44-5 南国のトーナメント
ウオッカ姫の御相手は、なんと姫君の従者というか護衛というか、五歳の姫君に付けられた四歳の男の子だった。
この子はヤンチャをしたウオッカ姫が街で勝手に拾ってきて、そのまま御伴にしていた男の子だそうだ。
名はプリー。
名前からして可愛すぎるぞ。
こんな御国柄なので、即従者として採用されたという。
今日も楽しく御姫様の御相手だ。
おチビさん大張り切りの巻。
この子はちょっと小柄で可愛いので、女の子からの声援が熱いぞ。
この歳で、既に誑しか。
思わず頭を撫でたくなる。
こいつは姉弟対決だなあ。
「よいちょお」
弟分の、可愛い掛け声に掲示板が萌えた。
ただ今絶賛、動画配信中だ。
462:萌えいずる国の戦士
くっ。あたし、この展開を待っていたのよ。
463:日昇る国のガーディアン
どうどう。早まっては駄目よ~。
外国や異世界でやらかしても、日本の国の法律で裁かれるのよー。
ちなみに、そんな私は可愛い婦警さん。
464:日いずる国に帰りたい魔王
おいそこ。
すっげえ不安になるから、やめてくれ。
っていうか、今審判している途中だから、その話は後で!
迎え撃つは御姉さま姫、ウオッカさん五歳。
「来なさい、プリー。
もう可愛いんだから」
ああ、姫君は可愛い従者君に、既にメロメロな御様子だ。
可愛い主従対決に掲示板が更に萌えた。
「しょれえー」
四ちゃいの男の子の攻撃が真っ直ぐ過ぎて眩しい。
おっさんは不意討ち闇討ちの帝王ですから~。
この異世界って、基本は命あっての物種なんだもんな。
「せいっ」
それを、真っ向から受け止める王女。
「えいっ」
「せいっ」
「やっ」
「とう」
はあはあと、何故か息を切らしている操縦者達。
「やるわね、プリー。
引き分けよ」
「おい!
勝手に決めんな」
だが二人は意も介さず、仲良く雛あられを食べ始めた。
「えーと。
次回この二人と組み合わせで当たった奴は……そうだな、不戦勝という事で。
じゃ次」
お次の選手は第三王女テキーラ姫、御年三歳。
やはり栄養分の差が出たものか、レミよりも確実に体格がいいな。
ここは陽気もいい南国だしな。
なんというかこう、しっかりと身が入っている感じだ。
中身はそう変わらんような気もするのだが。
対戦相手は、あの俺に炭酸ジュースをぶっかけていた奴だ。
予想では幼いテキーラ姫がボコボコにされるのかと思われたが、とんでもなかった。
試合開始直後に激しいラッシュラッシュの大嵐が、白いマットならぬ姫君の御部屋の床に吹き荒れた。
悪戯僕ちゃんが手も足も出ずにくるくると目を回している間に、KOされた後であっという間に彼のヒナダムはバランバランにされた。
容赦ねえな、さすがは三歳児。
そういや、トーヤが熱心に手ほどきをしていたような気がする。
案外と侮れんぜ、サイラス王家。
見ろよ、あのチビ姫のドヤ顔。
次の対戦は、男の子軍団のちょっと大柄な男の子で、相手はひょろっとした男の子だ。
しかし、マシンは互いに正反対の体形をしている。
軽量タイプ対多足重量級だ。
御互い自分に無い物をヒナダムに求めたのだろうか。
恋愛なんかでも、そういうパターンはあるよな。
「ファイっ」
俺の掛け声で、軽量タイプはスピードを武器に挑みかかっていく。
だが一瞬にして掴まった。
多足に見えたものは実は「手」だったのだ。
ムカデのように抱え込まれて、バラバラと手足をもがれて試合は終了した。
新シリーズの、フェイクパーツシリーズだ。
尻尾と見せかけて実は巨大な手だったりとか色々ある。
殆どネタパーツであるのだが、このように実戦で有効な場合もある。
お次はシェリー姫様と、ファルのネタ枠戦士フロッグマン1号の対決だ。
神撃の女神ならぬ神撃の蛙?
