39-2 エルフさんの歓迎会
とりあえず、エルフさんの歓迎会をする事にした。
どうせなので地球の馴染みの掲示板の奴らも呼んでやった。
おっさんは、やっと作り上げたのだ。
リアルタイムでネットと繋ぐ事が可能な通信機器の魔道具を。
正確には、そういう魔法だと言ってもいいだろう。
今までは写真やビデオ映像を掲示板に投下していただけだったから不便だったので開発してみたのだ。
持ち込んだノートPCに、カメラやマイク・スピーカーは元々ついている。
魔法PCの能力で、向こうの機械と繋いでしまえばいいのだ。
元々コピーで作ったPCだってネットに繋がっているんだから。
おっさんをルーターとして使わないといけないというのはマストの条件だけれど。
「告知、本日十七時よりエルフ先生五名の歓迎会を行なう。
ネットで参加したい奴は掲示板集合の事。
なお、生放送を行なうのでアドレスは以下のものだ」
生放送できる会員制サイトのアドレスを紹介しておく。
一応、エルフさんの写真も選りすぐりの物を十枚ほど投下しておいた。
パーティの趣向は葵ちゃんが承ってくれた。
せっかくの生放送なのでオールスターで行く事にする。
日本の真理さんにも声をかけておいた。
「というわけで、ネットの生中継やるからねー」
「うーん、仕事で遅くなるかも~。
見られたら見るわ」
「そうか。もし見られないようだったら、後でビデオメールを送るよ」
エルフがいるんなら、当然ドワーフは必須だな。
パーティの御知らせのために転移でアトリエパレスに行ったのだが、なんと親方が鍛冶場にいなかった。
この国の場合、あそこが国王の執務室みたいなものだから、ちゃんといてくれないと困るな。
仕方がないのでスマホで女将さんに電話をしてみた。
「もしもし~。
あ、女将さん?
今日の夕方からパーティをやるんだけど。
今度小学校に上がる子達の教師をやってくれるエルフさん達の歓迎会でね」
「そう。
じゃ、御邪魔させてもらうわ。
トーヤが迎えに来てくれるのかしら」
「じゃあ、そうしておきます」
そろそろ、あいつにも転移の腕輪をやっておくか。
毎回エルフ新町の方に居るアルスとかを引っ張り出すのも難儀だしな。
「トーヤ~。
ちょっと転移魔法の練習をしにいかないか?
転移魔法付きの腕輪をやるから、女将さん達を夕方迎えに行っておくれ」
「うん、いーよー」
なんだかんだ言って、こいつが子供達の大将だからな。
ミシンの件とかもあるんで一人で行ってもらいたい場合もある。
まあ腕輪の中には護衛のゴーレムも突っ込んであるので、問題はまずないだろう。
今までの腕輪を外し、転移の腕輪をトーヤに装着してやって本人用にサイズ調整する。
アイテムボックスの機能も有効にして中身も全部移しておいた。
新しい物は少し御洒落な腕輪にしておいた。
腕輪はトーヤの好みに合わせてインダストリアル・デザイン的なタイプの奴をチョイスした。
「じゃあ、アドロスの広場まで跳んでみるか」
転移の際には、色々な注意事項がある。
一度行ったところへは、魔法が座標を確認してくれるので行けるが、その際に何かがあるとそれを押しのけなければいけなくなる。
空気なんかだと問題ないのだが、人がいたりすると困る。
いきなり弾いてしまう形になるので。
人を弾き飛ばしたその先に馬車がいたなんて事でもなったら大事になってしまう。
岩などの簡単にどいていただけないオブジェクトが居なさると豪い事になる。
俺の場合はレーダーで確認出来るので、よほどの事がない限りは、まず問題は無いのだが。
それでもケモミミ園へ帰る時には面倒が無いよう、基本的には転送ステーションへ帰るようにしている。
転送機で移動するSFみたいなもんだ。
よっぽどの事は無いのだが、何年も経っていると、そこに何かが出来てしまうことがあったりもするだろうしなあ。
最近はゲートの魔法を開発したので、よく見知ったところへ行く場合は、もっぱらそれで行く事にしている。
あれは問題がある魔法なので、あれで変なところへは行けない。
要はミハエルが顔を真っ赤にして怒鳴り込んでくる事がないようにしないといけないという事だ。
トーヤはへたな大人より頭がいいので、そういう事などもあっさりと理解出来ていた。
俺と一緒なので、特に問題もなく転移に成功した。
何箇所か行った後で、ドワーフ国エルドアの王宮アトリエパレスへ跳んだ。
ここにはトーヤの部屋がある。
あの子も伊達に国家特級技師ではないのだ。
一応、部屋は女将さんの部屋の近くにしてもらってある。
女将さんの了解を貰って、トーヤも転移魔法を使わせてもらう事になった。
スマホ+転移魔法って、異世界は日本よりも便利過ぎないか?
アルバの王宮にも行ってパーティの話をすると、みんな大乗り気ではしゃいだ。
「日本と繋がるのですか?
それは楽しみですね」
こういう新しい事には目がないのだろう。
王妃様が如何にも冒険者らしく、青い瞳を輝かせた。
「えー、出来ましたら、王妃様は本日ジャージではなくてラフなホームドレスのような物で御願いできないでしょうか~。
掲示板の連中も楽しみにしていますので」
「わかりました。
でもミニョンとは遊びますからね~」
うん、知ってた。
ミニョンの方も王妃様の事は好きなようだ。
王宮へ連れて行くと子犬姿でじゃれてみたり、また人化して王妃様の首っ玉にしがみついたりと、あの子も王宮生活を満喫していた。
ケモミミ園に戻って色々な支度をしているとスマホが鳴った。
「もしもし~」
「ああ、儂じゃ。
今夜のパーティで日本と繋がるそうだな。
真理様と、お話出来たりはするのか?」
相手は国王陛下だった。
「え、ええ。
向こうが機械の前にいてくれれば可能ですが。
言葉は通じないと思いますがね。
普段は学生をしていますが、休日じゃないので向こうは仕事ですよ。
もう頼れる兄はいないのですから、学費や生活費は遺産だけに頼らず頑張って稼いでいるようです。
住居の維持費だってかかりますし、その他にも健康保険や火災保険という物などの支払いや、いずれ大学を卒業したら年金という物なんかも払っていかないといけないので。
早く仕事から帰れれば大丈夫なんでしょうけどねえ」
「そうか、偉いのう。
よし、わしも行くぞ!」
「わかりました。
じゃあ、時間になったらゲートで繋ぎますので」
本日の来賓は国のトップが御見えのようだ。
まあ、こっちも公爵扱いなんで特に問題は無いんだけど。
またレミちゃんの、得意の「おっす」が出てしまいそうだな。




