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38-2 学園長先生

 俺はその学園内を見回したが、それが地球にあるその手の施設と似ているのかどうかよくわからない。

 俺は高卒就職組だったので大学なんていうところへは行った事がない。

 ましてや、この建物のモデルになったような外国の大学なんか、当然見学すらした事がない。


 最近の大学生は留学なんかにも熱心なようだから、こういう感じの外国の大学へも行った事があるような奴も多いのかもしれない。

 それで卒業が遅れると、自分達で『大学五年生・六年生』とか言うらしい。

 うーん、まるで小学校並みの数え方だよなあ。


 そんな連中は俺達の時代だったら「落第坊主」として企業からも嫌われてしまうのだろうが、まあ時代は変わった。

 色々経験してきた奴の方が良い人材なんだろうしな。


 武の奴め、一体なんでこんな建物にしたんだろうな。

 まあ、この世界に相応しい石造りにするとなると、こんな感じかなというところだろうか。


 あいつはそういう性格だったらしい。

 割と適当っていうか、どんぶり勘定っていうか。

 だんだんと他人事に思えなくなってきた。


「こういう学園にいるのは、いろんな年代の子供達です。

 小さい子でも十五歳以上の部にいる事もあります。

 その逆は無いらしいですけど。

 僕も見た事がないです。

 まず、そこそこの貴族であったら、それなりの年齢になったら学園に来ていますね。


 無論、僕は小さい頃から通っていました。

 祖父が、せっかく貴族の家に生まれていい学校へ行けるんだからと熱心に援助してくれたので」


 そして本人は勤勉なんで、めきめきと学力をつけていったという訳か。

 ベルグリットの場合は、地球でいうところのスキップ制度みたいに、十二歳になる頃には大学コースへ行っていたという。


 そして十五歳の成人を迎え、晴れて王宮勤めと相成った。

 一応はエリートなのだ。

 さすがだな、ベル君。

 おそらく十五歳以上の部が本来の大学コースだろう。


 この学園は日本と同じで四月始まりらしい。

 七歳になる年から通い、初等部から中等部・高等部までが三年ずつ。

 大学の部は優秀な人や、シド国王みたいに留学してきた王族などが行くところだそうだ。

 優秀な平民の場合は国から幾らかは奨学金が出る。


 ベル君の父親は、彼の御爺さんに無理やり金を出させて兄達も学園に行かせていたのだが、放蕩息子達は女の尻を追いかけるのに夢中で、勉学の方はさっぱりだったようだ。

 そのうち侯爵令嬢に要らんちょっかいをかけて、その侯爵令嬢の父親から怒りを買い中途退学した。

 おまけに親の方も社交界から抹殺されたという。


 だが、その侯爵様は言ったそうな。


「ベルグリット、お前はあんな風になるなよ。

 しっかりと勉学に励みなさい」


 なかなかのもんだな、王都の大貴族も。

 まあ、馬鹿な男爵親子はどうしようもないが。


 侯爵令嬢は真面目なベル君を可愛がってくれていて、彼女の父親の方も目をかけてくれていたという。

 それに纏わりついていた馬鹿兄がいたというわけだ。


「就職の際も駄目な父親に代わり、侯爵様が口を利いてくれたんです。

 今回出世していった件も大変喜んでパーティまで開いてくれました。

 それも準男爵と男爵の二回に渡って。

 ダンジョン事件での活躍も大いに誉めそやしてくれました」


 ベル君は、そう嬉しそうに語った。

 どうせなら、あっちの家に生まれたかったよなあ。


 まあ、若いうちの苦労はしとくものさ。

 そういや、俺もこいつに苦労させた口なのだった。

 

 この国、上の方の連中はしっかりしているよな。

 さて、件の学園長はどんな奴なんだろう。


 そしてベル君に案内されて学園長室に入った俺達を出迎えてくれたのは、まだ四十歳過ぎくらいの人か?

 それも、実際の歳よりもまだ若々しく見える感じだ。

 金髪をくるくる巻き毛にしたおじさんだった。


 金色に近いような色の目は理知的な光に満ちてはいるのだが、何かアレな感じだな。

 そして何故か白衣を着ているし。


 学園長先生……なんだよね!?

 まるで化学の先生みたいだ。

 しかも頭のスタイルは昔のヨーロッパ風だし。

 昔のヨーロッパの錬金術師か!


「やあベルグリット、君は相変わらずなんて優秀なんだい!

 絶対に来てくれないだろうと思っていたグランバースト公爵、いやさ魔王様を連れてきてくれたなんて!」


 え? ちょ、ちょい待て~い。

 それと、「いやさ魔王様」じゃないだろ。

 普通は逆だ~。


「あ、いえランブル侯爵様、いえ学園長先生。

 それは、その……」


「いやいや、もう皆までゆーな。

 君の優秀さは、私もよおーく、わかっているよお~。

 君のような若者は、この国の誇りだ。

 実に、素ん晴らしーい」


 うーん、このタイプだったか。

 人の話をまったく聞かず一直線に捲くし立ててくるんだな。

 しかも全く悪気が無さそうなのが余計に性質悪いな。

 人の言う事なんて、あまり聞かなそうなタイプだし。


 そのあたりの話は、へたをするとあの親方、ハンニバル大王に匹敵するのかもしれん。

 ベル君の様子を見るにつけ、おそらくこれが例の侯爵様なのに違いない。


 するとベル君の不肖の兄共は、侯爵位を持つ学園長の娘にちょっかいをかけて退学を食らったのか。

 噂以上にアホやな。

 きっと侯爵家に婿入りする事を狙っていたのに違いない。

 メリーヌ王妃にちょっかいをかけていた連中並みにアホや。


「では、魔王様!

 早速学園をご案内いたしましょう~」


 駄目だな。

 人の話を聞く気は全く無いようだ。

 悪い人じゃなさそうだし、ベル君が凄く御世話になっている人なのだしな。

 なんかこう、非常に断り辛い雰囲気になってきた。

 うーん、困るなあ。


「さあ、さあ、さあ。

 参りますよ~」


 なんか半分踊りながら、ずんずんと先を歩いていく学園長先生。

 まるでファルの危ない御神籤をキメた人みたいだ。

 もう諦めて、彼の後ろをついていくことにした。


「あ、あの、アルさん。

 なんか、すいません……」


 蚊の鳴くような声で謝るベル君。

 きっと、いつもこうなんだな。


「皆まで言うな。

 まあ、なるようになるだろう……」



 結局、学園長に付いていった俺は、月一回の約束で臨時講師をやる事を引き受けさせられた。

 なんていうか、もういいやみたいな。

 だって俺の言う事なんて全然聞いてくれないんだし。


 それに、これからケモミミ学園の学園長になるにあたり、なんか参考になるかもしれない。

 というわけで、うやむやのうちに俺の王都学園臨時魔法講師就任が決まってしまった。


 生徒は主に貴族の子弟か。

 思いっきりスパルタでいっちゃってもいいのかしら。

「野外実習」をメインにというのは、どうだろうな。

 王立サバイバル学園。

 監修は元王国騎士団長のルーバ爺さんでどないだろうか。


 今から装備、もとい実習機材の準備をしておくか。

 俺が引率している最中に、貴族の子弟になんかあっても困るしなあ。


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