39-1 エルフ先生登場
小学校の教員を募るにあたり、エルフ新町からも募集をする事にしたのだ。
それには幾つかの理由があった。
まず、長い事監禁されていたとはいえ、その長生きな人生の間に受け継いだ叡智を教師として役立てて欲しい事。
また彼らの工芸の腕も、子供達の将来の糧としてほしい事も要望してある。
そして虐げられた歴史を持ち、それでも前を向いて生きていこうとする直向きな姿から、子供達に何かを学んでほしい。
それに不遇な身の上だった彼らは、獣人の子供達の恵まれなかった人生にも大いに理解がある。
色々なシーンで、そういう事が役に立ってくれるのではないだろうか。
子供達も段々と難しい年頃になっていくだろうから。
その他に、綺麗な先生と過ごした幼少期は、きっと人生で素敵な思い出となってくれる事だろう。
そんな訳で、エルフ新町から何人かのエルフさんを教師として派遣してもらう事になった。
小学校は一クラスしかないが、担任の他に教科担任を置いてある。
この辺が日本の学校とは違うスパルタ方式だ。
あいつら、まだまだ手がかかるから人手は欲しいしね。
また、いずれ生徒数が増える事は確定しているので、今のうちに先生方にも余力を持って慣れていただこうというわけだ。
担任の他に、音楽・図工・家庭科・理科を担当してもらう。
計五名のエルフ先生軍団だ。
特に理科に関しては真理をサポにつけてある。
元からある初代国王由縁の知識がある上に、インターネットに親しみ、急速に現代地球の知識を上書きした真理は、今や並みの地球人を上回るほどの科学知識を身に着けていた。
何しろ寝なくていい奴なんだからな。
蛍の光ならぬ魔導の光っていう感じだ。
葵ちゃん達日本人勢にもサポを御願いしてある。
プラス、副担任は獣人の女性だ。
彼女は初めて見るウサギミミな方だった。
ウサギミミさんはネコミミさんと同じくらいの数はいらっしゃるそうなのだが、不思議と我がケモミミ園には縁が無かった。
彼らは耳が大きくて目立つ。
それになかなか可愛らしい感じなのだ。
そして学園長兼小学校校長が俺で、ケモミミ幼稚園の園長もそのまま兼任だ。
真理は副園長業務に専念だから今のところ小学校の教頭がいないな。
体育教師はもちろん獣人の方だ。
そうでないと獣人の子供相手に人族の先生では体力が持たない。
ここはパワフルな熊さん虎さんのコンビで御願いした。
あと学年主任として、商業ギルド出身の方を一名呼んである。
こちらの方にいずれは教頭をやっていただくかもしれない。
今は学年主任兼教頭代理という事で仮人事とした。
その他に人族で、国語・社会・算数をやはり商業ギルド出身の方で埋めた。
その理由は、小学校卒業でのレベルを「どこの商業ギルドに出しても恥ずかしくない内容」に設定するためだ。
就職において、人族との競争は不利を被りやすい獣人だ。
そこは徹底的にスキルで圧倒するという目的がある。
随時、各地の商業ギルドや大商会などの授業見学も招致する予定だ。
見学者は転移魔法で送迎が可能なので、ここでも魔法が非常に有益だ。
うちって、こういう子供達のための魔法の使い方が多いんだよな。
当然生徒も社会見学をするし、職業実習なんかもやる。
その点において教師が商業ギルド出身なら、色々とスムーズな事この上ない。
うちも商会なんかを始めた訳なのだが、いかんせん始めたばかりで、おまけに商業ギルドに丸投げにしているだけなのでね。
まあ特に授業という感じではなく、通常にいつでも見学させられる場所があるだけでも悪くはない。
ロゴスには面倒を見てくれるように頼んである。
彼もそういう話なら喜んで協力してくれるし。
伊達に盗賊ギルド相手にやりあっていたような人間ではないのだ。
今のところ食堂は幼稚園の方で食べる予定なのだが、小学校の人数が増えたら専用の食堂を作らないといけない。
少し距離もある事だし。
まあ、それに関してはゲートの魔法で繋いでおけば、そう困らないとは思うのだが。
