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42-5 お母さん

 突如として会場が激しくざわめいた。


 一体、何事か!?

 俺は壇上で少し腰を落とし加減にし、対処のために反応出来るような態勢でいた。

 とはいえ、俺のレーダーは敵に反応していない。

 だが魔物反応あり。


 あれ? これって割と最近にあったようなパターンだ。

 まさか。


「ワオーーン」


 突然講堂に響く犬族の吠え声。

 威嚇を込めたものではなく、家族を呼ぶようなタイプの。


 すると王妃様の御膝の上で寛いでいたミニョンがいきなり飛び起きた。

 そして「ワンワンワンワン」と吼えながら突っ走っていく。


 思わず、「あ」と寂しそうに手を伸ばす王妃様。

 だが次の瞬間に、その美しい青色の瞳を歓喜に輝かせた。

 現れたのはプリティドッグの団体さんだったのだ。

 おそらくミニョンの御母さんと兄弟達だろう。


 こ、これは可愛い過ぎて身悶えするな。

 俺が空中に放った魔導の撮影機器がフルに機能を始めた。

 配信動画も現れたミニョン一家に焦点が合わされて、一気にネットの視聴者が増えた。


 子犬が全部で六匹かあ。

 標準的な犬の家族構成だが、その破壊力は六倍、いや母犬を入れても七倍では絶対に利かない。


 隠蔽が凄すぎて警備のゴーレムにも見つけられなかったのか、それとも「園児? の父兄」として入場が認められたものか。


 そして彼らは堂々と、席に余裕のあった来賓席の最前列に陣取った。

 これから何が始まるのかしら? みたいな顔をしている。


 悪いな、ミニョンママ。

 もうイベントは終わったよ。

 そうたいした事はしてないけどな。


 そして子犬共はミニョンに唆されて王妃様を襲撃した。

 王妃様は当然のように発狂なされた。


「な、な、な、な、なんて可愛いのかしら~。うひょー」


 あのう、その痴態は謁見に来られた他国の偉い方々とかも見ていらっしゃるのですが。


 これはどうしたものかとケインズの方を見たが、奴は無言で頭を振った。

 陛下にも目線をやったが、苦笑を返してきただけだった。

 そうか、陛下にも止められないんじゃな。


 では放っておこう。

 俺もうんうんと頷くのに留めておいた。

 なんたって次は、街の皆さんもお待ちかねのバザーなのだから。


 ワンコども、ここぞとばかりに王妃様の服をもみくちゃにしている。

 それ絶対に大事なもんだとわかっていて、わざとやっているよね。


 突如としてプリティドッグ塗れになってしまって、王妃様はもう心ここに在らずだ。


 アルスは座ったまんまで面白そうな顔をして見物しているだけだし、ケインズはそんな王妃様の警護として、苦笑いをしながら一緒についている。

 王様には騎士団以外にも特別な警護の人がいるので放置している。

 特に危険な事もないしなあ。

 ここには俺もいるんだし。

 なんたって、ここは身内の奴からも魔王城なんて呼ばれているくらい警備に煩いんだからな。


「御母様、それがいつもお話してくださっていた、あのプリティドッグですのね!?

