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43-3 目玉商品

 俺はといえば、次の作品に取りかかっていた。

 それは遊園地で言うところの、いわゆるコーヒーカップだ。


 あれは「回せー!」っていう感じの乗り物だからな。

 こいつは子供達が存分に盛り上がるのを期待している。

 みんなの回しっぷりに期待しよう。


 ここではコーヒーが一般的ではないので、名称は御菓子の形をした『スイーツカップ』にした。

 スイーツのデザインはエリが担当だ。

 こっちの方が、この世界では一般受けするような気がする。


 エルフさん達も自分の仕事の成果を確認に来てくれたので試乗してもらった。

 さっそくチビどもが(たか)っていったので、抱き上げて一緒に乗ってくれている。

 御互いに、とても楽しそうな様子で何よりだ。


 エルフ新町へやってきた当初の、彼らエルフの虚ろで無気力な所在無さは、もうすっかり影を潜めてしまっている。


 ここのエルフ達は、禁断の力に手を染めて子孫を残す力を失ってしまった者達だ。

 皮肉な事に、そんな彼らがエロフとしての生活を、長く、あまりにも長い間強いられた。

 余計に虚しい月日であったろう。

 そんな過去のせいか、彼らは子供達をよく可愛がってくれる。



 親方と女将さんもやってきたので、エディも混ざって技術屋集団がああでもないこうでもないとやっている。

 トーヤがタブレットから遊園地のネット画像を引っ張り出してきてドワーフ達に見せている。


 こちらは回転台の上に個々のカップを載せてゴーレムに色々と試させる。

 そして、なんとか安全面でOKを出せたので振り返ったら、やっぱりみんな並んでいた。

 もちろん先頭はレミを抱えたアルスだ。


 御姫様方も並んでいた。

 エミリオ殿下は、もうラフな格好に着替えている。

 みんな、もう遊ぶ気満々だ。


 最初に遊び方を教えておく。

 というか、単にハンドルを回すだけなんだが。


「お前ら、あんまり回しすぎないようにな」


 既に回す気満々な奴等を見て釘を刺しておく。


 特にアルス。

 レミが一緒だからな。

 まあ獣人の子はたぶん大丈夫だろう。

 それよりも付き添いの職員さんの方が心配だ。


 エルフさんって体力的にどうなのかな。

 まあ、あの人達も人外なんだし大丈夫か。


 もちろんドワーフ連中は論外だ。

 奴らは出遅れたので、今頃は仲良くメリーゴーランドの馬にあの巨体を乗せて、ちまちまと跨っている事だろう。

 うちのメリーゴーランドは、親方と兄貴が二人乗りをしても超余裕なくらい頑丈に作ってあるので、それでも大丈夫だ。

 スペース的に乗らんとは思うがな。


 ハッと気が付くと王妃様がやってきていた。

 右手は国王陛下と繋いでいたが。

 先にラブラブ観覧車でも作っておいた方がよかったかな。

 ミニョンと自分のところの(いぬ)が一緒だ。


 その子の名前は相談されたので、語感のいいマニスを推薦してみた。

 女の子なので、インドネシア語で可愛いという意味のマニースから取ったのだ。


 ハイドに行った子の方は男の子なのでキュート。

 当て字で宮人とか?

 王宮の子になったんだから、それもいいかもしれない。

 メリーヌ王妃には、その連絡をしたついでに、また遊園地へ遊びに来るように言っておいた。


 残りの施設は先に大物から片付けるかな。

 目玉商品というか、遊園地のシンボルみたいな物なのだ。

 俺は観覧車製作に取りかかった。

 こいつは基盤を魔法建築でがっちりと作って、フレームを立ててから駆動部分を組み付ける。


 そしてホイールの構造部を取り付けた。

 これらはドラゴンが蹴りを入れてもドラゴンの方が泣いて帰るくらい頑丈にしてある。


 組み立て作業にかかった大型ゴーレム達が、次々と籠を取り付けていく。

 高さ五十メートルで直径四十五メートルと俺にしては控えめサイズだ。


 本来ならば、ビッグスケールの建築も余裕でこなす魔法建築と大型ゴーレム作業員の組み合わせなので、いきなりラスベガスにある世界一の奴を抜いてみせるのだが、ここは安全第一という事で今回はこのサイズにしておいたのだ。


 ゴンドラは三十二個で、都合百二十八人乗りだ。

 それがこのサイズの観覧車における標準仕様なのだ。


 幼稚園児が乗る時は要付き添いだ。

 特に乗り込む時にね。


「もう出来るのかなあ~」


 アルスが待ちきれないようだ。


「まだだよ。

 運転試験をしっかりやらないと、これは万が一倒れたりしたら怖い」


 もう既にアルスを先頭にかなり列が出来ていたので、一旦解散させて御飯にさせた。

 だが、みんな雄大な観覧車の運行試験の様子を見ながら、ピクニックランチをする事にしたらしい。

 食堂の料理長ランドさん達が職員さんと一緒に支度してくれていて、俺にも食事を用意してくれた。


 ホットドッグっぽい感じのスタイルをしたサンドイッチを齧りながら、俺は引き続き試験を続けて、なんとか及第が取れた。


「そうら、お前達。お待ちかねの観覧車の出来上がりだ」


 みんなから歓声が上がった。

 おチビ猫のレミが一緒に乗ろうと、俺の服の裾を引っ張っる。


「また今度な。

 おいちゃんは下で見てないといけないから、アルスやファルと一緒にいっておいで」


 レミの頭を撫でて、ミミをくりくりしてやってからアルスに預けておく。

 観覧車を起動させたが特に問題はないようだ。

 まあ回転する輪が回っているだけのものだからな。


 魔法の軸受けを使っているし、何よりも素材がなあ。

 基幹部分には、たっぷりとオリハルコンを使用しているので、こいつはまず壊れようがないのだ。


 観覧車はゆっくりと動いている物なのでまだ安心だ。

 止まっておらず、ゆっくりと動いているゴンドラに乗るので、最初はドタバタしていたのだが、みんなすぐに乗り慣れた。


 一周する所要時間は十三分。

 結構飽きずに何回も乗っているようだ。


 王族も一緒に並んで大はしゃぎだ。

 悪いね、陛下。

 この観覧車にVIP仕様は無いんだ。


 万が一に備えてゴーレム救助隊は待機している。

 あと、ホイールごと抱えられる特別な大型ゴーレムが何体か待機している。

 地球では考えられないような品質過剰な安全対策だ。

 あとメンテナンスなんかも、ゴーレム隊がしっかりとやってくれる。


 そして、まだまだ御楽しみは終わりじゃない。


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― 新着の感想 ―
[一言] かつて横浜ドリームランドにあった、絶叫マシン付き観覧車、もう作られることはないんですかね
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