイ物を中心に。


 元より、あいつにはキッチンエリに危害を加える者に容赦するつもりなど端から無いのだが。


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