 か、可愛い。

 御母様ばっかり六匹はずるいですわあ」


 そう言いながら、手を組み合わせたまま周囲をうろうろしてミレーヌ王妃が拗ねた。

 そういや、他国へ嫁いでしまったミレーヌ王妃だけがプリティドッグは初めてなんだな。


 街の衆も、美しい親子王妃が世紀の可愛さを持つプリティドッグの群れと戯れるという、本来ありえない構図に見惚れていた。

 ついでに神聖エリオンもセットなのだ。

 それは本来であるならば、ついでなどと言ってしまっていいような存在ではないのだが。


 謁見に来た他国の貴族や大使などは、その様子を書き止めて本国へ文書を送るようだ。

 俺はサービスで写真を印刷して渡してあげた。

 それにも驚いていたようだが、彼らも改めてここは古き魔道の王国アルバトロスなのだという認識を持ったようだ。


 まあ船橋武の故郷から持ってきた品によるものなのだし、武もそういう技術は魔法として組んでいたようだ。

 魔法で出来ている真理の体とかに。


 古きっていうか、俺の場合は最新技術を魔法PCのスキルで再現しているだけなのだが。

 PCで印刷したものとかパンフとか、色々とインクを用いた手持ちの物品は手持ちにあったので、それらを元にして開発指定の能力でプリンター用のインクは完全開発済みだ。


 そもそも古き魔道の知識とやらは、その大元が二十一世紀の日本から齎された知識なんだが。


 俺の生産スキルは武の錬金魔法とはまた違ったものだ。

 あいつは化学関係の技師というか技術者というか、そういう者だった。


 俺は機械関係の製造業がベースなのだ。

 自動車関連はいろんな分野に跨っているし、色々と被ってはいるけどね。

 俺の方が少し非常識が過ぎるけれども。


 相変わらず、二人の王妃がプリティドッグを取り合っていたが、七匹の生き物は違うものに目を付けた。

 そう「可愛いもの」、つまりはエミリオ殿下の事だ。


「わあ」


 いきなり七匹の魔物に襲われて、殿下から嬉しい悲鳴が上がる。

 さすがに騎士団も動かない。

 というか、生暖かい目で見守っている。

 エミリオ殿下、相変わらずの愛されっぷりだな。


「エミリオったら、ずるーい」

「うーん、やっぱりエミリオも可愛いわ」


 王妃様ズは、末の息子並びに弟ごと伝説の魔物を可愛がる事にしたようだ。


 もうキリがないのでバザーを始める事にした。

 思わぬハプニングで御昼の時間を過ぎてしまったので、うちのチビ達がそわそわしまくりだった。


「これより、卒園式バザーを始めます」


 俺の合図を受けて真理が放送を入れた。

 後は副園長先生もチビ達の面倒を見るだけだ。


 街の人達も、めいめい気に入った屋台のところへと散らばって、本日己が目にした出来事について楽しく語らい合った。


 おチビ達はもう、いつもの格好に戻させた。

 王様達も特別席を設けたのだが、ミニョンママは堂々と国王陛下の御膝の上を占領している。

 まさにスーパーVIP席だ。

 とても人間には真似できない荒業だった。


 その傍らで、王妃様が必死でミニョンママを口説いている。

 どうやら一匹養子に欲しいようだ。

 ミレーヌ王妃も、「御母様~、うちにも御願いー」と。

 交渉は母親頼みなのだが。


 ミニョンママは、「あんな事を言っているけど、お前達どうする?」とでも言いたそうな顔で子供達を見ている。


 今日はミニョンの顔を見にきただけなのだろう。

 子犬達も「どうしようかな」という顔でじゃれじゃれしている。

 だから、子犬達の頭を撫でていたファルが通訳してやったのだ。


「あのね、大事にしてくれるなら一緒に行ってもいいって、この子とあの子が言ってるよ。

 御母さんも、本人達がそれでいいならそうしてもいいって。

 動物や魔物は、いつまでも御母さんと一緒にいられるわけじゃないんだよ。

 いつかは独立するの。

 でも今日みたいにまた家族で会いたいって」


 それを聞いて小踊りする王妃様達。


「そうか。

 じゃあ、うちへ来てくれれば、いつでも子供のところへ連れてってやるぞ。

 子供達が行くのはアルバトロスとハイドの王宮だからな。

 大国の王様のところに行くんだから、待遇は間違い無しなのは保証するよ。

 それらの王家はみんな人柄もいい人ばっかりだしな。

 心配なら、しばらくうちにいてもいいぞ」


「そう、それもいいわね。だって」


 ファルが通訳してくれ、そのように決まった。

 俺のフォローにミニョンママ達は乗った。

 ちゃんと人間の言葉は解するのだ。

 こうして、うちには残りの子犬四匹と親一匹のプリティドッグの団体が居つく事になった。


 そしてプリティドッグ欲しさに諸国を旅してAランク冒険者にまでなったサイラス王国のエミルハーデ公爵家御令嬢は、四十年越しの夢をついに叶えたのであった。


昨日で六か月目に突入しました。

一か月平均、270万PVで来れました。

日頃の応援大変ありがとうございます。

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ケモミミ園にプリティドック一家増えた(*´▽`*)また戦力!?増強ですね(かわいさの破壊力という)
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