あれも本当は他国に軍勢を送れてしまえるような凄い魔法なのだが、うちではこういう子供用としての使い方がメインなのだ。
今は、とりあえず食堂の人員を少し増員している感じだ。
エルフさん方には、早めにうちのやり方に慣れてもらおうと思って、少し前にケモミミ園へ来てもらおうと思っている。
もうすぐアルスが連れてきてくれるだろう。
お、携帯が鳴っている。
「よお。もうこっちへ来るかい?」
「うん、今から行くよ~」
その刹那、目の前にアルスとエルフさん達が現れた。
そこは俺の部屋に設置してある転移用スペースだ。
寸刻空気が揺らぐことさえなく、一瞬にして姿が現れる。
相変わらずエルフさん達は美しい。
ついつい園長先生の鼻の下も伸びようというものだ。
「やあ、よく来てくれたな。
これから宜しくね~。
アルスも、御苦労様~」
「アルスちゃ~ん」
レミがむしゃぶりついていった。
アルスとは最近なかなか会えないので、姿を見かけるとレミが突撃してくる。
アルス号は未だに、あの子の愛馬なのだから。
「レミちゃ~ん、こんにちは」
アルスも、にこにこしてレミを抱き上げる。
コイツも多分相当訳ありな男なんだよなあ。
まあ、そんな事はたいした事ではないので、あっさりスルーだけれど。
あ、早速レミが強請ってアルス号を乗り回している。
とりあえず、俺はエルフさん達に向き直って挨拶しておいた。
「子供達、かなり腕白だけど宜しくね~」
それにしても、こうもズラリと美形が並ぶと迫力だな。
名古屋の広小路通りあたりを歩かせたら、風俗店のスカウトとかがいっぱい寄ってきそうだ。
基幹道路、大通りの広小路通りとかの軒下なんかで、いっぱいそれらしいのが溜まっている。
中にはホストも混じっているのかもしれない。
しつこく言い寄ってくるんで女の子が無視してかつかつと踵を鳴らして歩いていくのを、よく見かけたもんだ。
名古屋みたいな自分達で田舎って言うようなところでも、そういう奴らがいるんだよなあ。
日本に帰った時に魔法で片付けるのが面倒でしょうがないな。
どうせ、うちの美形な関係者にもちょっかいをかけてくるのに決まっている。
もしそんな事にでもなった日には、髪の毛を毛根まで根絶した上で、裸に剥いて名古屋城の天守閣にでも晒すか。
向こうの世界で魔法って使えるんだろうか。
魔法が使えないと、多分この世界に帰ってこられなくなるから困るのだが。
今のところ、この世界で何も不自由ないから、日本に帰れなくても俺的には何も問題は無いのだけれども。
でも買出しには行きたいな。
主にデパ地下スイーツなどだ。
エリも見学に連れていってやりたい。
そしてここケモミミ園でも、美形のエルフさんに寄ってきた奴らがいる。
言わずとしれた、うちのチビ達である。
「エルフさん、きれい~」
「すてきー」
女の子達は、もううっとりとしている。
もちろん、男の子達も御気に入りだ。
「せんせい、すきー」
「だっこしてー」
どっちかというと、来年も幼稚園に通う年齢の小さい子達に人気だ。
エルフ先生達も嬉しそうにしていて、しゃがみこんでチビ達の相手をしてくれている。
ちょっと羨ましいな。
俺が小学生の時は、若い綺麗な女の先生なんて一人もいなかったのだ~。
とりあえずエルフさん達は園の中を案内する事にした。
セーフハウスから始まって幼稚園から小学校校舎まで。
各教室や諸設備などを見学してもらう。
あと皆さんの生活してもらう宿舎へ御案内だ。
最初の頃は職員の住居として日本から持ち込んだ六畳サイズの狭いバンガローを使っていたのだが、今はそれなりに建て直したので宿舎の部屋も広くなった。
幼稚園の方も増築をかけてある。
園長先生と副園長先生の部屋は小教室のようになっているし、ちゃんと応接間も作った。
子供も数が増えたので、子供達の部屋も増やしたし。
俺も、こまめに色々と地道な仕事は随時やっているのだ。




