2-11 王宮へ
異世界二十三日目。
夕べはダンジョンの街アドロスにて宿を取った。
こんな荒くれた街に王族が泊まるのに相応しい宿などありはしないが、行きに泊まった比較的良い宿を手配したようだ。
既に王宮へは、アドロスの代官が走らせた早馬で先触れがいっており、物々しく王国騎士団が派遣されてきた。
そして平民のエドは、王子様を背負って御世話をしていた事によるストレスで真っ白になって燃え尽きていた。
よかったな。
三日も王子様を背負って歩く素敵な経験なんて、一生の間にもう二度とないぞ。
翌日、豪華な馬車で王子様一行は王都へ向かい、そして我々も共に王宮へと招かれていた。
残念ながら、異世界の迷宮都市をゆっくりと探索する時間は与えられないようだった。
王都のすぐ傍にある街なんだから、アドロスくらい何時だって行けるんだけど、なんだかんだいって初訪問って胸が躍るから記念に土産くらい欲しいよな。
今回は想定外であるAランク魔物の討伐までしちまったんだし。
アデュー、迷宮都市。
親睦を深めるのは、また今度ゆっくりとな。
そして案内された王宮の一室にて。
我々は豪華な部屋で待たされており、皆落ち着かないようだ。
俺はというと、御機嫌で尻尾ぱたぱた状態だ。
ここまで連れてきたという事は、約束を一方的に反故にする気はないという事だ。
最悪は宝物庫の見学を勝ちとろう。
何か良い物をコピー出来るかもしれない。
そういう訳で俺は一人だけ異様に浮き浮きしていた。
「よくそんなに暢気にしてられますね。
ここは王宮なんですよ?」
「だからあ?」
俺の心ここにあらずといった按配の浮かれた様子に頭を抱えるエド。
「ここは本来、我々なんか来るようなところじゃないんですよ?」
「そうだよ~」
俺の軽すぎる返事に、更に頭を抱えている奴がいた。
「何、殺されやしないさ。
裏の事情がどうであれ、俺は表向きは王子様の命の恩人なんだぜ?
あの王子様も何か訳ありのダンジョン行だったようだが、機密保持のために全てを無かった事にして殺しにかかってくるようなら実力で血路を開くまでだ。
何、この王国もそこまでケチじゃないさ」
いざとなったら稀人カードを切ってみるのも一興だ。
そいつもこの国限定でなら通用するかもな。
「ケチとかそういう問題ではないのですが……」
諦めたようにエドが呟いた。
コンコン。
おや? 誰か来たようだ。
これがネットの小ネタなら「Fin」と続くところだが、実際にはノックの後にドアが開いて、兜を脱いだ高級そうな白銀鎧を着込んだ騎士が入ってきて言い放った。
「国王陛下が御会いになられる。
皆様方、どうぞ謁見の間に参られよ」
「!」
えー? いきなり王様に謁見なのかよ!
聞いてないよ。
こ、これは予定外だなあ。
騎士の後に続いて、立派な絨毯の敷かれた広い通路を歩きながら、みんな緊張しまくって酷い事になっていた。
自分はこの世界の人間じゃないので、そういう実感がまったく湧いていない。
そういう物はお話の中でしか知らないので。
地球のスーパーリッチが住む御屋敷にだって縁がないよ。
あれだって写真で拝んだだけだ。
ベガスやアナハイム、それにハリウッドの撮影所へ行った時も、超高級住宅街のビバリーヒルズなんて回らなかったしな。
アメリカの芸能人とかにまったく興味なかったし。
日本の芸能人にだって興味がないんだから。
一体、芸能人なんかのどこがいいんだ?
特に連中が俺に何かしてくれるわけじゃないしなあ。
俺は王宮内を案内されながら、ただあれこれと辺りを見回していただけだった。
完全に御上りさんの観光そのものだな。
まるで英国あたりの、観光客に開放されている宮殿を見学しているかの如しだ。
(王宮だけあって、凄くいい調度だなあ。ああ、コピーしたい)
さすがにこの俺も、そんな事をしている心の余裕はなかったが。
「冒険者五名を連れてまいりました!」
荘厳といっていいような立派な装飾の、高級木材製と思われる観音扉が開いて一行は中へ通された。
そこには眼の覚めるような真っ赤な色をしている何かの革と思われる、実に立派な幅三メートルは余裕でありそうな一枚物の敷物が敷かれている。
レッドカーペットだ!
