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41-3 雛人形戦士ヒナダム

「殿下はどれになさいますか~」


 俺はにこにこして、エミリオ殿下と一緒にパーツを組む。

 わからない子は俺のところへ訊きに来るし、既にこのゲームの趣旨を完全に理解出来ているトーヤが結構指導に回っている。


 女の子達は御雛様会に夢中だ。

 ファルとレミはまだ小さいので、こっちのヒナダムに回っている。

 殿下と一緒に、ああでもないこーでもないと楽しそうだ。

 こういうのも御正月の凧以来だな。


 各タイプのボディには、嵌める関節部とかが共通規格となっている腕や足のパーツが嵌るようになっている。

 ポッチを押さえて、引っ張ったり嵌めたりすれば着脱は容易だ。

 このあたりを逆手に取れば、軽量の素早さ重視のモデルで、それを外していけば相手をバラバラにできる。


 トーヤはそれを選んだ。

 技巧派なのだ。

 冒険者に例えるとデニスタイプのモデルか。


 エディは軽戦士っていう感じのタイプか。

 パワフルなエンジンと比較的軽めのボディの組み合わせだ。

 冒険者に例えるとロイスタイプだな。


 レミはなんと、意外性のある重量タイプだ。

 そいつはパワーと重量が絶妙なバランスになるように手伝ってやる。


 ファルも軽量なタイプだが、トーヤとは狙いが違うようだ。

 こっちは軽快な動きに物を言わせるようなタイプのようだ。


 おっさんは御世話係なので試合には参加しない。

 エルミアの孤児院ともゲートで繋げており、エリ達も呼んできた。


 ポールが無茶苦茶に張り切っていた。

 この子はセンスがあるので、トーナメントの組み合わせ次第では結構善戦するかもしれない。

 マリーは御雛様会の方で生き雛様になっていて、かなり御満悦な御様子だ。


 エリはじっくりとパーツを選んでいる。

 いかにもっていう感じだな。

 さすがは大師様だ。

 でも、お前は普通の雛祭りの方へ行かなくていいのか?

 まあ、あっちへ行っても一人だけ御姉さんだけどな。


 エリーンの奴だったら、どんな選択をするのか興味があったのだが、残念な事に奴は仕事中だ。

 あいつは冒険者としては結構えぐいタイプだからな。

 今度エリーンにもヒナダムを作らせてみようか。


 みんな、新しい玩具に夢中だ。

 俺はあちこちを回りながらミミをもふるのに熱心だった。

 いや別に今日無理にもふる必要はないのだが、せっかくのミミの日なんだし。

 こういうところが日本人って妙に貧乏性な気がする。


 みんな頑張って、それぞれ自分のヒナダムを完成させたようだ。

 雛人形戦士ヒナダムと銘打ってはみたが、既に御雛様なるものの影も形もない。


 という訳でトーナメント表を籤引きで決めた。

 そういう訳で、栄えある第一回雛祭りバトルトーナメントが開催された。

 なんとなく、通常の雛祭り中である女の子達も見物にやってきていた。


 トップバッターは、トーヤ対ドワーフの王太子という組み合わせだ。

 鉱山国エルドアの誇る国家特級技師同士の対決なのだ。

 事実上の決勝戦か?


 片や、ドワーフ国・史上最年少国家特級技師であり、また稀人園長の肝煎り幼稚園児。

 そして片やドワーフ王国の王子で、腕っ節で仕事を取るシーンでは負けた事がないという、あの親方の血を引く筋金入りのドワーフ。


 カーン!

 俺が鳴らした手製のゴングと共に勝負が始まった。


「行け、王子ロボ」


 なんてネーミングだよ。

 いかにもドワーフ過ぎる一直線なセンスだな。

 力押しの王子ロボは、のっけから怒涛の攻めだ。

 これだからドワーフという奴らは。


 言っておくが、このゲームってそれほど甘くはないからな。


「よし、そこだ。

 躱せ、エルシド」


 ネーミングで既に勝負がついたか。

 すかさず華麗なステップで、有名な伝説の英雄から名をとったヒナダムは筋肉ロボの突進を鮮やかに交わした。


「バラせ、エルシド」


 各部をバラすためのポッチを攻めるエルシド。

 トーヤは俺の製作場面をずっと見ていて、その並外れたセンスで、このゲームの肝を既に理解している。

 なんて頭がいいんだろうな。


 ポッチを押さえながら、筋肉王子の腰についた無駄な装飾を施したベルトを手がかりに、一気にかち上げる。

 王子ロボの左足が為す術もなく転がった。


 それでも王子ロボは、王族の誇りと言わんばかりに片足で踏ん張りながら、エルシドの後ろに手を回すが空振りに終わる。


 エルシドは素早く反対側に回りながら、手を伸ばして王子ロボの足のポッチを捕らえ、再度のかち上げを食らわせた。


 両足を失って、最早空中でどうする事も出来ない王子ロボを、古の英雄の名を持つエルシドが後ろから突き倒す。


 無理やりに踏ん張ろうにも(そんな機能は付けていない)、かち上げを食らった勢いに乗せてタイミングよく押し倒されては一溜りもない。

 王子ロボは両手で踏ん張れずに、べっちゃりとカエルモードでうつぶせになった。


 すかさず駆け寄ったトーヤのエルシドに背中からのしかかられて、手早く両腕を外されて勝負がついた。


「さすがはトーヤだな。

 このゲームの遊び方のツボを心得ている。

 みんな、こういうのがこのゲームの醍醐味だ。


 だが、必ずしもこれが王道じゃないからねー。 

 それぞれのヒナダムに特性があるから、それを生かした闘いのセンスが勝敗を決めるんだ。

 しかも、組み合わせ次第で相性問題もあるのさ。

 頑張れよ~」


 最早、雛祭りでもなんでもないイベントになってしまった。

 だが子供達はみんな熱狂の渦の中にあった。


 まあ、いいか。

 おっさんは白酒(アルコール入り)を飲みながら、のんびりと見物していた。


 ドワーフ達も普段は飲まない酒なので、日本の伝統の酒を楽しんでいる。

 こいつは俺が頑張って作ったものなのさ。

 原料は全部日本から持ってきてあったしな。


 ドワーフの王子も、トーヤの頭を一頻り撫でて讃えると杯を取ったので、俺もにこやかに白酒を注いでやった。


 いかにも、うちらしいイベントの雰囲気だ。

 御楽しみはこれからかな。


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