ファルも今日は完全に御遊びモードだな。
「ファルちゃん、行きますわよ~」
「いくよ~。
それ」
そしてフロッグマン1号は飛んだ。
いきなり蛙のような格好をして座り込んだかと思うと、ピョ~ンっと飛び上がって天空から急襲する。
この機体はジャンプ力特化で、しかも柔軟な手足がまとわりついてポッチを外しにくるので、取り付かれると非常に厄介な事になる。
頭の上から絶好のポジション取りで、横向きな感じで首に巻きついてから、すぐに背後に回る。
ポチっポチっとなあ、という感じで、あっという間に手足のパーツを外されてしまった。
御姫様三姉妹で、一勝一敗一分けの成績だ。
「ファルちゃん、やられましたわ~。
さすがは神聖エリオン様ね~」
いや今回だけに限れば、それはあまり関係ないと思うぞ。
まあ機動力には影響したかもしれんが。
次は、やや重量級のボディに最大級のパワーユニットを積んだ人型同士。
そう、力士タイプなのだ。
御相撲さんの解説を絵にした説明書が豪く気に入った子達がいたので、動画も交えつつ説明してやったが、何の因果か相撲取り同士の対決となったのだ。
面白いので、臨時に魔法で土俵を作ってやった。
まあヒナダム用なので小さな物なのだが。
日本古来の行事同士とはいえ、雛祭りとは随分とかけ離れた世界にきたもんだ。
どっちかっていうと行事ではなく行司の世界だ。
「ひがあしー~~、お結び山~」
「にいし~~、和菓子海~」
その場で適当につけたので、酷いネーミングだな。
「はっけよい、残った!」
初めて相撲に取り組んだ割には、立会いは見事に一発で決まった。
そして、がっぷりと四つに取り組んだ。
御互いに一気に決める機動力を持たない。
その為、この体勢でお互いの手足のポッチを狙っていく変則相撲だ。
だが、和菓子海は技巧派だった。
土俵際に追い詰められたかに見せかけて、見事な「うっちゃり」を決めてみせたのだ。
あまりにも綺麗に技が決まったので、対戦相手からさえも物言いはつかなかった。
トーヤとエディが務める副審からも、笑顔が返ってきただけであった。
うっちゃり。
それは、土俵際に追い詰められた力士が相手を土俵外へと投げる技だ。
体勢が良くないので、投げた方も土俵外に共にもんどりうっていくような、ド派手な技だ。
土俵際に追い詰められる、即ち体格に劣る力で劣る、基本的にそういう力士が放つ技だ。
判官贔屓な国民性を持つ日本人には人気な技だったのではないだろうか。
追い詰められた弱い者が捨て身で強者に戦いを挑み、技と工夫で強い者を下す。
しかも、失敗すれば自らの負けを演出してしまうような両刃の剣でもある難しい技だった。
だからこそスパっと見事に決まった時には華があり、大いに賞賛に値するのだ。
近年、諸事情から日本の角界では「うっちゃりが消えた」と言われるほど珍しい技になってしまったのだが、異世界では素敵に決まったようだ。
惑星アスベータ初の決まり手は、「うっちゃり」であった。
世界史、いや惑星史に刻んでおくか。
いつか、この世界で見えるかもしれない宇宙人のために記録を残しておこう。
意味不明っぽい感じの地上絵と謎のモノリスと、どっちがいいかねえ。
それを見ていたトーヤは、何やら思うところがあるらしい。
ケモミミ園か、あるいはドワーフのところあたりで流行らせるつもりなのだろうか。
体育の授業でやってみてもいいかな。
回しをつけて、その上からふっさりな尻尾のケモミミ園児達。
結構可愛いかもしれん。
掲示板で、みんなが萌えそうだ。
あ、さっきもう手遅れそうな女が一人いたな。