しかも切れ目が無くて物凄く長い!
どれだけでかい生き物の革なんだよ。
形状からして、たぶん蛇あたりかな。
しかし、もしこれが蛇だとしたらどれだけでかい蛇なのだ。
どう見たって、この素晴らしい仕上がりの革は決して抜け殻などではない。
これを仕上げるためだけに、一体どれほどの時間と人手をかけたものかすら見当もつかない。
あのしぶといAランク魔物とやりあった今ならば、この巨大な蛇っぽい物を狩るのにどのくらいの力量が必要なのかくらい俺にだってわかる。
この革を提供した魔物らしき巨大生物は、その辺にいるようなチャチな代物ではない。
おそらく、あのアドロスの底にだっていまいよ。
半端ないな、異世界の王宮も。
俺もそいつを狩れる域に達するには、一体どのくらいの高みに上らねばならないものか。
この年齢から冒険者なんていう因果な商売を始めたんだから、そこは無限大に見上げるような霞んだ天空の果てに在る頂なんだろうな。
下手をすると、そこは三途の川の向こう側だ。
その、寿命的な意味でな。
そして……なんかこう雰囲気がヤバイ。
いや危険とか、そういう事じゃなくて。
なんていうかな。
もうそこにいる人達の雰囲気がね。
高貴な、少なくとも日本にいた頃は、俺には絶対に縁のない世界の人達の集団であった。
自分がここにいちゃいけないんだという場違い感が物理感覚で犇々と伝わってくる。
まあ今更、完璧に手遅れなんだけれども。
さっきの待合室で、もう少しマシな格好に着替えてくればよかったかなと嘆息するのみだ。
まあ粗野な感じではなくて、いかにも日本人の一般人らしく小綺麗にしてあるだけ多少はマシっていう感じかな。
他の連中も清潔感があるだけいい。
迷宮の中でもシャワーを浴びてたしね。
煌びやかな方々の御前を、典型的な革の服を着込んだ冒険者風スタイルをした俺達が、ぎっくんぎっくんと慣れぬ足取りで通り抜けた。
それから全員、案内してくれた騎士に指示されたところで跪いて首を垂れる。
「苦しゅうない。面を上げよ」
おお~!
王様って、ほんっとうにそんな事を言うんだ~。
ちょっと感動したな。
「アルフォンスと言ったのう。
この度は、よくぞエミリオを救ってくれた。
感謝するぞ」
「ははっ。
ありがたき御言葉。
感激至極でございます」
ここは丁寧に丁寧に。
なんたって相手は本物の王様なんだぜ。
「時にお主は褒美として、宝物庫の中にある物が欲しいそうじゃな?
それは全員か?」
俺は少し首を巡らせてエド達の方を見る。
全員がぶんぶんと首を振る。
「彼らは要らないそうです。
もとよりその要求をしたのは私であり、殿下の御付きの方に、彼らにはCランクパーティとしての護衛の報酬をと御願いしておいたのです」
「そうか。
だが宝物庫の中身ともなれば、そう簡単に渡してやるわけにもいかんのじゃが」
「そうでございますか。
それでは宝物庫の中を見学させていただくわけにはいきませんでしょうか?
商人として、一生に一度くらいはそのような眼福に巡り合いたいものです」
「ほう。それは欲の無い事だのう」
国王陛下は、しばし考えるようにしてから言ってくれる。
「わかった。
では、そのように取り計らおう」
「本当でございますか?
ありがたき幸せ!」
「それでは下がるがよい」
「ははーっ」
やったぜ、権利獲得!
