44-4 大武闘会INサイラス
そして、当然の流れで「大武闘会」へとプログラムは進んでいった。
指導員としてゲートからトーヤとエディを召還しておいた。
二人共、子供達全員から挨拶代わりにミミをもふられていた。
移動した先の会場は王女の部屋なのでかなり広いのだが、数十人の子供達が部品を広げて工作を始めると、それなりに手狭になる。
最初にトーヤが一通り説明して、各自が作業に入ったら巡回して面倒を見ていた。
子供達は俺のところにも聞きにくるので、丁寧に教えてやる。
あまりこういう遊びに慣れていない子供達なので、準備は三時間くらいかかってしまったから、御遊びは御昼を食べてからという事になった。
御昼御飯で出されたのは、なんていうかカレー系の御飯だった。
うちの連中は少々辛い御飯には慣れているので、ばくばくと食っていた。
給仕さん達は、それを見て安心したようだ。
きっと辛い物を食べ慣れない子供だと、中には食べられない子もいるのだろう。
一応は甘口で、食べた後もあまりひりひりしない感じだ。
いつもここの子達は、もっと辛い奴を食べているのだろう。
「もっと辛いのはあるのですか?」
俺は給仕の女性に聞いてみた。
「ええ、ございますが、御所望ですか?」
「できれば御土産として、とびっきり激辛の奴を御願いします」
悪戯っぽくニヤニヤしている俺を見て、また姫様方が呆れたような顔をしている。
何、ちょっとエリーンに食わせてやろうかと思っただけだ。
あいつの事だから、どうせ美味しく食べるのに決まっているので特に問題はないのだが。
そして子供達は、みんな御昼寝に入った。
姫様とエミリオ殿下も御付き合いだ。
みんな自分のヒナダムを大事そうに抱えて、可愛い寝顔だ。
起きると悪い事を始めるんだけどね。
俺もごろりと横になって食休みだ。
ファルとミニョンも俺を枕にして御昼寝中だ。
うつらうつらしていて、ハッと気が付いて起きたら目の前で悪ガキ共がニヤニヤしている。
こ、このパターンは!
慌てて鏡を取り出すと、しっかりと顔に落書きの嵐が吹き荒れていた。
くそ、これは「炭」で描かれたな。
これはべったりとやられると、浄化の魔法をかけないと中々取れないんだよね。
また追いかけっこの始まりだ。
子供のメンバーが変わっただけで、やっている事がいつもとあまり変わらない。
御蔭でみんな、すっかり目が覚めたので大会を始めることにした。
まずトーヤとエディの模擬戦からだ。
速度重視で完全軽量タイプのエルシド対パワフルな軽量タイプのエディオムの構図だ。
スピードで翻弄するエルシドが先に仕掛ける。
通常なら、その勝率は戦車対対戦車ヘリの対決並みにエルシドが有利だ。
かなり昔の時代には、その組み合わせによる勝率差は八対一と言われていたが、今はどうだろうか。
攻撃ヘリに搭載される対戦車ミサイルのTOWシリーズなんかも昔よりも大幅に進化している。
もちろん戦車を護衛する随伴歩兵が放つ携帯式の小型対空ミサイルも進化しているので、最近はヘリも迂闊に戦場を飛べないけど。
油断していると、ヘリだって鈍足な低価格ドローンにさえ狩られちゃう時代だからな。
二足歩行タイプ同士の定石として、足と腰の間にある関節を狙っていくトーヤ。
だが互いに手の内を知った者同士、エディはすかさずブロックして「技」をかけた。
ヒナダムは只のでく人形ではない。
操縦者の技巧次第で無限の可能性を秘める。
一瞬にして腕を背中に捻じられて、そのまま勢いで俯せに押し倒されるエルシオ。
そう、今日のエディオムは近距離格闘タイプにチューンナップされていた。
あれからせがまれて、色々なパーツをシリーズで出していたのだ。
格闘戦についても、ネットから取り出した動画や説明してくれるサイトなどで情報を集めた。
エディの腕は、前にレミが使っていた重量級のタイプバハムートと同じで、部分的にパワーとスピードを瞬時に切り替えられるシリーズに交換されている。
その代わりに出力の大部分を腕の能力に取られているため、足の方のパワー、特に機動力は大幅に低下している。
まあ言ってみれば、人型で格闘のできる軽量のバハムートのようなものだ。
見た目でそう判別できない仕様にしてあるので、うっかりこいつに出くわすと災難だ。
ただし相性が悪いと、機動力の欠如から裏目に出る事も多いはずだ。
今日はエキシビションという事で、相手が軽量先制型のエルシド一機なので、エディの作戦勝ちだった。
もっとも、こういう手の内を知られていたならば、エルシドの機動力の前にエディオムの方があっさりと膝を着いただろう。
ヒナダムの場合、バラされていたら着く膝すら残っていないがな。
「一本。それまで」
トーヤは「やられた~」というような顔をしている。
まあ、これでもトーヤがまだまだ勝ち越しているのだが。
エディの奴はマニアック過ぎるので勝率が悪いのだ。
その辺はポールと一緒だな。
エディは、ちょっとドヤ顔だ。
御雛様と違ってドヤ顔も可愛い。
やっぱり御狐様も正義だな。
みんな大興奮でエキシビションを楽しんでいた。
次は僕の番と言わんばかりに目をキラキラと輝かせて。
エキシビションマッチを終えた二人は、他の子にアドバイズしたり組み直したりするのを手伝ってやったりとサポートに回った。
「じゃあ、トーナメント開始ね~」
あみだクジで決めた対戦で、ざらっとトーナメントを決めた。
ここの子供達は、あみだクジは今まで見た事がなかったらしくて、クジ引きは結構盛り上がった。
一番手を務めるのが第二王女のウオッカ姫だ。
なんか姫様達の名前の元ネタがわかる気がした。
シェリー姫は「アルバトロス初代国王様の残された文献を、御父様がアルバの王都学園にいた頃に研究されたの。そこに記されていた名称なのです!」と大層誇らしげなのだが、それって!
それは武の奴が日本で飲める酒を懐かしがって書いた日記とかじゃないの~?
あまりに不憫すぎて、さすがに真実を伝えられない。
まあこの国じゃあ、そう問題にならんような気もするが。
できればドワーフの御姫様につけてほしかった名前だぜ。
ちなみに三女はテキーラ姫だ。
末に行くにつけて、段々とアルコール度数が高くなっていくんだが。
ああ、まだ作っていない酒が山盛りある。
ラスベガスの空港ラウンジのバーで作ってもらったカクテルの味が忘れられない。
あれは美味しかったなあ。
あの時はチップをもう少し弾んでおくんだった。




