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39-4 宴たけなわ

 芸は国王陛下がトップバッターを切った。

 なんちゃってテキーラを口に含み、大道芸人のようにそれを噴いた。

 そして王妃様がさらっと着火する。


 これって~。

 ちらっと見たら、彼らを見て笑っているドワーフの夫婦がいた。

 いつの間に。

 国王陛下なんか、いかにも国王でございって感じで凄い格好をしてきているのに、やる事がこれか。


 でも王妃様の嬉しそうな事。

 国王陛下も、心なしか嬉しそうだ。


 掲示板住人は大爆笑だ。


『あれがアルバトロスの国王なのかよ』

『さすがは船橋武の子孫だなw』


『本家の大王はどうした』

『慌てるな、宴はまだ始まったばっかりだぜ』


 真理さんは、まだ会社から帰ってこないようだ。


 ここでエルフさん達が登場する。

 何故かミニスカチアガール姿なのだが。

 思わず俺の鼻の下が伸びる。

 生憎と俺には隣でつねってくれる人などいないので伸ばし放題だ。


 彼女達は派手なアクションのチアリーディングを見せてくれた。

 ちなみにスカートの下は、白のアンダースコートだった。

 これは絶対に葵ちゃんの仕込みだな。


 内容は子供の頃に見た五人組の科学物アニメみたいな感じだったが。

 ミニョンが被り付きの特等席だった。


 女の子達がさっそく真似をしていた。

 葵ちゃんは、この子達の分のボンボンも用意してくれていたようだ。


 何故かエミリオ殿下も、女の子の格好をさせられて一緒に踊らされている。

 半分涙目のようだ。

 監督はシルベスター王女か。


 まあ、頑張れ。

 こういうのも思い出になるんだ。

 さすがに、このおっさんは混ざるのを自粛した。

 日本へ中継しているしな。


 ファルが霊翼の翅を出して浮き上がり、カメラ前でべったりと張り付いた。

 PCで配信映像をチェックしているが、ファルの変顔しか映っていない。

 レミも捕まえてきてカメラでアップしてやった。

 おチビ連は女の子に人気がある。


『レミちゃん、可愛い~』

『ファルちゃん、妖精みたい』


 ついでに精霊も呼んでやった。

 あまりでかくない奴で、翼の生えた猫と、いかにもな羽根の生えた妖精タイプをチョイスした。

 魔力をカメラ前に吹き付けてやると、そいつらがカメラの前でくるくると回って、とても愛らしい。


 ついでに精霊の森へとゲートを繋ぐ。

 さっきレインにも連絡しておいたのだ。

 向こうでも画面が見られるように中継はしてある。

 ファルがファルス体形となり、ささっとおっかさんの頭の上に陣取った。


 俺はカメラポッドを聖域に持ち込んで、精霊の森の風景を遠隔操作で中継してみた。

 なかなか幻想的に中継映像は映し出されていた。


「これがあの人の、そしてあなたの生まれ故郷に繋がっているのねえ」


 レインが思わず感慨深く呟いた。

 そして、なんとなくで祝福の歌を歌いだした。

 この面々においては特に珍しくはないものだが、日本だとどういう風に受け止められるのかな~。


 というか、どんな風に聞こえるのだろう。

 ただの意味不明な声にでも聞こえるのだろうか。


 しかし、中継画面上には驚きのコメントが次々と寄せられていた。


『なにこれ!』

『やだ、魂が震える』


『あはははは。なんかもう泣けてきた』

『こ、これが、神聖エリオンの祝福!』

『か、神様』


 俺は驚愕した。

 魔素の無いはずの地球で、何故こんな事が起きる?


 魔法映像は地球には送れなかった。

 こんな事になるはずはないのだが。

 地球上は、こちらのように魔法で情報も伝わったりはしないはずだ。

 あの異空間のように、レーダーも魔法も使えないだろう。


 ん? そうか。


「魔法中継」


 こいつのせいで、直接送信分は祝福が伝播したのか。

 精霊魔法で繋いでいるしな。

 要するに、今日は不精して中継を精霊共にやらせたのだ。

 それを見取って俺も精霊魔法を使って、何かにつけ中継を日本に繋いでいるのだけれど。


 予想外の結果になってしまった。

 インターネット回線から個々のPCへの配信にまで影響が出てしまっているのか。

 なんだかよくわからん事態だ。

 精霊魔法を使えば、こちらでやるような感じに地球へ魔法映像を展開できるんだろうか?


 とりあえず、今のところはやる必要が全くないので保留だな。

 多分、後でネットに上げる予定の動画には、同じ映像でもこのような祝福の力は無いはずだ。


 掲示板の連中は、未だ祝福の波動に酔いしれているようだ。

 画面は新しいコメントを一切映し出さずに沈黙している。


 レイン達は親子で楽しんでいるようだし、エルフさん達も和服に着替えて御色直しだ。


 ドワーフ達がまた新しい芸を覚えたようだ。

 今回はヨガみたいなインド系の大道芸っぽい奴を。

 あいつらって筋肉達磨の癖に、なんであんなに体が柔らかいんだ。


「すっかり遅くなっちゃったわ~。

 とりあえず乾杯~」


 真理さんが帰ってきたようだ。

 本人のコメントが走っていた。

 あれ? 確かまだ未成年なんじゃ……。

 まあいいか。

 もう大学生なんだからな。


 新歓コンパなんか、新入生が普通に飲んでいるよな。

 それで無様な事になる場合もある訳だが。

 うちの姉は高卒新入社員として、歓迎会にて初めて飲む酒でそれをやっちまっていたな。


 俺? 俺は小学生の頃から、ちょっとだけど親父のビールの上前を撥ねていたからな~。

 初めての飲み会も超余裕だった。

 まったく碌なもんじゃねえな。

 もっとも、ずっと後になってから「もう酒は二度と飲まねえ」モードになっていたけど。


「そっちに中継を繋げたいんだけど、いいかな?

 国王陛下がお待ちかねなんだ」


「準備オッケーよー」


「陛下ー、真理さんが帰ってきましたよ~」

「おおー、そうか!」


 陛下は、いそいそとPCの前に座り、話し始めた。


「こんにちは。

 はじめまして」


 陛下もそこだけを日本語で喋った。

 驚いて、やがて柔らかく微笑む真理さん。


「こうやって貴女様と直接お話出来る日が来ようとは、もはや感激以外の何物でもございません」


 そのように大感激する国王陛下。

 でもって、俺は通訳の係ね。


「いえいえ、こちらこそ。

 ああ、御兄ちゃんの子孫が王様なのか~。

 今でも、そう今でも、『真理、腹減った~。マグロ食いてえ~』って言いながら、ひょっこりと帰ってきそうな気がするのよ」


「そうですか、では今度サイラスからマグロを取り寄せて御墓に御供えしましょうかの」


 二人は武への想いを俺を挟んで語り合い、ゆっくりと時を刻んでいった。


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