浮かれてその場で踊りだしたいくらいの気持ちだ。
さすがにここじゃ踊らないけどな。
後で宿屋かどこかで楽しく踊ろうっと。
そして必然的に、エド達とはここで別れる事になった。
「またな~」
俺は満面の笑顔で、親指を立てて見送った。
「どうも、アルフォンスさん。
またどこかで御一緒できたらいいですね」
「ああっ、ケーキー、シュークリームー、プリンー」
なんか俺の方へ手を伸ばしながら叫んでいる奴がいるな。
エドに首根っこを掴まれて引きずられていきながら。
マジで泣いていたし。
それから案内してもらったその空間は、なかなか壮言な眺めだった。
そこは王宮宝物庫。
それは実に立派な佇まいであった。
なんていうかな。
金に糸目をつけずに勢を尽くし、それでいて下品で華美な仕上がりには決してなっていない真の高級な有り様というか。
そこは通常ならば俺のような普通の人間が立ち入る事など絶対に許されない、神聖不可侵である国家機密の聖域なのだ。
専門の案内人と監視役の騎士二名の案内で、その滅多に足を踏み入れる事など出来ない場所へ入る事が許された。
宝物庫、その響きに思わずうっとりしてしまった。
この種の名前の物に関しては、観光地に在る淫靡な響きの『秘宝館』の看板でしか御目にかかった事がない。
あれって中身は本当にしょうもない代物だったのだが、昭和の爺としては一度くらいは見学しておくべきだったな。
今ではもう拝む事すら出来ない、ネット上の写真でしか見られない伝説の代物だ。
まだどこかに色褪せた看板くらいは残っているだろうか。
そして今、俺は通常ならばもっと拝む事が出来ない秘所へと足を踏み入れた。
俺と同じようにこの世界へやってきた日本人とて、それはそう簡単には許されまい。
だが、ここを作り上げた奴自身が、その一人である稀人なのだ。
ここに一体何が隠されているものかと、ちょっと期待しちゃうよな。
三人共ステータスをというか、鑑定して見たのだが、特別なスキルはないようだった。
騎士は魔法をたくさん持っていたが。
だが俺が何かおかしな真似でもしようものなら、その厳めしい騎士達が放ってはおかないだろう。
ふふ、生憎な事に目視収納で瞬間コピーが出来るので、どうぞ御構いなく~。
どんな武器防具や魔道具があるかが解かれば、自分の能力ならコピーや再現が出来るかもしれない。
そういう想いもあって見学は超真剣である。
それはもう、色々と凄い品物があった。
実に参考になった。
この形はこういう機能を求めての事なのか、こんな機能の魔道具があるのか。
これはそういう目的で多分こういう構造か!
車から外して加工した、革鎧の装飾に見せかけたドライブレコーダーでも記録していった。
まあこれがどういう代物なのか、この世界の人がパッと見たってわかるまいがな。
コピー出来るものは瞬間コピーしていく。
収納禁止の措置は取られていないようだった。
俺なら盗難防止で、そうしておくのになあ。
最近は俺も少し大胆すぎる。
そういう魔力を検知して知らせる警報でもあったら一体どうするつもりなのか。
だが、俺の相棒セブンスセンスは警告を出してこなかったけどな。
一番奥に初代の建国王の遺品があったが、そこにはなんと『転移の腕輪』なる物が飾られていた。
俺はそれを食い入るように見た。
そして試してみたが、生憎な事にコピーは出来ない代物だった。
それどころか瞬間収納すら出来ない。
収納が見事に弾かれてしまった。
残念無念。
仕方がないので、そいつを解析してみる。
かつてそいつが魔法を発動する際に放っていただろう魔力の流れを見ようとして集中し……そして何故か見えてしまった。
腕輪に込められた稀人の魔力のせいだろうか。
ほんの一瞬が永遠の時のように感じた。
そして、なんと腕輪のコピーをアイテムボックスの『イメージ作成』の能力で作れてしまった。
腕輪の見た目を工作スキルで再現して、解析で視えた魔法の発動を見取りの能力で見取って入手し、作成した腕輪に魔法として付与しただけなのだが。
そいつは魔道具用の魔法発動の流れの魔法式みたいな物なので、俺自身が転移系魔法を習得する事は出来なかった。
見取りは誰かが魔法を発動するのを見て魔法を入手する方法なので。
もしかしたら、ここへ稀人が来たら転移魔法を発動する際の魔力の流れなどが見えるようにと初代国王が配慮してくれてあったのかもしれない。
こんな凄い物を持てるか持てないかで、異世界ライフは大きく変わってしまうだろう。
この世界の交通機関は馬車がメインなのだから。
俺は車やフライの飛行魔法があるだけ、まだマシな部類だ。
現物を見ながら色々とチェックしていく。
弄り直して本物と比べてみたりと、それはもう心ゆくまで。
さすがに目玉展示の所なので、多少時間をかけても文句は言われなかった。
同時にセブンスセンスで理解してしまった絶望。
この腕輪で地球に帰る事は無理だとハッキリ感じ取った。
そういう事が理屈でなくわかってしまう能力なのだ。
そして、よく考えてみればいい。
こんな凄い物を持っていたのに、あの国王は地球へ帰れなかったのだ。
多分、国王本人が作ったであろう魔法の道具で帰れなかったからこそ、この王国は今現在ここに存在するのだ。
それに気付かなかった自分が浮かれ過ぎていたのだ。
まあ、いい装備が手に入ったからいいかな。
こんなチャンスは二度と無いだろう。
望外の幸運だったと思うしかない。
気持ちを切り替えて、その後もコピー三昧に勤しんだ。
そこにあった御宝の八割方はコピー出来たぜ。
いやあ、俺って悪党だなあ。
曰くつきの品物や、厄介な術式を持つ魔道具などはコピー出来なかったが、色々と真似して似たようなものをいくらかは作る事が出来た。
その辺も現地で三割はいけた。
残りは後でじっくりと研究すればいい。
解析三昧で、そのうえ姿形はレコーダーでしっかりと記録してあるし。
実物を前にしているので色々と参考になった。
王子を救った報酬としては十分にして余りある宝物庫見学であった。
もう六時間も長居してしまって、案内の皆さんには大変に御迷惑様だ。
でも付き添いの皆さんは「エミリオ殿下を助けてくれてありがとう」と言ってくれた。
ちょっと胸が痛いな。
案内人に礼を言って悪党は早々に退出する。
超御機嫌で王宮を出てから考えた後、俺は北のダンジョンへ向かう事にした。
例の転移石のあるダンジョンだ。
その前に冒険者ギルドへ行ってランク上げの交渉をする作業が残っていた。
Aランク魔物を討伐したのでランクアップ交渉の余地ありだ。
だがギルマスに相談したら、いきなり頭を抱えられた。
「ランクAの魔物をソロ討伐するなどBランク冒険者でも不可能だ。
こいつはAランク推薦案件だ。
しかし、おまえはEランク。
本来ありえない事なのだが、まあお前に上級魔法を習得させたのはこの俺だしな」
しばらく天井を睨んでいた後にギルマスは心を決めたようだ。
「おい!
Cランクに上げてやるから、とりあえずそれで我慢しておけ」
額に手を当てながらギルマスは言葉を乱暴に吐き出す。
「お! マジでいいの?
せいぜいDランクだと思ってたのに」
これは嬉しい誤算だ。
冒険者資格のランクはスキップ制度ありでしたか。
「いいか?
実力だけなら、お前は間違いなくAランクだ。
しかしな。
AランクやBランクなどには試験を通らないと上げられないんだよ。
ギルマスの権限で無条件で上げられるのはCまでだ。
よってCランクだ。
その代わり、Bランク試験へのギルマス推薦をくれてやる。
それで我慢しとけ。
これがあると無条件でBランク試験の優先枠に入れる。
都合のいい事に、明日試験があるから受けていけ」
いきなり明日か。
『セブンスセンスは、タイミングを図る事により現実世界に御都合主義を持ち込むという側面もある能力』
これもセブンスセンスの本領発揮っていう事なのかねえ。
こりゃあ面白い事になる話なのかもしれない。
そしてギルマスは続けて説明してくれた。
「Bランク試験は各国のギルド本部で開催される。
一回、大体五百人ほどでやるのだ。
月一度ほどの頻度での開催だな。
予選で元Bランクの教官相手に二十人ほどに絞り、それから本戦でトーナメントをやる。
ただし、こいつは優勝しないと駄目で、しかもその先にある審査で合格出来なければ駄目という、一回で合格者が一人出るか出ないかの狭き門だ。
その代わり合格すると『男爵相当の扱い』となる。
そして王国に申請して、貴族として国に仕える事もできる。
国に仕えれば名誉男爵位も与えられる。
功績を上げれば正式な爵位も与えられるし、領地持ちの貴族も夢じゃないっていう話だ。
Bランク試験の大きなルールとしては相手を殺したら失格だ。
だから滅多に命を無くすような事はないが、それも絶対じゃない。
これに出たのが元で冒険者を引退する事になった奴とか、負け犬根性が身についちまって、以降ずっとCランクで燻ぶっている奴なんかもいる。
更にAランク試験となると、この大陸各国で回り持ちでの開催となる。
現役Bランクなんて世界全体で二百人あまりだからな。
もうBランクになるような歳だと引退する奴も多くて、なかなか数も増えん。
だからAランク試験は毎回似たような面子でやるわけだ。
そこで優勝した奴は無条件でAランクに昇格する。
これは子爵待遇だな。
ただ、やっぱり年令の関係もある。
Aランクになってからも年齢的な限界を感じて、比較的短期間で引退していくからな。
現役のAランクなんて、今世界で十二人から十三人くらいじゃないか?
Sランクに至っては、現役は三人ほどに過ぎない。
明日優勝できたら、俺は審査でお前をBランクに強く推薦してやる。
現地ギルマス推薦は強い効力があるから、それでまずBランクは確定だろう。
そしてBランク試験に合格出来たらAランク試験への推薦もやろう。
どうだ?」
長々と懇切丁寧に説明してくれたので、なんとなく俺にも試験の概要は理解出来た。
毎年延べ六千人が参加して合格するのは十二人程度ねえ。
合格率二パーセント程度で東大合格よりも遥かに合格率が低いと言われたナナハン免許よりも更に十倍ほど難関だわ。
しかし。
「ふう~ん」
「お前な」
だが、俺の関心の無さに呆れたような声を上げるギルマス。
まあ、確かにそれほどの物なのだろう。
この世界では貴族が平民の上に立つのが基本だ。
平民でも実力次第でその資格が得られるというのだから、それはもう大変な事なのだ。
だが基本的に身分制度の無い日本生まれの俺にはピンとこないのは無理もないさ。
あとなあ、この歳で今更というのもある。
基本的に気合の入った若い子の出るイベントだろうからな。
見た目だけは若いから、若い子の中に入ったってそう浮く事はないとは思うのだが、気分的にはちょっと気乗りがしないねえ。
どっちかというと、ビール片手に出場する若い子を応援したり冷やかしたりする役どころが合っているわ。
「あ、せっかくのチャンスなんだから一応出ますよ」
「そうか。
遅れるなよ。
朝九時からだ」
「は~い」
「やれやれ」
実に面倒くさい事になったな。
目標だったCランクには到達したわけなので、もうこれ以上ランクを上げる必要はないわけなのだが。
貴族かー、それもなんだかな。
でも何かにつけ貴族待遇というのは悪くないな。
別に王国に仕官する必要はないわけだし。
もしかしたら宿とかでの待遇なんかもいいのかもしれない。
それにもうギルマスに出るって言っちゃたしな。
そんな軽いというか適当なノリでの試験参加だったので、もう適当適当。
それから工作を始めて、試験用に武器を作ってみた。
うっかりと相手を殺しちゃいけないんだよな。
麻痺というか気絶させる魔法「スタン」を付与した武器シリーズなんかだ。
スタンピストルなんかも作ってみた。
俺には魔法PCの能力によるアビオニクス連動攻撃もあるのだし、なんとかなるか。
こうしていると、なんだか俺もなんとなくわくわくしてきたな。
ちょっとだけ明日の試験を楽しみにしておこう。




